モチベーターとしての顔
―西野監督が挙げていた「選手の化学反応」というキーワードがありました。橋本選手の言葉が、その答えに近い気がしました。
「ですから、プレーのイニシアチブを、ある程度は選手たちに渡していく可能性もあると思います。ただ、(西野監督は)全員がもつべきマインドや川幅は決めますよ。自由に解き放って、選手に『どうぞ、好きにやってください』ではありません。『こういうプレーをしてほしい』と言うでしょう。
僕は、西野さんはモチベーターだと思っています。天然で、選手の名前を間違えたまま呼び続けたり、時々面白いことを言おうとしたりすると『いまの何?』という空気が流れたりもしますが(笑)、誰かが思い切って突っ込めばどっと笑っていい雰囲気になりますよね。口数が多く、たくさん話して人心掌握するようなタイプではなく、チームの空気感を大事にします。細かいことを緻密に積み上げて、それを逐一選手に伝えていくよりは、メンタルを解放させる、選手がどんなマインドでプレーするかを重要視するタイプです。そこに、言葉が多い必要はありません。少ない言葉でもきちんと選手の気持ちを前向きにさせる監督です」
―お話を聞く限り、非常に個人戦術が問われるチーム作りになりますね。
「指示を待つような選手は、うまくプレーできないかもしれません。1本のライン上で戦うことしかしてこなかった選手は、幅ができたことで逆に何をしていいのか分からない状態に陥ってしまうかもしれません。そこは、しっかり見極めて人選していると思います。個人戦術があり、自分でプレーを作っていけるメンバーだと思います」
―西野監督はハリルホジッチ前監督が作ったチームにどんなエッセンスを加えていくと思いますか?
「“エッセンスを加える”という発想ではないと思います。例えば、これまで100%の力を発揮できる形だったかと言えば、決まり事が多くて、得意なプレーがカットされていたわけです。それをカットせずに済む環境になれば、50%だったパフォーマンスが100%に近いプレーになっていきます。だから、新たなエッセンスはいりません。何かを加えるというよりも、狭過ぎた川幅を広げてあげれば、本来の力を出せる選手がもっと増えてくる。そういう感覚だと思います」
―ハリルスタイルを生かしつつ、いかに“西野色”をプラスしていけるかに注目しがちですが、本来の力を出せずにいた選手たちを整理するイメージですね。
「そうなりますね。ただ、整理するだけでは、まだ1本のライン上でプレーすることになります。そうではなく、もう少しプレーの自由を与えるという意味で、川幅を作るためのもう1本のラインを設定する。自分本来のポテンシャルをより高い割合で出していける選手が、川幅の中で増えていけば、あとは選手同士の足し算。もっと言えば、掛け算でチームがよくなっていくと思います」
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聞き手:西川結城 取材日:5月16日(水)
※このインタビューはエルゴラッソ2039号に掲載したものを再構成したものです。
(BLOGOLA編集部)
2018/06/22 11:23