3-2と勝利した第26節の清水戦ですが、活躍した選手が大勢いたため、MOMは悩みました。最終的には2得点に絡んで試合をけん引した柿谷曜一朗選手を選びましたが、左サイドをガンガン突破し、質の高いクロスを上げ続けた丸橋祐介選手もMOMに値する活躍ぶりでした。決勝点を決めたシンプリシオ選手も、その得点センスを存分に見せてくれました。
そしてもう1人。記者が注目していたのがヘベルチ選手です。“高い個の攻撃力”と、“連係面と守備での不安”。それが、第25節の名古屋戦や、清水戦前に取材した、紅白戦でのヘベルチ選手の印象でした。枝村匠馬選手は守備でも気を使いながら、バランスを取る動きもしていただけに、ヘベルチ選手のところから守備が漏れないかと心配でした。特に、清水のストロングポイントでもある大前元紀選手と対峙(たいじ)するポジションだっただけに、その思いは増しました。
不安は杞憂(きゆう)に終わりました。丸橋選手の攻撃参加で清水の右サイドを封じ込めると、ヘベルチ選手も丸橋選手や扇原貴宏選手とのコンビでサイドをうまく崩し、違和感なくプレーしていました。先制点の流れにスムーズに絡み、2点目もヘベルチ選手のタメから、生まれました。いわば“クルピ・セレッソ”の攻撃的な部分にフィットしました。
試合後、クルピ監督にヘベルチ選手について質問すると、「ヘベルチは本当によくやってくれた。彼は試合数が少ないというハンディはあったと思うが、ゴールに絡む活躍をしてくれた」という称賛の言葉とともに、「実は、ブラジル人3人には今週最初の練習の時に、選手全員の前で、『3人を使う』と言った。『ブラジル人は助っ人なんだから、日本人よりもしっかり活躍しなければいけない』と強く彼らに言った。3人とも、しっかりとそのことを意識してやってくれた」という衝撃の(?)事実も飛び出しました。
その監督の言葉をヘベルチ選手にぶつけると、「世界中どこでも、ブラジル人はそういうプレッシャーの中でプレーしている。結果を出さないといけないことは理解しているし、自分たちで解決していかないといけない。幸い、自分のリズムとセレッソの若い選手のリズムは似ている。J2の走るサッカーより、J1のテクニカルなサッカーの方がやりやすい気もする(笑)」と笑顔で話してくれました。
クルピ監督の手腕、そして、へベルチ選手の覚悟の決まった言葉に感銘を受けた試合後でした。
(C大阪担当 小田尚史)
2012/09/25 14:05