『DAZN・Jリーグ推進委員会』で今季からスタートしているエル・ゴラッソの月間表彰。マッチレポート紙面から、その月で一番グッとくるカットを表彰する「Jリーグ月間ベストカットbyELGOLAZO」では、J1第22節・柏vs鹿島のマッチレポートと表紙、クリスティアーノの先制点の場面を選出した。
天皇杯で京都にホームで敗れた直後、重苦しい雰囲気が漂っていたチームを救う得点を挙げたクリスティアーノに、あのシーンを振り返ってもらった。柏への“愛”を語った言葉も必見だ。
取材日:8月19日(木) 聞き手:藤井 匠
――クリスティアーノ選手が表紙を飾った紙面が7月の月間ベストカットに選ばれました。その第22節・鹿島戦(2○1)についてうかがいたいと思います。
「鹿島戦はきわめて重要な一戦だったと思います。私の中ではフロンターレ、マリノス、鹿島が今季ここまでのベスト3だと思っていて、そのベスト3の中の1チームを相手に1勝を挙げることができました。ただの1勝ではなく、ホームでの久しぶりの1勝(4月24日の第11節・徳島戦以来約2カ月半ぶり)でしたし、われわれが勝点3をもぎ取ったことで順位を少し上げることもできました。選手たちの自信も取り戻せましたし、躍進のきっかけになる一戦だったと思っています」
──鹿島戦前のチームの成績は決してよかったとは言えませんでした。チーム状態を振り返ると?
「ネルシーニョ監督が試行錯誤しながら、チームの形やメンバーをずっと手探りで探っていましたが、なかなか定まりませんでした。ただ、鹿島戦を機にやっと形が見つかり、うまく結果に結びつきました」
──鹿島戦の自身の得点場面についてお聞きします。戸嶋祥郎選手からのスルーパスにうまく抜け出し、見事な弾道のシュートをネットに突き刺しました。
「あの1点目が勝利への第一歩になりましたし、まさに私の特長が生きたゴールだったと思います。スペースがあり、ディフェンスラインとの駆け引きで裏を取って最終的にいいシュートが打てました。ただ、あのゴールの起点になったのは(上島)拓巳の守備だったと私は思っています。いまやっているサッカーが守備を重視しているとはいえ、ディフェンスラインをただ単に引いて守るのではなく、アグレッシブで攻撃的な守備をすることによって、劣勢から攻勢に転じることができたと思います。最終的に私が決めることになりましたが、ゴールにつながった拓巳の役割はかなり大きかったと思います。彼のプレーによって自分たちのゴールを守ることもできたし、攻撃に転じることができました。そこが一番大きかったと思います」
──先制点を決めたあと、クリスティアーノ選手は雄叫びを上げました。あのときのお気持ちは?
「チームの状況が難しい時期でもありましたし、得点を取ってすごく幸せを感じました。自分がやるべきことをやった、ミッションを達成した幸せがあふれ出し、自分の気持ちをそのまま表に出しました。自分の中でかなり大きな意味合いのあるゴールだったと思い
ます」
──鹿島戦の2点目のシーンでは、アシストした大南選手にヒールパスでボールをつなげました。
「ヒールパスは難易度の高いプレーだと思いますが、私の中では一つの引き出し、武器として使えます。それは以前からやっていることですね。毎回成功するとは言えないですが、練習の中でもやっていますし、自然と起きるプレーだと思います。ただ、ヒールパスだけではゴールは成立しません。(大南)拓磨の勢いあるオーバーラップがあったおかげで、ペドロ・ハウルの得点に結びつくアシストを拓磨が記録できたと思います。私がいくら意表を突いたパスを出しても、DFでありながら攻撃参加もしてくれる拓磨のような選手の活躍がなければ、成立しないゴールだったと思いますし、チームプレーがあのゴールには詰まっていると思います。本当に美しいゴールだったと思いますし、私自身あのゴールに関わって柏の勝利に貢献できてよかったと思っています。一人の力だけで試合に勝てるわけではないですし、拓磨や拓巳のおかげで(私のプレーが)ゴールへ具現化され、その結果、勝利につながったと思います」
──鹿島戦の勝利を機にチームは復調しています。
「チームのスタンダードができたことで、鹿島戦後に神戸に勝ち、フロンターレに引き分けて上位チーム相手に勝点を挙げることができました。上位チームと戦って勝てたことはすごく自信につながります。これからは下位チームとの戦いが続きますが、勝っていけば少し落ち着いて戦えると思います。いまの勢いをなくさずに戦っていかないといけないと思います」
──次はクリスティアーノ選手ご自身について。今季の前半戦はなかなか得点を取れず、ケガもされたとおっしゃっていました。
「私にとって、目まぐるしいシーズンになっています。個人的にさまざまなことがありました。特に大事な親戚が亡くなりましたし、そのあとにケガをしました。本当に難しいことが自分の前に障害として出てきました。しかし、その状況でもまた試合でしっかり働いて活躍できることを信じながら離脱期間を過ごしました」
──クリスティアーノ選手は復帰後、第20節から第24節までの5試合で3得点を挙げており、後半戦のチームに大きく貢献していますね。
「私は点を取ることが好きですし、それが自分のサッカー人生の中での喜びだと言えます。ただ、私のメインの仕事は点を取ることだけでなく、点を取れなくても周りを生かして点を取らせることだとも思っています。現時点ではチームの得点王(取材時はリーグ戦4得点、現在は5得点)ですが、点を取ること以上に大事なのは勝利です。柏の勝利につながれば誰が点を取っても構わないと思っていますし、私は柏での6年半ずっとそういう気持ちで戦っています。今後どれくらいキャリアを続けられるかは分からないですが、勝者のメンタリティーをもちながら、チームにいい影響を与えていければいいかなと思っています」
──後半戦に入ってクリスティアーノ選手は調子を上げ、好パフォーマンスを継続しています。その原動力はなんだと感じていますか。
「サッカーに対する“愛”ですね。自分がやっていることに対する気持ちが大きいと思います。子どもたちに『クリスティアーノ選手はどうやって強いシュートを打てるの?』とよく聞かれるのですが、その答えとして、まず強いシュートを打つ前に『サッカーやスポーツを愛することが一番大事だよ』と言っています。『好きこそものの上手なれ』ということわざもあるくらいですからね。自分の仕事に対する愛があるからこそ、34歳であっても体力的にまだまだいいレベルに立てていると思いますし、統計の数字だけで言うと22歳の若手選手のような力を発揮できていると思います。サッカー選手という職業であり、かつ柏というチームに対する愛情があるからこそ、いまのパフォーマンスが発揮できていると思います。私がサッカー選手である限り、喜びをもって戦っていきたいと思います」
──今季は柏に多くの新しいブラジル国籍の選手がやってきました。彼らに対して率先して務めている役割などはありますか?
「私の日本でのサッカーキャリアは柏を含め、日本でもう9年になります。来日した当初はかなり厳しいことも経験しました。だから、新加入のブラジル人選手に対しては、彼らが苦労せずにチームに溶け込めるようにということを念頭に置いています。ピッチ外が充実していれば、ピッチ内でより自然と自分の力を発揮できることもあると思います。私の来日1年目(栃木時代)を思い出すと、いまはJ2の岡山にいるパウリーニョという選手がかなり私を助けてくれました。彼のおかげでいまの私があると思います。パウリーニョはチームメートであり、友達でもある。でもそれ以上に兄弟のような存在で、私がここまで長く日本でプレーできた理由の一つです。
いまのチームにはブラジル、日本、韓国といろいろな国籍の選手がいますが、ピッチの中では言葉ではなく、気持ちで通じ合うものだと思います。みんなが同じ目標や夢を追いかけ、チームのノルマに対して一丸となって向かっていくことがチームの力になると思います。そういう意味ではほかの選手たちとの関係も順調だと思います」
──柏レイソルへの想いについてもうかがいたいと思います。柏レイソルはクリスティアーノ選手自身のキャリアの中で最も長く在籍したクラブであり、過去の取材でも強い想いを口にしていました。
「このチームに対する私の愛情は自分のここでの歴史が物語っていると思います。数字面を見ればチームの得点王であったり、クラブの最多試合出場数を記録している外国籍選手であったり…。現チームで言えば、大谷(秀和)選手以外は私が最多(試合出場/リーグ戦191試合出場)になると思います。そういうことがある中で、チームに対する愛着心が生まれてくると思います。私はさまざまなことをここで実際に経験しましたし、自分の日常がここにあります。移籍する話もいくつか出てきたりしましたが、それでもやっぱり柏でプレーしたいという気持ちにすべてが直結していると思います。私は柏でプレーすることを本当に誇りに思っています。私がここにいる幸せは、実に多くのことから語ることができます。私の家族も柏の街をとても居心地よく感じています。特に次男は柏の街しか住んだことがありません。私は柏にすべてを捧げていると思います」
──柏レイソルのサポーターについてはどう感じていますか?
「サポーターが作るスタジアムの雰囲気や空気感はすごいと思います。いまは観客数が制限されていますが、それでも彼らは存在感を示していると思います。観客数が少ない現在も試合中の応援がみんなを後押ししてくれていると思いますし、ペドロ(・ハウル)、ドッジ、アンジェロッティ、エメルソン(・サントス)のような新しい選手たちには『このスタジアムが満員になった状態を想像してみて。実際の試合中に体験したらとんでもないと思うよ』と伝えているんですよ。私たちのサポーターは相手にとって本当に脅威になると思うし、自分たちの力にも大きく影響していると思います」
──最後に、柏レイソルの今後の戦いについて、そしてクリスティアーノ選手自身の意気込みを教えてください。
「柏は下位に位置するチームではないですし、それは私にとってすごく違和感があります。現状、降格圏から3ポイント(取材時/現在は勝点2差)上回っていますが、今後も勝点を積み上げていくことがすごく大事だと思います。いまの自分たちはいい結果を得られて自信をもっているので、その勢いを止めないことがすごく大事です。私に関しては、いまやっていることを継続するだけだと思います。試合に出たら常に全力を尽くして献身的なプレーをすること。チームの勝利に対して自分の身を投げるくらいの気持ちでやっています。家に帰ったら体がボロボロになってクタクタな状態、それくらいになってまでも自分がやるべきことをやる。常に全身全霊で戦う気持ちをもちながら、極力多くの勝点を取ってチームをできるだけ早く降格圏から遠ざけていきたいと思います」
クリスティアーノ(CRISTIANO)
1987年1月12日生まれ、34歳。183cm/83kg。ブラジル出身。マルシリオ・ディアス→リオ・クラーロ→メトロポリターノ→シャペコエンセ→メトロポリターノ→ジュベントゥージ(以上、ブラジル)→ザルツブルグ(オーストリア)→栃木→甲府を経て、15年に期限付き移籍で柏へ加入。その後、16年に甲府へ復帰するも、16年途中に柏に完全移籍した。J1通算201試合出場64得点、J2通算79試合出場35得点。
(BLOGOLA編集部)
2021/08/26 22:47