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『DAZN・Jリーグ推進委員会』で今季からスタートした、エル・ゴラッソの月間表彰。対象月のマッチレポート紙面から、その月で一番グッとくるカットを表彰する「Jリーグ月間ベストカットbyELGOLAZO」では、J2第4節・相模原vs大宮のマッチレポート、藤本の決勝ゴール後の場面を選出した。

　クラブのJ2初勝利につながる決勝点のあと、なぜ藤本は子どもたちと喜んだのか。その理由や、「拾ってくれた」クラブへの思いを語った。

 

聞き手：舞野 隼大 取材日：4月7日

 

 

 

 

「1点目が入ったときに子どもたちがすごく喜んでいたところを見ていて、どの学年かまではわからないですが、ジュニアユースの子たちというのは知っていました。やはり自分たちのクラブの育成組織の選手たちは大事な存在。2点目のゴールを決めてたまたま向こう（ボールボーイの子どもたち）のほうへ行ったときもすごく喜んでいて、こっちに来たいけど行っちゃダメだろうなというように葛藤している様子だったので『おいで、おいで』と呼びました」

 

「ユーリがいいタイミングで（自分を）使ってくれたのでまずはユーリに感謝したいです。あそこで自分が縦ではなくゴール方向へ、イメージしていたとおりにボールを運べたので、そのままスピードを落とさずゴールへ向かえました」

 

「そうですね。ディフェンスの選手が動かなかったらどのタイミングで仕掛けようかと考えていましたけど、相手が動いてくれた。GKも基本的にはニアサイドのコースを消すだろうと思っていたので、コースは見えていませんでしたけど、ゴールの位置を考えて少し巻いてファーに蹴ろうという考えが一瞬で浮かびました。その前のシーンでシュートをふかしていたので、できるだけ抑えるように意識しました。チップキックで打とうか迷いましたけど、相手のGKも大きかったですし、あのときは風も強かったこともあって低く打とうと思ってシュートしました」

 

「僕がちょうど小学生のときにJリーグが開幕して、マリノスのトップチームで得点王にもなったラモン・ディアスが僕にとっていいお手本でした。カシマスタジアムでの鹿島戦で切り返して低く巻いてファーに蹴ったシュートなどをよく覚えています。とにかく、ラモン・ディアスの左足のシュートがすごく好きで、スタジアムに見に行きましたし憧れてマネをしていました」

 

 

「そうですね。あと、（ディエゴ・）マラドーナも好きでした。いまのように簡単に映像は見れなくて、ビデオを借りて家で見るとか、夜遅くにやっていたW杯を見たりしていました。Jリーグも開幕したばかりで、それこそ（三浦文丈）監督がマリノスでプレーしているところも見ていました」

 

「はい。昔はTVで、Ｊリーグの珍プレー好プレー集もやっていましたし、露出も多かった。スターと言いますか、自分の中では芸能人以上の存在でしたし、実際にそれくらいの価値はあったと思います」

 

「いやいや、高校のときはWBでしたし、高校2年生の最初のころはSBでプレーしていました。その年にU-16日本代表に初めて選ばれて、それからは『高校年代では通用するけれど世界で通用するにはどうすればいいんだろう』という目線になって、常に『これでいいのか？』と自問自答するようになりました。それまでは『高校3年生で試合に出てどこか指定校推薦で大学に行けたらいいな』と勝手に思い描いていたプランが『まずはU-17日本代表でW杯（当時は世界選手権）に出る。（U-18日本代表でプレーしていた選手はその後プロに入ることが多かったため）、自分も同じ道を進めるようにまずはU-18日本代表に選ばれるように頑張ろう』という明確な目標がポンポンと決まっていきました。それに向けて取り組んでいましたが、結局は高卒でプロにいけなかった。それでも大学で基盤をしっかりと作ることができましたし、それが自分の中では大きかったです」

 

「そうですね。当時の高校年代は、代表に入っときくらいしか外国籍選手と対戦する機会がなかったですからね。代表では世界を見据えた目線で常に周囲と話をしていました。それにほかの国の選手たちは同い年なのにもうプロとしてお金をもらっているし、それで生活している。でも自分はのほほんと高校生活を送っていた。勉強はしっかりやっていましたが（その違いが）ショックで『この差をどうやって埋めよう』という考えになりましたね」

 

「大人と子どもみたいな感じでしたね。向こうは体もデカいですし。U-17世界選手権ではフランスとナイジェリアとアメリカが同組でした。フランスは黒人の選手も多かったですし、ナイジェリアの選手もフィジカルがすごかった。そこで『この選手たちをどうやって追い越そう、追いついてやろう』というモチベーションになりましたね」

 

 

「13歳、14歳の年齢になると、2年後、3年後にはプロとして試合に出ている選手もゼロではないと思います。『遊びたい』とか『サッカーがつまらない、面白くない』と思う時期があるはずですが、自分がどうなりたいかというビジョンを強く持ってそこから逆算して頑張ってほしいと思いますね。特に、メリハリをつけて遊ぶときは遊び、ちゃんとやるときはやるという習慣を身に付けてほしいです。全部が全部『サッカーのために』と思って取り組んでいると、がんじがらめになっていつかパンクしてしまう。ほどよい範囲内で遊べばいいと思います」

 

「マリノスのジュニアユースの練習が終わって、夜8時くらいから横浜のゲームセンターで遊んでいたら、それがコーチに見つかり、めちゃくちゃ怒られたこともありました。それで結局1年でマリノスのジュニアユースをクビになってしまいました…。夜遅くに全然お金もないのにフラフラして、いま思えば『何が楽しかったんだろう』とは思いますね。夜遅くまで遊びに出かけるというのはよくないですけど、許される範囲でメリハリはつけたほうがいいと思います」

 

 

「昨季、行くところがなくて、相模原に拾ってもらったような形で加入し、J3からなんとか昇格しました。正直、今まで自分が所属していたチームはいいところばかりでした。清水から始まって名古屋に行き、横浜FM、G大阪、京都とプレーしましたが、そこと比べると、相模原は練習場も転々としていてクラブハウスもない。練習着も自分で洗濯しますし、試合のスパイクやアップ着も自分で全部用意しなければいけない。そのギャップはありますが、いまはクラブを作り上げている最中です。DeNAさんが経営に参画して、さらにJ2に上がって、クラブとして大きくなろうとしている。その時期に関われていることはすごくうれしいですね。変化し始めている様子をジュニアユースの子たちにも少しは感じてもらえたらいいなと思います。例えば、スタジアムが（相模原駅近くに）新しくできる。その工事をしているところを生で見たり、クラブハウスが出来上がっていくところを実際に見るだけでも必ず影響はあると思います」

 

「はい。もちろんクラブに名を残すために、という思いもゼロではないですけど、やはりいるからには負けたくない。J3から上がって『相模原だから（仕方ないね）』という目で見られるのもイヤです。『恵まれているチームに勝ちたい』という気持ちは向かっていく立場になって初めてわかりましたし、いざ自分が下のカテゴリーからどんどん上がっていくのを体験していくと面白いと感じます。余計負けたくない気持ちが強くなりましたね。相模原のようにみんなで頑張って積み上げてきてやっとJ2に昇格できても、ほかのクラブから見たら『J2なのにクラブハウスがないの？』とか『練習場、天然芝じゃないの？』思うでしょうし、逆にJ3だけどしっかりとクラブハウスも練習場も整っているチームもある。何が正解かわからないですし難しいところでなんとも言えないですけど、そのチームのスタイルでやっていけばいいのかなとも思います」

 

「それを、このチームにいる選手たちが感じているかどうかですよね。例えば『ここで頑張ってステップアップしたい』と思って、それを実現したら（すぐにでも）いい環境でプレーできるじゃないですか。若い選手はそういった気持ちをもっとプレーに出してもいいと僕は思います。外国籍選手もそうですけど、いまここで出られているからといって満足しないでほしいなと。かと言って、そういう（ステップアップの場にされるような）クラブにもなってほしくない。なので、まずはJ2に残留して、ゆくゆくはJ1ライセンスを取得して、神奈川にいるJ1のチームの中に割って入っていく。そこに向かっていくためにも選手は1年、1年チームのためにしっかり頑張っていかないといけないですね」

 

「そう。若い選手たちはそこまで『チームのために』と思わないで、自分を売り込むくらいのつもりでやってほしいです。この前イナさん（稲本潤一）も言ってましたけど、ベテランが頑張れば若手の刺激になるし、お互いが高め合いチーム力をどんどん高めていければそれがベストだと思います」

 

「想像しただけでも面白そうだと思います。それまでは大変だと思いますし何年かかるかわからないですけど、カテゴリー的にはあと一つ。とりあえずはこの舞台をキープしておかないといけないですね。Jからの配分金もJ2とJ3では全然違う。残留することで基盤も

作りやすいはずですから、そういうところにも貢献できればいいですね」

 

 

「わかりません（笑）。まだ6試合ですからね。でも6試合で勝点6は少し少ない。どこかで連勝したいですね。でもまだ連敗してないことはいいことだと思います。シーズン前半戦のうちに連敗はしないでどこかで必ず連勝して勝点25、もしくは30くらい取れたらベストですかね。監督がどういうペースで考えているかわからないですけど、42試合あるので、それを細かく区切って、最初の6、7試合で勝点をどこまで獲得するか。その結果によって、次の6試合、7試合では勝点をどれだけ取ればいいのかが変わってくる。いまちょうど6試合を終えて勝点が試合数より下回らなかったのはよかったですけど、次の6試合では試合数より上の勝点7～10を取れたらベストですね」

 

「ちょうど今日（4月7日）から全体練習に合流しました。もう一度体をしっかり作って、早くチームに貢献できるようにしたいですね」

 

「可もなく不可もなくという感じですね。もうちょっと周りを動かしたり自分が存在感を出す試合や時間を多くして、違いを見せられたらいいなと思います」

 

「誰よりも声を出して引っ張っていくというよりは、出しどころがなかったら自分のところにとりあえずボールを預けたらしっかりと収めてなんとかしてくれるというような、クッション的な存在になれるようしっかりこなしていきたいですね。そこからまた違う展開に持ち込めたらと思います」

 

「あまり長く同じチームに在籍してないのでなんとも言えないですが、大卒でここまでやれていることは自分でも意外に思っています」

 

「はい。最初は大卒で10年（はプレーする）という目標を立てていました。大卒1年目は23歳でそれから10年なので33歳。高卒の選手たちとは4年というすごく大きな差があるので、まずは10年でしっかり試合をこなしてしっかり活躍していくというプランを考えていました。それがいま、37歳でもプレーできていることはすごく幸せなことですね」

 

「まずはケガをしないで、チームが残留できるようにしっかりチームを引っ張っていきたいですね。守備はもちろんしないといけないですけど、攻撃でゴールなりアシストなりの結果を残しながら、あとはプレーの面でみんなに思ったことをしっかり伝えていきたいと思います」

 

「そうですね。結果的にそうなったらいいなと思いますし、その逆算はクラブの上の人たちがやってくれていると思います。僕たち選手は現場でサポーターやスポンサー、街の人のためにも、あとは自分たちの生活も懸かっているので、自分のためにもピッチでしっかり結果を出していきたいです。やはり昨季はチームとして一つにまとまって、『いけるんじゃないか？』という雰囲気からああやって奇跡が起きて逆転で昇格できた。チームが一つになることが大事だということをあらためて学んだので、今季もそういう状態を作ってなんとか残留していきたいですね」

 

「できつつあると思いますね。新潟のような明らかに強いチームから勝点を拾えたことはポジティブに捉えていいと思います」

 

「昨季と比べてスタジアムに来てくれている人数も全然違いますし、この前の新潟戦もそうですがアウェイでもああやって多くのサポーターが遠くから来てくれる。やはり人がたくさんいる中で試合をするのは気持ちのいいことです。一生懸命プレーしている姿は人の心を動かすのでそういうのを僕らがしっかり見せないといけないです。その気持ちを忘れないで戦っていきたいです」

 

 

 

 

 

 

 

藤本 淳吾（ふじもと・じゅんご）

1984年3月24日生まれ、神奈川県出身。173cm/69kg。横浜栄FC→桐光学園高→筑波大→清水→名古屋→横浜FM→G大阪→京都を経て、20年途中に相模原に加入。J1通算328試合出場54得点。J2通算12試合出場1得点。J3通算19試合出場2得点。日本代表国際Aマッチ13試合出場1得点。