夏が来た。
7月6日の観戦は、そんなことを痛感させられる2試合となった。
平成25年7月6日(土)
プリンスリーグ関東1部第8節/船橋法典公園(グラスポ)
「市立船橋高 4-1 八千代高」
この日、最初に観たのは、プリンスリーグ関東1部「市立船橋高vs八千代高」の一戦。午前11時キックオフの試合はギラギラと太陽が照り付ける極めて“夏らしい”気候の下で実施された。「屋根がある会場で良かった」と素直に思える、そんな天気である。
ただ、そうした暑さを悪い意味で感じさせないあたりは、さすが高校生。ペース配分を度外視したような猛ラッシュから早々に試合は動いていく。先制点こそ八千代だったが、最終的には市船がチームとしての鋭敏さ、個々の能力の高さの双方を見せて完勝。市船は多数の1年生をピッチに送り込んでいたのも印象的だったが、朝岡隆蔵監督によると、こうした起用は“冬への投資”であるらしい。こうした種まきもリーグ戦の重要な“使い道”である。
もっとも、例年は謙虚なコメントが目立つ朝岡監督だが、今年は「チャンピオンを狙うしかない」と断言。リーグ戦では一つ上のカテゴリーである高円宮杯プレミアリーグへの昇格を目指しつつ、夏冬の全国では王者の椅子を狙うと明言していた。Jクラブも注目するエース石田雅俊もさすがのゴールを記録するなど堅調の様子で、夏の高校総体で優勝候補の一角を担うことは間違いない。
平成25年7月6日(土)
J1第14節/NACK5スタジアム大宮
「大宮アルディージャ 1-1 サガン鳥栖」
夜の試合は、まったく別の意味で“夏らしい”試合となった。より正確に表現するなら、“夏のJ1のナイトゲームらしい”ということになるだろうか。
「夏のJは花火がよくあがる」。
多点試合が目立つことを比喩的に表現した言葉だが(誰が言い出したかは知らないが)、「ドタバタ試合が多い」という印象でもある。後半に入ると運動量がガクリと落ちて、全体が間延びし、その中で集中切れも目立ち始める…。そんな試合が半ば必然として起きるのが「夏のJ」。この日の試合もその典型だった。
もっとも、ナイトゲームでもあるので、実際はそこまで走れなくなるわけではない、とも思うのだ。昼間の高校生のゲームで足が止まるのは無理もないが、夜である。真の限界はもう少し先にありながら、限界の手前でストップしてしまっているのが実状だ。大宮のベルデニック監督も「コンディションの問題ではなく、メンタルの問題だ」と強調していたが、これを強がりと見るのは不適当で、むしろ真理と見るべきだろう。「イケイケ」になっている側のチームは暑熱の中で少々疲れても走り切れるが、心理的に受け身に回ったほうはそうもいかない。それが夏のゲームで当然のように起こる“必然としての終盤ドタバタ劇”の主因だろう。
この日、大宮は足の止まった83分に鳥栖FW池田圭に中央を破られて失点し、貴重な勝ち点を逃した。だが鳥栖の反撃は例外的な出来事だったわけではない。浦和は83分に甲府の守りを破り、広島は後半ロスタイムに1-0でFC東京を破る決勝点をあげ、新潟は88分に同点ゴール、94分に逆転ゴールと、柏を相手に怒濤の逆転劇を披露。そして名古屋もまた89分に得点を奪った。磐田とC大阪の後半スカスカになっての得点ラッシュにも同じような現象を見て取ることができるかもしれない。
Jリーグは夏に入った。夏らしいドタバタ試合は、これから増えていくだろう。これを「ゲームの質が低い」とか悪く解釈するのは簡単なのだが、Jリーグを一個のエンタメとして観るなら、別に悪いことではあるまい。終盤の多点傾向、つまり「終盤に何かが起きる可能性が高い」という夏試合の傾向は、単純に「面白い」のも確かだからだ。「Jリーグ初心者は夏休みに誘え」とは、よく言ったものである。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/07/07 12:00