生憎の曇天。少し肌寒さすら覚えた6月1日の土曜日、京葉線に乗って蘇我を目指した。目的地は、フクダ電子アリーナ及び、その付属施設。狙いは昼から夜までジェフ尽くし、下から上までクラブを観られる“ジェフ3本立て”。つまり昼の13時10分から、フクダ電子アリーナの隣に位置する人工芝グラウンド、フクダ電子スクエアでジェフ千葉U-18とFC町田ゼルビアユースの試合を、夕方の16時からはこれに隣接するジェフ千葉の練習場であるユナイテッドパークにて、ジェフ千葉U-15と川崎フロンターレU-15の試合を、そして夜はフクダ電子アリーナにてJ2第17節、ジェフ千葉とモンテディオ山形の試合を観戦するという“ジェフ尽くし”のフルコースである。
まさにサポーターのために用意されたようなスケジューリングだが、それも優れたハードあってこそ。行ったことのない方も写真を見ていただければ一目瞭然だと思うのだが、スタジアムに隣接した場所にこれだけのグラウンドがある環境は「素晴らしい」の一言。下部組織の子供たちにとっては、自分の試合を終えてそのままトップチームの試合へ足を運ぶことも可能だし、何より「目的の場所」が見えている環境で試合や練習に励めるというのは、それだけで大きな刺激になるもの。この環境はプロクラブにとっての一つの理想型である。
■日本クラブユース(U-18)選手権関東大会2次予選
「ジェフ千葉U-18 4-2 FC町田ゼルビアユース」
初めの試合はU-18、つまり高校生のゲームとなる。大会は日本クラブユース(U-18)選手権の関東2次予選。
クラブユース選手権は夏休み開催のカップ戦で、高校総体(インターハイ)のクラブチーム版に当たる。毎年三ツ沢で決勝戦を行っているアレと言えば、分かってもらえる方も少しは増えるだろうか。現在行われているのは関東の2次予選。この日、千葉の対戦した町田は、その初戦で鹿島を破り、波に乗るチームだった。
千葉を率いるのは、元日本代表MFにして、前ザスパ草津(現・群馬)監督の副島博志氏。53歳の実績ある指導者をこのポジションに据えるあたりに、「育成のジェフ」再建に向けたフロントの意欲も見え隠れする。Jリーグのユースチームはかつて「引退したばかりの若手指導者の研修の場」となっていた部分が少なからずあったが、近年徐々にJクラブの認識も変わってきている——と、いいのだが。
試合のほうはU-17日本代表MF浦田樹が左足のCKを直接ぶち込んで早々に千葉が先制し、その後2点を追加。あっさりとゲームの大勢が決まってしまうような、少し呆気ないものとなった。2年生の浦田は左利きでゲームを作れる期待のプレーヤー。この日はボランチを務めたが、複数のポジションをこなすポリバレントな好選手である。町田は3点差となってから開き直った部分もあったのか、能動的にボールを動かせるようになり、攻撃の形も出始めたのだが、少し遅かった。交代選手も機能して、後半に猛攻を見せて2点を返したあたりは見事だったが、結局スコアを覆すには至らず。4-2で千葉の勝利となった。
ここで間食。スタジアムグルメで高名な『サマナラ』(カレー屋さんである)でチャパティを購入。通は机がなくとも食べやすい、これを食うものらしい。知らなかった。スタジアムの外でも、そして早い時間から売っているのも素晴らしい。そして写真は撮り忘れた。
■関東ユース(U-15)リーグ第13節
「ジェフ千葉U-15 3-2 川崎フロンターレU-15」
夕方からは関東ユース(U-15)リーグ。現在、日本の中学年代(つまりU-15)は全国を9地域(北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国、四国、九州)に分割してのリーグ戦を実施している。この9地域リーグの上位チームには12月に開催される高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権への出場資格が付与される方式だ。関東は1部・2部に分かれ、各12チームによるホーム&アウェイ2回戦総当たり方式。つまり全22節で、この日は第13節だった。今季の最終節は10月19日に予定されている。
そして試合は一進一退の超熱戦。この日観た3試合で最も下のカテゴリーに当たるが、試合内容は断トツに面白かった(……)。川崎Fが同姓の日本代表FWを思わせる岡崎多佳良(たから)のアグレッシブなゴールで先行すれば、千葉も機能美あふれるパスサッカーで反撃していく。千葉の前線にはクラブ関係者が「選手を集めるようになった成果が出てきた世代です」と語っていたのもうなずけるタレントがそろっており、この前線をMF武藤真平がキビキビとしたパスで操る攻めは迫力があり、何よりエンタメ性に富んでいた。
結局、試合は3-2で千葉の競り勝ちに終わったが、儀礼ではなく、素直に拍手を贈れる好勝負。両チームの親御さんが盛り上がっていたのは当然だが、関係ない第3者も引き込まれるナイスゲームだった。
そして、夜はフクアリへ。昇格を狙いながら今ひとつ波に乗れていない(ように見える)2チームによる決戦である。
■J2第17節/フクダ電子アリーナ
「ジェフ千葉 1-3 モンテディオ山形」
寒い。寒すぎる。まさかこんなに寒いとは思わなかった。上着を持ってくるべきだったということで、思わずカッパを買ってしまった。雨具の合羽ではなく、千葉のオフィシャルパートナーのKappa。ウインドブレーカーを購入し、また売り上げに貢献してしまった…。店員さんは「寒いんでしょ? 今日寒いっすよね? 今日ほかにも何人かそういう方がいらっしゃいましたよ」と満面の笑顔。
お、おのれ…。
そんなわけで、J2第17節フクダ電子アリーナ。千葉が迎え撃つ相手は奥野モンテディオ。山形である。ご隠居は次なるスタジアムグルメに向かう前に、当日券売り場に並ぶ。5人くらい並んでいる。「そうか。Suicaが使えるのか…」と、どうでもいいことに感動しているところで、最前列。本当はゴール裏が良かったのだが、同行者がすでに前売りで買っていて同じ場所に行くことを強要されたため、やむを得ずSA自由席を購入。3,300円也。
高い……気がする。購入したのは、いわゆるバックスタンド自由席である。J2価格という感じはなく、それでも客が入るのだから、このへんはさすがに名門クラブである。いや、これはフクダ電子アリーナ効果と観るべきか。自分の感覚で言えば、陸上競技場でこの値段は明らかに高い。正直に言って、払いたくなくなる額である。
ただ、今日はこの感覚を味わいに来たのだ。
もちろんこの試合も取材申請をしておけば、“ゼロ円”で観ることは可能である。ただ、招待券を含めた「ゼロ円観戦」ばかりを重ねてしまうのは良くない面もある。こういう仕事をしている人にありがちな、あるいは、こういう仕事をしている人でありながら、“お客さん”として試合を観る感覚を喪失してしまうのは褒められたことではない。だからこそ、「自分の金を払って客として観る」習慣は絶やさないようにしているわけだ。
スタジアムグルメは、キムチスープを勧められた。確かに寒いし、これはうまそうである。だが、ここはあえて冷たいモノを食い、ハーフタイムにキムチスープ。この作戦でいくことにする。買ったのは冷静カッペリーニ。「スタジアムパスタ」という言葉の響きは、もう何かダメそうな感じがあるが、意外にしっかりした味わい。これはいいかもしれない。そう、暑い日なら…。これも写真は撮り忘れた。
当たり前だが、客として入るとすべてに対して厳しくなる。ただ、試合前の自分は間違いなく鷹揚に観ようと思っていた。「米倉の右SBって、どんな感じかな?」「山形どうなんだ。中盤から前のメンツは面白そうだぞ」などと素直にワクワクしていた。
だから余計に失望したのかもしれない。
客として観ると割り切っていたので、メモは取っていない。ただ、前半の千葉の良いプレーを思い出そうとしてもさっぱり思い出せないのは、メモのせいではなさそうだ。こんなに状態が悪くなっているとは思わなかったというのが正直な感想で、山形の良さばかりが目立つことになった。0-1での折り返しだが、「これに1,650円か…」と落胆の吐息も漏らしつつ、ゴール裏からあがったブーイングに共感を覚える内容だった。
後半に入って千葉は少し持ち直した。ジャイールが孤立しているのはわざとやっている部分もあるのだろうけれど、この日の彼に個人で何かを残せるキレは期待できそうにない。そうこうしているうちに山形がPKで加点。千葉も米倉の素晴らしいプレーで1点を返したが、攻守がバラバラのこの日は厳しかった。4点、5点と失点してもおかしくないような展開で、結局1-3のスコアでタイムアップとなった。
後半は善くも悪くも盛り上がりのある内容だったので、チケットに払った値段相応の楽しみは得られたようには思う。ただ、千葉を継続観察しているわけではないので偉そうに論評する気はないのだが、それでも今後が心配になる試合だったのは間違いない。反対に山形の意気軒昂にボールへアタックして行くサッカーには好感を覚えた。走り勝った試合内容を思うと、この日の寒さが彼らに幸いしたのは間違いない。果たして夏場にどうなるかは、奥野監督のお手並み拝見といったところだろうか。
なお、ハーフタイムに購入に向かうと、キムチスープは売り切れていた。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/06/03 19:26