平成25年5月11日(土)
J1第11節/埼玉スタジアム2002
「浦和レッズ 3-1 鹿島アントラーズ」
浦和美園駅で下りた瞬間、人の多さを実感した。道の脇で売られる弁当にも売り切れが目立つ。この日、埼玉スタジアム2002には5万人近い大観衆が詰めかけたわけだが、Jリーグが『20周年記念試合』と号しただけあって、動員にも力が入っていたのだろう。
しかし、この20年目の節目の一戦は、残念ながらJリーグ側が狙ったような試合にはならなかった。
当日のネット上にも、翌日の新聞にも、20年を懐かしく思い出すような記事が出ることはほとんどなく、ひたすら一つのゴールについての話題に特化することとなった。本当はちょっとウェットな内容のコラムで始めるつもりだったこのコーナーもまた、それを無視するわけにはいかないだろう。決勝点となった興梠慎三の得点は、オフサイド判定のミスから生まれているのだから。
もちろん、前提としてオフサイド判定が難しいという認識はシェアするべきだ。スロー再生を見れば劣弱な視力の私でさえ判定を下せるが、リアルタイムで78分間にわたって激しい運動を繰り返した上、スピーディーな攻防、複数の選手が立体的に重なり合う中、出し手と受け手の双方を視野に収めてジャッジを下す。この過程は言うほど簡単ではない。オフサイドをめぐる誤審は、今日のサッカーにおいて一定の確率で起こる「宿痾」のようなものではある。そんな一面をこのスポーツが持つことをファンもメディアも、そして選手や指導者も認識しておくべきだろう。
とはいえ、「それもサッカー。今日は運がなかった」などと言ってみても、この理屈を敗者の側から肯定するのは心情的に難しいのも当然だ。おまけに、当日のスタジアムでは、この得点直後にそのシーンをリプレーで流し(オフサイドの瞬間に映像を止めるサービス付きだった)、会場にいたすべての人が(恐らく審判団も)「ミスジャッジ」の情報を共有してしまった。鹿島の青木は「(微妙な判定は)もやもやするものだが、今回はそれもなかった」と苦笑していたという。
判定ミスに関しては個人に対して試合割り当ての停止といった処分があるのだろう。だが、オフサイドが現行ルールのままである限り、そうした処分が次のミスに対する抑止効果を生むかと言えば、かなり難しい。
個人的にはプロの興行に関しては、各リーグの判断で部分的な映像判定の導入に踏み切る時期に来たのではないかとも思っている。「誤審もサッカーの一部」と許容するには、僕らの社会は映像面で発展しすぎてしまった。プロテニス等で実施されているチャレンジシステムのように、1試合に1回だけゴールの有無に関してのみ映像判定を求める権利を両監督に認めるといった形式はどうだろうか(異議が正当であれば、もう1回権利を付与し、不当であれば以降の権利を失う)。駆け引きの手段と化す可能性もあるが、オフサイドの複雑なルールを加味しての機械判定が現在の技術で不可能なことを考えても、検討する価値があるのではないだろうか。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/05/13 22:42