5月よりスタートしている、西部謙司WEBマガジン「犬の生活」。メインコンテンツはジェフユナイテッド千葉ですが、東アジア杯を戦う日本代表について西部謙司が分かりやすく、“J1選抜”とも言われる今回の日本代表の正しい見方を解説しています。今回はWEBマガジン「犬の生活」で掲載した、豪州戦のコラムを全文公開でお届けします。コラムの最後に、韓国戦の予想先発メンバーもあります!
■メンバー総入れ替えで内容はアップ
中国戦から先発総入れ替えの驚きの采配でしたが、内容的には中国戦よりも良くなって勝つこともできました。まあ、東アジア杯はこのチームが成長することよりも、この中から何人新たな戦力が台頭するかがメインテーマですから、メンバー総入れ替えもアリなんですよね。日程的にも何人かは替えるとは思ってました。
個人的に注目していたのは豊田陽平です。中国戦は柿谷曜一朗が良かったので、今度は豊田がどんなプレーをするのか。タイプは違いますが同じ1トップのポジションで、ザッケローニ監督としても替えやすいポジションだと思うので。
結論からいうと豊田は良かったと思います。高さ、強さのFWという点で、競合するのはハーフナー・マイクでしょう。ハーフナーよりアジリティー、足下の技術では上です。あとはストロングポイントの空中戦ですが、決定機を2つばかり外してしまったのは痛かったとはいえ、ハーフナーに劣っている感じはありません。
■難しい大迫の評価
大迫勇也の評価は難しいところですね。2ゴールをゲットし、最も活躍した選手といえるでしょう。ただ、大迫と前田遼一を入れ替える理由がないと思うんです。
大迫と前田はかなり似たタイプで、ボールの収まりはいいしシュート力もある、ヘディングの強さもそこそこあります。いわば万能型なのですが、W杯レベルでみたときに突出した武器はありません。それでも、前田が前線にいることで本田圭佑や香川真司がプレーしやすい状況になっている。つまり、従来のチームの中で重要な歯車の一つになっている点で、大迫よりもかなりアドバンテージがあると思います。
大迫を前田の代わりに使うとすると、周囲とのコンビネーションを再構築することになります。しかし、そこまでして前田より大迫を優先すべき理由がない。そこまで圧倒的なプレーを大迫がしたとは思いません。若さは大迫のアドバンテージですが、W杯は来年ですからね。ほとんど関係ないでしょう。
山田大記にも同じようなことが言えるかと。山田自身のプレーは安定感があり、インテリジェンス、スキル、運動量、センスとすべてを兼ね備えたMFです。けれども、代表の2列目は人材に困っていません。山田でなければいけない理由がない。本田、香川のバックアップとして食い込めるかどうかという位置でしょうか。
■別枠の齋藤
齋藤学は“別枠”で考えれば合格ラインのプレーをしたと思います。誰かに取って代わるとか、バックアップという位置づけではなく、試合途中で投入するスーパーサブ的な枠を想定すると有力な候補でしょう。
齋藤にはドリブルという明確な武器があります。1対1で抜いて相手の数的優位を崩すプレーができる。味方とのコンビネーションはあまり関係がないので、従来のメンバーの中に入れて機能するかどうか考える必要もありません。先制点のような個人技は大きな魅力です。90分間使うなら難点がありますが、短い時間で流れを変えたいときはうってつけのタイプです。
ちょっと気になるのは齋藤を主に右サイドで起用したこと。先制点がまさにそうでしたが、左サイドを起点にプレーしたほうが生きると思うんですよね。それをあえて右に置いたのは、右サイドでのプレーを確認したかったからではないかと。というのは、左は絶対的な香川がいるからです。齋藤を投入するとしたら、香川を左に残したまま右に使うことが考えられるので。まあ、香川を右へスイッチしても問題ないと思うんですが、一応そういうことも考えたのではないかと。考えすぎかもですが。
■守備陣はノーインパクト
4バックと2ボランチについては収穫なしというところでしょうか。CBはのどから手が出るぐらいほしいと思うんですよ。コンフェデ杯で9失点でしたからね。でも、ワールドクラスのCBがいるならとっくに使っているわけで、鈴木大輔と千葉和彦を起用してみたけど、やっぱりいい意味での驚きはなかったのではないですかね。韓国戦はもう一度、森重真人を起用すると予想します。相方は栗原勇蔵かな。森重の最終テストですね。
SBについては、もともと新戦力を探していません。内田篤人、長友佑都、酒井宏樹、酒井高徳で十分回せますから。4人に何かあっても駒野友一がいる。槙野智章と森脇良太はすでに代表経験があります。
ボランチは高橋秀人と扇原貴宏でスタート。高橋は良いプレーをしましたが、すでに代表メンバーですからね。扇原は難しいと思いました。才能あるプレーヤーですが、才能を発揮しきれていない。場数を踏めば良くなると思いますが、もうそれほど時間がない。もっと早く試していれば違ったかもしれませんが。
守備はユニットで、連係が必要なパートです。前のポジションと違って周囲と無関係に個の能力を発揮できる場面は限られています。図抜けた能力がないかぎり、なかなか強い印象を与えるのは難しい。今回も代表に残したくなる活躍をした選手はいませんでした。
■最終テストの韓国戦
韓国戦は最終テストになります。有望株を使って確認作業をするはずです。当確ラインにいる柿谷は必ず使うでしょう。同じく工藤壮人、山口螢も先発の可能性が高いと思います。齋藤は時間限定で起用するのではないでしょうか。
山口と組むボランチは青山敏弘と予想します。このゲームで真価を示せるかどうか。同じくCBの森重にとっても正念場でしょう。GKとSBは無難に西川周作、駒野友一、槙野智章でまとめ、森重の相方は栗原か鈴木。2列目の左は原口元気、トップ下は高萩洋次郎を先発させて途中から豊田、柿谷の2トップを試してほしい。
ホームの韓国は相当気合いが入っていると思いますので、白熱した展開になりそうです。
[4-2-3-1] | ||||||
柿谷 | ||||||
原口 | 高萩 | 工藤 | ||||
青山 | 山口 | |||||
槙野 | 栗原 | 森重 | 駒野 | |||
西川 |
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(BLOGOLA編集部)
2013/07/26 19:44