5月よりスタートしている、西部謙司WEBマガジン「犬の生活」。メインコンテンツはジェフユナイテッド千葉ですが、来年のブラジルW杯を戦う日本代表について西部謙司が分かりやすく、ザックジャパンの現状を解説しています。今回はWEBマガジン「犬の生活」で掲載した、グアテマラ戦のコラムを全文公開でお届けします。
ガーナ戦へのスパーリング
日本代表はすでに予選を通過し、来年のW杯への準備に入っています。グアテマラのレベルの国とはW杯では対戦しません。次に試合をするガーナはグループリーグで対戦するレベルの相手です。つまり、グアテマラはガーナ戦に備えたスパーリング相手という位置づけにすぎません。この試合で課題が見つかるとか、克服するとか、そういう種類の試合ではないんですね。
ザッケローニ監督は「交代はすべて予定どおり」と言っていたので、使いたい選手はすべて使えたようです。アディショナルタイムに出そうとしてやめた内田篤人は予定外だったと思います。長友佑都が打撲したので代えようとしただけでしょうね。
まずはガーナ戦へ向けての調整がメインテーマでしょうから、予定どおりに選手を起用できたのは良かったのではないですかね。試合勘のない香川真司、長谷部誠、吉田麻也を長い時間プレーさせ、新戦力の大迫勇也、森重真人、工藤壮人、青山敏弘を試すこともできました。
この試合ではわからない守備の修正
コンフェデ杯3試合とウルグアイ戦の4連敗で問題になったのが失点の多さです。グアテマラ戦は久々の無失点だったのは良かったのですが、これで課題が解決されとはいえません。そもそも守備の機会がそんなになかったですから。
とりあえずウルグアイ戦のようなディフェンスラインが不揃いという初歩的なミスはありませんでした。ラインの上げ下げの判断もまずまず的確だったと思います。
森重のメドがついたのは収穫でした。今野のバックアップとして十分なプレーだったと思います。高さもありますからね。
この試合は日本が押し込む時間が長かったので、相手陣内でプレスして早くボールを回収する形の守備がメインでした。これに関してはコンフェデ杯で強豪を相手にしてもそこそこできていたので、グアテマラに対してやれないはずがない。しっかり奪えていましたが、そこはもともと課題ではありません。
ザッケローニ監督は、「相手のビルドアップにアプローチしないとMFやDFが苦労する。前が止めてくれたのでグアテマラは深いところまで入ってこられなかった。格上にも継続的にできるようにしたい」と話していました。強豪相手の失点はDFではなく、チーム全体の守備の問題ととらえているのでしょう。確かに前線の守備は重要です。ただ、これでは課題は修正できません。
繰り返しますが、前からプレスできているときには強豪相手でも失点していません。問題は押し込まれたケースなんです。ミスやハイクロスから失点しているんです。この点はグアテマラ戦ではわかりません。守備の課題を修正するための試合ではありませんでした。
攻撃は「可能性」どまり
Jリーグでキレキレの大迫が先発、存在感を示しました。今後もチャンスを与えられるでしょう。後半登場の柿谷曜一朗はミスが多かったですね。ただ、才能の大きい選手なので「可能性」は感じました。本田圭佑や香川とのパス交換で中央を破る形がありました。柿谷は本田、香川と並んで攻撃の看板になれる選手です。とはいえ、グアテマラ戦の中央突破はまだ行き当たりばったりの印象でした。うまさは見せているけれども、そこまで崩せていない。ミスで自滅する回数も多かった。もう少し精度を上げたい。
3点取ったのは本田、香川、岡崎慎司がそろったいつものメンバーがいた時間帯でした(遠藤保仁のFKは香川交代の直後ですが)。香川が左サイドで切り返してファーサイドへクロスとか、バイタルへボールを入れてからの長友のオーバーラップなど、手慣れたコンビネーションを続けてグアテマラを圧倒しています。
逆にいえば、いつものメンバーがそろわないと攻撃の迫力が落ちます。最後のほうは[3-4-3]もやりましたけど、予定の選手を使うためのやり繰り以上の意味は感じられませんでした。[3-4-3]のテストのつもりだったなら成果はないですね。もう、やらなくていいんじゃないのと思うぐらいに。
まあ、スパーリングとしては良かったと思います。肝心なのはガーナ戦です。ブラジルやイタリアのクラスに勝てないとベスト8は難しいかもしれませんがベスト16には入れます。しかしガーナに負けるとベスト16はかなり怪しくなります。結果が求められる試合ですね。
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(BLOGOLA編集部)
2013/09/07 21:22