史上稀に見る圧倒的な強さで今季のJ1を制覇した川崎フロンターレ。守備の要として、そしてキャプテンとしてチームを支えていたのがDF谷口彰悟だ。
インタビュー前編では、今季のチームの攻撃的サッカーの中で、『1対1』で守ることに対する考え方の変化と成長について語った。そして今回の後編では、さらに『1対1』のこだわりをディープに語るほか、今季大ブレイクしたルーキーの三笘薫のプレーについても、DF目線で言語化する。
※このインタビューは新型コロナウイルス対策のため、リモート取材で行われました
――あらためて、谷口選手にとって『1対1』のこだわりはありますか?
「よく考えていることは、相手の状況によってすべてが変わるということです。例えばスピードに乗った状態での『1対1』なのか、立ち止まった状態での対峙なのかで対応は変わってきます。もちろんそこに自分の強みと相手の武器を理解することが絶対条件です。すべて頭に入れて、対応を考えること。それが基本的に大事にしていることです。大してスピードに自信がないのに相手に突っ込んでいって、簡単に縦にかわされるようではダメです。自分が速くないなら、自然と敵に攻め込ませながらも間合いを詰めていくほうが有効です。その強みをしっかり理解して対応することは、どんな選手にとっても重要だということは伝えられます」
――谷口選手も自分の間合いに引き込んで守るプレーに長けている印象です。
「自分のテリトリー、ボールに届くエリアはどれぐらいか大体把握しています。そこに相手をどうおびき寄せるか。もちろん場面ごとに対応は都度変わりますが、自分が一番得意とする状態に持っていく守り方はここ数年やってきましたし、コツもつかんできているところです。特にゴール前では相手にとってはパスとドリブルに加えて、シュートという選択肢も出てきます。シュートが一番ゴールリスクは高まるので、相手にかわされて足を振られても、こちらもギリギリで足を伸ばしてボールをかき出したり、ブロックをする。かわされても次のところで止められるか、二手、三手先ぐらいまでの守備を想定することもゴール前での『1対1』では大切です。もちろん場数や経験も大事です。僕も何回もやられて学んできています(笑)」
――DFとして『1対1』の怖さがなくなったと、インタビュー前編では話していました。いまでは局面を楽しめているのですか?
「ゴール前で『1対1』になりますよね、それで例えば自分の間合いで相手を右側に誘い込んで、そこでシュートをブロックしようという先読みもしながら動いて、そのとおりに止められた瞬間は心のなかで『よっしゃ!』とガッツポーズをしています。あとは相手のカウンターで自分たちが広いスペースを守らないといけないときも、あえて敵の選手を見えていないふりをして自分が守りやすいエリアに誘い込む駆け引きも面白いですよね。ボールホルダーがヘッドダウンした瞬間に、自分はスッとポジションを移動してパスカットする。本当に細かいですし、観ている方からは分かりにくい部分かもしれないですが、それぐらいこまめに駆け引きをしていると正直『1対1』でも数的同数でも、止められる機会があるんです。そこの楽しさは、DFならではなのかなと思いますね」
――ところで、谷口選手が『1対1』で対峙してみてDFとして厄介だと思う選手、つまり『1対1』の勝負に長けている選手を何人か挙げていただきたいです。まずは、普段練習で対峙するフロンターレの選手ではどなたでしょうか?
「一番に出てくるのは、やっぱり三笘薫ですね。あとは小林悠さんにレアンドロ・ダミアンも相手にするとイヤですね。薫はもはやサッカーファンにとって言わずもがなでしょうが、ドリブルがうまいし速いし、あとはかなり相手DFを見ながらしかけてくるので、そこがイヤですよね……(笑)。自分がこうボールを持ったら、相手はこう動くだろうといった体の向きなども全部理解してドリブルで向かってきます。本当に対応が難しいですし、こちらも彼のプレーを分かっていて対峙しても、やっぱり体の重心が振られてしまうんですよ。彼はパスも出せるので、それを警戒してDFが体の重心を変えたところで、また深い切り返しでかわしてきます。もう、練習のミニゲームでも何回もスコーンと抜かれます(笑)。あとは本人も言っていますが一歩のストライドも大きいので、その足の運びで簡単にDFが置いていかれるところもあります。DFからすれば、『あ、いまボールをさらしたから奪える』という感じで薫はボールをコントロールするんですけど、でもそこに食いつくとストライドを生かして先にボールを触られ抜かれてしまう。自分の武器を理解した駆け引きもうまいですね。DFからすると、相手の足からボールが離れたから奪えると思ってチャレンジすると、切り替えされる。本当に相手をよく見ていますね、薫は」
Photo:Atsushi Tokumaru
――もちろん試合では実現しない「谷口対三笘」ですが、いまの話を聞いているとぜひ見たくなりますね!
「いやー、よく練習ではファウルで止めています(笑)」
――小林悠選手はいかがですか?
「悠さんはもう動き出しで決着をつけられてしまいますね。クロスへの入り方も絶妙ですし、ボールを持っているときではなく、いかに動き出しのところで止められるかにかかっています。DFの逆を取ったりするところは皆さんもイメージあるでしょうが、意外と見た目以上に体の当たりも強いです。いい動き出しからボールを受けて、そこで体も張れるところは悠さんが優れたストライカーたる所以だと思います。あとは一瞬でボールをずらして、DFを抜ききらずにシュートを狙ってきます。どこにいても、常にゴールを意識してプレーをしている選手なので、スキがあればすぐに狙ってきます。その姿勢がある時点で、DFからすれば『1対1』で対峙するのがイヤな選手です。ワンフェイクからのシュートもすごくうまいので、止めにくい選手だと思います」
――レアンドロ・ダミアン選手も挙げられました。
「ダミアンは相手を背負うプレーが抜群にうまいです。懐を作られてボールをキープされると、なかなか僕らは触れません。無理に触りに行こうと足を伸ばしてしまうと、今度は体ごと反転されて前を向かれて突破されてしまいます。ダミアンの場合は、対戦相手のセンターバックを見ていると、すごくみんな対応に苦戦している選手たちが多かったですね。DFにとっては身動きが取れない選手。僕もいつも練習で対峙するときに同じ思いをしています。こうして挙げた選手以外にももちろん優れたアタッカーがうちにはいるので、本当にフロンターレは練習から鍛えられる環境だなとあらためて感じています」
――今度は過去も含めて、これまで『1対1』で対峙してきて印象に残っている相手選手を教えて下さい。
「まず思い浮かぶのは興梠慎三選手(浦和レッズ)ですね。彼も何でもできる選手ですよね。相手を背負うのもうまいし、駆け引きも出来ます。ボールを持ってからのシュートパターンもたくさんあります。毎回苦戦するイメージです。あとは、僕がすごく印象に残っているのは現在ドイツ(アイントラハト・フランクフルト)でプレーする日本代表の鎌田大地選手。彼がサガン鳥栖時代に何度か対峙しましたけど、彼も『1対1』がうまい選手でした。ちょっと三笘薫に似たところもありまして、スッと上体を上げてパスを出すと見せかけて、切り替えして中に入り込んできたりします。『あ、うまい、抜かれる』という感覚になったことを覚えています。中田英寿さんみたいな感じというか、常に彼はプレー中の姿勢が良く上体が立っているので、常にパスを出せる準備ができている感じです。それでいて、パスだけを警戒していると、推進力もあるのでドリブルに入られて守る側の対応が遅れてしまいます」
――たくさん『1対1』の名選手を挙げていただきましたが、身体能力を前面に生かしてくる相手よりも、DFに駆け引きをしたりプレーの引き出しが多い選手たちばかりですね。
「僕はそういう何でもできる選手、パスあり、シュートあり、そしてドリブルありという相手のほうが気になりますし、苦手ですね」
――最後に、今回谷口選手も実際にプレーされた位置情報ゲームアプリ『TSUBASA+』ですが、インタビュー前編でも『1対1』の醍醐味にフォーカスしたこのゲームの面白さについて語ってもらいました。ちなみに谷口選手の周りにもプレーされている方はいらっしゃいますか?
「実は僕の知り合いも『TSUBASA+』をプレーしていまして、『この間、ジェジエウと対戦したよ!』と盛り上がっていました(笑)。このゲームはJ1からJ3までの選手が実名で出てきますし、各地で遭遇する対戦相手の選手たちもデータがローカライズされていて、例えば川崎市内だとフロンターレの選手たちと対戦できる機会も増えます。本当に各地でどんな選手と遭遇するかも楽しみの一つですね。ぜひ皆さんも谷口彰悟が出てきたら対戦してみてください(笑)」
――ちなみに、フロンターレのチームメイトでは誰がゲーム好きなのですか?
「そうですね、小林悠さん、ノボリ(登里享平)さんはいつもよくやっていますね。あとは若手の選手はだいたいゲーム好きで、特に宮代大聖がゲームに詳しいです。僕も久しぶりに『TSUBASA+』でゲームに触れて、携帯電話で手軽に『1対1』をチャレンジすることができているので、ぜひこれからチームメイトのみんなにも『TSUBASA+』を広めようと思います!」
(実際に『TSUBASA+』をプレーする谷口選手)
【スマホアプリ用ゲーム『TSUBASA+』】
『キャプテン翼』のキャラクターに加え、リオネル・メッシを始めとする世界各国のスーパースター選手や明治安田J1~J3リーグの選手が実名で登場し、街中で『1対1』のバトルができる位置情報ゲームアプリ。ゲーム内の街には数々のスタジアムがあり、そこで選んだ対戦相手とバトル。『1対1』に勝負すれば“マイフレンド”として次から同じチームで戦う仲間になる機能もある。もちろん数々の選手を登録し、収集していくこともゲームの醍醐味だ。
また自分が使うキャラクターは顔や髪型に髪色、衣装などを選択することができる。さらに対決に勝利していくことでプレイヤーランクが上がり、バトルで使用できる必殺技も増加。大空翼くんのドライブシュートや日向小次郎くんのタイガーショットなども登場する。
公式サイトはこちら⏬
https://tsubasa.plus/ja/
(BLOGOLA編集部)
2020/12/25 17:00