「こみ上げてくるような感じがあった。やっと来たな、と」
念願だったフル代表の試合で、背番号「9」を着けた自分が緑のピッチで国歌を聞いている。夢の続きのようなシチュエーション、感慨深さが胸に滲んだ。U-21代表で挑んだ2010年のアジア大会ではレギュラーとなれず、先のロンドン五輪でもメンバーから漏れた工藤。それでも地道に努力と成長を続けてきた男が、青いユニフォームを着て日本の先発メンバーに堂々と名を連ねたのだった。
試合が始まれば、まずは守備のタスクを忠実にこなし、上下動を繰り返した。そして、攻撃でも力強くゴール前に入り込んでいった。工藤の良さは、「出ただけ、感動しただけ」で終わらないところにある。
「前半の最初は迷いながらだったけれど、途中からは(自分の仕事を)イメージしてプレーできた」
高萩洋次郎、柿谷曜一朗らにボールが入れば、3人目の動きを意識してスペースへと走った。その形が、代表初キャップでの初ゴールにもつながった。ゴール前の鋭い嗅覚から、1点目の栗原勇蔵のゴールもお膳立てし、デビュー戦で1ゴール1アシスト。立派な結果だ。
彼に求められているのは、岡崎慎司のようなプレーと言っていい。左サイドや低い位置でゲームを作っている段階では、鋭い動き出しから裏を取る。さらには長い距離を走ってシュートチャンスにも絡まなければならない。すべきことは多く、本来センターFWである彼にとっては役割が増えて見えるが、実直にタスクをこなし、中国戦では結果も手中に収めてみせた。
試合後は夜中2時過ぎまで寝られず、22日の練習後には「ゆっくり休みたい」と笑った工藤。だが、25日の豪州戦以降に向けて話を振ると言葉に力を込めた。
「今年のACLでは自分よりも大きい相手との対戦を経験したし、そこでゴールも取れたという自信がある。体格で上回るには、ギャップを付いていくことがカギになる。FWはゴールを求められるポジション。継続して、そこは厳しくやっていく」
代表に生き残るため。日本の勝利のため。残り2試合、工藤は結果を得るための執念を見せ、一つひとつのプレーに気持ちを込める。(現地取材記者・田中 直希)
(BLOGOLA編集部)
2013/07/22 20:14