15日、東アジアカップ(20~28日)に向けた日本代表メンバー23名が発表された。欧州所属選手に加えてJ2所属の今野泰幸、遠藤保仁が呼べない今大会は、“J1選抜”とも言うべき選手が選ばれることが必然と見なされており、いつになくファンの関心が高かった(それだけ普段の日本代表がJリーグから乖離したものとなってしまったということではあるのだが)。何にせよ予想どおりにフレッシュな顔ぶれとなった。
POS | 背番号 | 名前 | 所属 | 生年月日 | 身長/体重 | |
GK | 1 | 林 卓人 | 仙台 | 1982/08/09 | 188cm/87kg | |
12 | 西川 周作 | 広島 | 1986/06/18 | 183cm/81kg | ||
23 | 権田 修一 | FC東京 | 1989/03/03 | 187cm/85kg | ||
DF | 3 | 駒野 友一 | 磐田 | 1981/07/25 | 172cm/76kg | |
16 | 栗原 勇蔵 | 横浜FM | 1983/09/18 | 184cm/78kg | ||
35 | 千葉 和彦 | 広島 | 1985/06/21 | 183cm/77kg | ||
4 | 森脇 良太 | 浦和 | 1986/04/06 | 177cm/75kg | ||
5 | 槙野 智章 | 浦和 | 1987/05/11 | 182cm/77kg | ||
36 | 森重 真人 | FC東京 | 1987/05/21 | 183cm/74kg | ||
26 | 鈴木 大輔 | 柏 | 1990/01/29 | 181cm/78kg | ||
– | 徳永 悠平※ | FC東京 | 1983/09/25 | 180cm/77kg | ||
MF | 28 | 青山 敏弘 | 広島 | 1986/02/22 | 174cm/73kg | |
29 | 高萩 洋次郎 | 広島 | 1986/08/02 | 183cm/72kg | ||
20 | 高橋 秀人 | FC東京 | 1987/10/17 | 183cm/75kg | ||
17 | 山口 螢 | C大阪 | 1990/10/06 | 173cm/72kg | ||
31 | 扇原 貴宏 | C大阪 | 1991/10/05 | 184cm/72kg | ||
13 | 柴崎 岳 | 鹿島 | 1992/05/28 | 175cm/64kg | ||
FW | 33 | 豊田 陽平 | 鳥栖 | 1985/04/11 | 185cm/79kg | |
14 | 山田 大記 | 磐田 | 1988/12/27 | 173cm/66kg | ||
30 | 柿谷 曜一朗 | C大阪 | 1990/01/03 | 177cm/68kg | ||
32 | 齋藤 学 | 横浜FM | 1990/04/04 | 169cm/68kg | ||
9 | 工藤 壮人 | 柏 | 1990/05/06 | 177cm/74kg | ||
21 | 大迫 勇也 | 鹿島 | 1990/05/18 | 182cm/73kg | ||
11 | 原口 元気 | 浦和 | 1991/05/09 | 177cm/63kg | ||
ロンドン五輪世代 初選出 代表辞退 ※追加招集 |
中村憲剛、前田遼一のようなコンフェデ杯にも選ばれていた「力の分かっている選手」をあえて選外としつつ、若手を試し、国際経験を積ませる意図のこもった選考となった。ロンドン五輪代表の主力選手が東慶悟(FC東京)を除いて軒並みピックアップされているのも象徴的だ。
では、ポジション別に見てみよう。
GKに関してはノーサプライズのメンバーとなった。正選手の川島永嗣が不在であることから、アピールのチャンスである。大枠の候補に入っていたと見られる林彰洋(清水)が所属チームでポジションを喪失しており、選考の余地は少なかったと思われる。ただ、負傷していた東口順昭(新潟)の復帰がもう少し早かったら、違った選考になった可能性はあるだろう。
今回の最年長、駒野友一が軸となる。ザッケローニ監督は3バックの採用を否定しており、となると必然的に森脇良太が右SBの、槙野智章が左SBの候補となるだろう。SBは内田篤人、長友佑都の2枚に加えて、酒井高徳、酒井宏樹もおり、不安の少ないポジションで、“試す”意図が少ないことから最小限の人数に抑えられたものと推察できる。駒野を左で使うなら、右で森脇が、駒野を右で使うなら、左で槙野が、それぞれ出場機会を得るだろう。駒野を含めた5枚の正SB候補を脅かすのは容易ではないが、いずれも攻撃的なSBであることから、森脇にしても槙野にしても「守備の強いSB」として存在価値を示せるかがポイントとなる。欧州では典型的な「CB的な仕事をできるSB」であることを示せるかどうか。かつての招集時に槙野は攻撃面でアピールしようと練習から上がりまくっていたが、むしろ逆効果だ。長友を一列上げる形が重要なオプションになっているということもある。「サイドにフタをできて、空中戦で勝てるSB」であることを示せば、選考される可能性が出てくる。特に槙野が狙うべきは伊野波雅彦(磐田)の地位だろう。「4人目のCB」でありながら、場合によっては守備的SBにもなれる伊野波に勝るところを示したい。
CBはこの4人が選ばれた。栗原勇蔵が中心となりそうで、彼の真価が問われる大会とも言える。課題と言われて久しいポジションだが、Jリーグでも絶対的なプレーを見せている選手は不在。それだけに、監督のチョイスには“色”が出そうで、注目していた。サプライズは鈴木大輔だが、Jリーグではなく昨年のロンドン五輪でのプレーを評価されてのモノと思われる。かつて候補合宿にも招集されており、潜在能力へのザッケローニ監督の評価は元々高い。千葉和彦は昨季から素晴らしいプレーを安定して見せており、昨季の“陰のMVP”とも言うべき存在。周囲も納得の選出だろう。広島の3バックではなく、代表の4バックに適応できるかを試されることになる。森重真人は守備的MFとしての経験が豊富で、ボールを動かせるCBで、その意味で千葉に近いタイプ。吉田麻也や今野もそうだが、あくまで主導権を握る戦いを志向する考えが透けて見える。
長谷部誠、遠藤保仁の2枚看板が不動の、このポジション。従来は交代要員だった高橋秀人が軸となるだろう。ボランチの「跳ね返す」能力の低さはコンフェデ杯で浮き出た課題であり、高橋がその役を担えるかが見極められることになる。青山敏弘は昨季の広島優勝の立役者であり、今回のMF陣で最年長。豊富な運動量と中距離パス、シュート、そしてタフな守備を持つ。タイプ的には長谷部に代わる選手である。ザッケローニ監督には前々から目を付けられており、今回再招集。力を示す好機となる。また、山口螢と扇原貴宏はロンドン五輪のボランチコンビ。国際大会での経験も加味しての選考だろう。扇原も「CBをこなせるボランチ」であり、技術よりも、競り合えることを示すほうが生き残りに近いかもしれない。最後は最年少の柴崎岳。タイプとしては遠藤と同質で、将来性も加味しての選考だろう。扇原との競争か。全体としてボランチで5枚選出は多すぎるので、山口の右サイド起用なども考えられるかもしれない。“岡崎の代わり”ができる選手は需要のあるところなので、タフに動いて守れて、一定の得点力がある山口の右サイド起用はありそうだ。
本田圭佑、中村憲剛という正副選手がいないトップ下。コンフェデ杯を前に東慶悟(FC東京)を招集したザッケローニ監督だが、さらに新しい選手を試す方向のようだ。東が選出されなかったのは「一度見たから」だろうが、「二度見たい」と思わせられなかった結果、とも言える。高萩洋次郎はアシスト能力の高さを最近のJリーグで証明済み。広島とはまったく違うサッカーに合わせることができるか、適応力が問われる。同じ広島のシャドーだった柏木陽介(浦和)はそれができず、実質的に構想外となった。自分の持ち味を出しながら、監督の要求に応える。難しい仕事が求められる。柿谷も従来の代表トップ下、つまり本田や中村とはまったく異なるタイプ。香川真司のポジションでテストされるかとも思われたが、ザッケローニ監督は会見でセンターでの起用を明言。この位置か、トップでの起用となりそうだ。“違い”を出したい。
いずれも左サイドで真価を発揮する右利きのウイング候補が3人選ばれた。ザッケローニ監督の日本代表は両サイドMFを「FW」として登録するので、いずれもFW登録である。言うまでもなく香川真司が絶対的な選手として君臨しているポジションだけに、彼らの比較対象は「まず乾貴士」ということになるかもしれない。香川をトップ下へスライドさせつつ投入されるスーパーサブとしての役割である。山田大記はその技巧で知られるテクニシャンで、得点力に関しては恐らく乾以上で、大枠の構想内にはもともと入っていたと思われる選手。トップ下での起用も考えられるが、いずれにせよ「スーパーサブ」としての適性を示すのが、生き残りへの現実策か。その意味で、齋藤学はすでに「スーパーサブ」としての適性を持っていることを各種大会で実証済み。だからこそ呼ばれた、とも言えるかもしれない。逆に、さまざまな意味で未知数なのが原口元気だ。就任当初から大枠の候補に入っていた期待株だが、安定感には欠ける。ほかの二人にも言えることだが、「右サイドのドリブラータイプ」に決定打がないことから、右での適性を示すことも生き残りの可能性を高めることにつながりそうだ。
平たく言えば、「岡崎慎司」の役割を振られそうなのが、この男。高さのないセンターFWであり、右サイドでの起用も考えられる。本職の右ウイングと言える選手が選ばれていないこと、さらに言うと「岡崎の代わり」になれる選手が現在の代表に不在である現実を思えば、工藤はまずそちらで試されるのではないだろうか。左サイド攻撃が中心となる現在の代表の右ウイングは「2番目のストライカー」と言うべき仕事を強く求められる。工藤なら、できるだろう。
生粋のセンターFWはこの二人。この両名に関しては、ほかのポジションでの起用は考えにくい。大迫はサイドも器用にこなす選手だが、サイドとしては代表クラスとは言い難く、やはりセンターFWだろう。ボールを収めてさばくという能力はJリーグでも指折りで、日本の2列目を生かせるはずだ。豊田は前田遼一を超える高さ、ハーフナー・マイクを超える強さを持ち、スピードもあるタイプ。セットプレーでの守備要員としての期待感も抜群だ。その反面、足元の器用さはなく、2列目のタレントを生かすポスト役としては大迫や前田に劣る。ハーフナーがコンフェデ杯でスーパーサブとしての力不足を露呈しただけに、途中出場で流れを変える選手になれるかも注目される。
[4-2-3-1] | ||||||
大迫 | ||||||
山田 | 柿谷 | 工藤 | ||||
高橋 | 青山 | |||||
槙野 | 森重 | 栗原 | 駒野 | |||
西川 |
結果として寄せ集めのオールスターのような今回のメンバーだが、短期間でチーム戦術に適応し、周りと調和できる選手かどうか。それもまた集まる時間の少ない代表選手に求められる「能力」である。残り1年という時間を考えれば、ザッケローニ監督はそこまで包含して選手を見極めることになるだろう。
それにしても、ワクワク感のある代表発表となった。Jリーグのサポーターがここまで注目した代表発表は、前回W杯以来だったのではないか。「代表」という刺激は、やはりJリーグの活性化に欠かせないことを再認識させられたとも言える。今回はスケジュールの都合で「やむをえず」という感があるが、リーグを活性化し、選手のモチベーションを喚起していくために、「実質国内選抜」による代表戦を国際Aマッチにこだわらずに開催していくことは検討に値するように思う。天下のブラジルとて、そうした試合を開催しているのだ。日程の都合はあると思うが、一つの課題として、是非検討してもらいたい。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/07/16 18:07