13年まで柏レイソルでプレーした澤昌克選手は、現在ペルー1部リーグに活躍の場を移しています。このインタビューシリーズでは、地球のほぼ反対側でプレーする澤選手の“いま”を、澤選手ならではのエピソードを交えて不定期でお伝えしていきます。第一回目は、「初ゴールと強盗」。第一回ということで、サービスサービス。文量も多めにお送りします!(写真提供:澤昌克)
――今季もペルーのデポルティーボ・ムニンシパルでプレーされています。日本復帰の可能性もあると聞いていましたが。
「まず、Jリーグのチームからちゃんとしたオファーがなかったこと。それに、ペルー1部でもう一回プレーしたかったというのが一番の理由ですね。柏レイソルに移籍する直前、デポルティーボ・ムニンシパルを2部へ降格させてしまったのは自分たちで、昨季はそれ以来の1部復帰を自分たちの手で成し遂げられました。このチームでのプレーにやりがいを感じて、今季も所属することに決めました。2部で優勝するのは簡単なことではなかったし、地域リーグまで落ちて、上がってきたチームというのもあってチームの内外も盛り上がっているところです。少し前までは、アマチュアリーグで、『も~も〜』と、牛が声を出しながらピッチ横にいるような環境で試合をしていたくらいですから。降格したときは会長の車が燃やされたり、いろいろあって…。あ、話が逸れちゃいました?」
練習場には自転車で通っているそうです。その道すがらの一枚。「ペルーは山のイメージがあるだろうけど、こんな綺麗な海もあるんだよ」とのこと。
ーー大丈夫です! 今季のデポルティーボ・ムニンシパルはどのようなチームなんでしょうか。
「実はほとんど、昨季のメンバーが残っていないんです。去年末の会長選挙で体制が変わって、全体の8割くらいが新戦力。昨季の先発メンバーで残っているのは、6、7人くらいなんですよ。監督も、アルゼンチン人の指揮官に変わりました。最初は苦戦しましたが、シーズン前のカップ戦を経て何がチームに足りないか、課題もしっかりと見えてきて修正できはじめています。いまは開幕して少し経ったくらいですが、昨季の前期優勝チームでリベルタドーレス杯にも出ているフアン・アウリチに引き分けたり、負けなしできています(第3節終了時点)。吉田達磨さんのレイソルみたいな精巧なサッカーではないですが、シンプルにワイドへパスをさばいて、そこから中に入って、裏にも飛び出す…。まあ、ありきたりなサッカーをしているとも言えますね」
ーーどのポジションで出ているんですか?
「[4-2-3-1]のサイドMFかトップ下です。はじめは、サイドで出るときに、結構試合の中で消えてしまうことも多かった。トップ下にはゲームメイカー的な役割を求める監督で、最初はなかなか期待に応えられなかったんですよ。でも、サイドから中に入って仕事をしたり、トップ下の選手とポジションチェンジをしながら自由にプレーすることを評価してもらい始めました。ペルーは人工芝が多くて、けが人も増えていてチーム事情は大変なんですが、その中でもチャンスをつかんで出番を増やしたいと思って頑張っています」
ーー先日、ペルーリーグ1部の第2節ではゴールを奪ったようですね!
「後半から出場して、先制点を決めることができました。セットプレーをファーで合わせて。追い風があって、ボールがゴールラインを割るんじゃないかと思っていたDFが多かったんだと思います。GKが出てくるのか、どうするのかあいまいになっていました。そこでファーから飛び込んで…。決まってよかったですね」
初ゴール後のセレブレーションは、息子のゆうしくんに捧げるパフォーマンス!
ーー先発出場した第3節も綺麗なアシストを決めて勝利に貢献しました。
「レイソルでもよくあった、左足での綺麗なアシストだったでしょう? …うん、自分でもびっくりしました(笑)。得点につながってよかったです」
ーーペルーに帰って2年目。家族との生活も順調ですか?
「実は、この前強盗に遭ったんです」
ーーえ、ええ?!
「しかも家の前で! 住み慣れているところだったので、警戒心がなくなっていたのも良くなかったんだと思います。周りに住んでいるのは知っている人たちばかりですから。周囲を見る癖が抜けてしまっていました。強盗団は、自分を強盗する前にレストランで盗みを働いたらしい…。その帰り道で、またやったんだそうです。つまり、流れ作業だったということ…」
ーーどんな状況だったのですか。
「子どもを学校から家まで車で送って、嫁の友達と家の前で話していたときに、急にスモークのかかった車が勢いよく止まった。ドアがバッて開いて、覆面の二人が降りてきたんです。最初は冗談かと思いました。でも、鉄砲をお腹に突きつけられたときに、『ホントのやつだ!』って。『こういうときは、何もしないほうがいいのかな』と思っている間に、財布、ケータイ、車のキー…持っているものをみんな持って行かれました。ま、いつもどおり100円くらいしか財布には入っていなかったからよかったんですがね。ペルーに5年、アルゼンチンに4年いたけど、ついにデビューしちゃいました。強盗デビュー。あ、されたほうか(笑)」
――さすが澤さんですね。エピソードのスケールが人と違う…。けがはなかったんですか。
「大丈夫です。でも一番ショックだったのがあって…。強盗がいなくなって、つぐみ(長女)が『宿題をやりたい!』って言い始めてね。だけど、勉強道具がない。つぐみの学校帰りだったから、車の中にランドセルがあったはずで、探しまわったんですが、なくて。強盗にランドセルを盗られたんですよ! これじゃあ、宿題ができないじゃない! しかも、じいちゃんとばあちゃんに買って送ってもらったランドセルだったのに…。強盗団は捕まったらしいんですが、もうランドセルは帰ってこない…」
――ランドセルが盗まれてしまったのは残念ですが、体が無事でよかったです!
「そうですね。またその後、近所に自分のことを訪ねてきた人がいたらしくて。『サワはいるか』って。実は選手登録カードが財布の中に入っていたから、それを見たヤツが探しに来たのかな。近所の人たちは『知らない』って言ってくれて大丈夫だったんですが、ちょっと心配ですよね。もし誘拐されたら…と考えたりしました。ただいまはとにかく、ランドセルを返してほしい!」
リーグ戦初ゴール、初スタメンで初アシストなど順調な今シーズンの滑り出しをされたようですが、「強盗に遭う」という日本ではなかなか考えられないエピソードがすでに飛び出しました。これ以上の驚きのエピソードが出てくるのか…。澤選手のことですから、いまごろ2,000mの高地でネタを仕込んでいるところでしょう。それでは、次回をお楽しみに!
(BLOGOLA編集部)
2015/05/13 07:01