自己否定から新たな自分を作る
オランダでの経験、そして北京での悔恨。それを機に、本田はさらなる自己否定をすることでこれまでの自分からの脱却を図っていった。
『自己否定』。本田の場合、これは何もネガティブで暗鬱とした意味を持っているのではない。さらなる成長を求め、いまの自分から脱皮するための手段だ。彼は自らを否定することで、新たな自分像をこれまで形作ってきた。インタビューを読んでいても分かるとおり、本田のそうした考え方は、このころからすでに出来上がっていた。高校時代の自分を否定することで、当時監督から要求されていたサッカーを吸収し、と同時に自分の武器も前面に押し出せる選手になろうとする。本田はその後、再び自分を否定し、今度はよりゴールにこだわっていくスタンスへと様変わりしていく。
「パスの出し手だけではなくて、受け手の立場になることも考えるようになっている。やっぱり、どちらもできなきゃいけない自分にならないと」。いまの本田は紆余曲折を経て、この言葉どおりの選手になろうとしている。またそうした自分の未来像を得るキッカケの一つに、オシム氏の存在を挙げているところも非常に興味深い。
髪は黒く、長めのヘアスタイル。風貌はいまとは似ても似つかないが、そのハートは不変──。あのころに触れた本田圭佑の思い、それは原点となっていまも彼の奥底に存在する。
(6月2・3日発売・1456号に続く)
【プロフィール】
本田 圭佑(ほんだ・けいすけ)
1986年6月13日生まれ、27歳。大阪府摂津市出身。182cm/74kg。AB型。摂津FC→G大阪JY
→星稜高→名古屋→VVVフェンロ(オランダ)→CSKAモスクワ(ロシア)を経て、今年1月にイタリアの名門ミランへ完全移籍。伝統の背番号10を背負う。日本代表では08年6月にデビューを果たし、2010年の南アフリカW杯では大会直前でセンターFWの先発に抜擢され、4試合に出場。2得点を挙げる活躍を見せ、ベスト16進出に貢献した。11年のアジア杯ではチームを優勝に導き、MVPを獲得。ブラジルW杯のアジア最終予選でも貴重なゴールを挙げ、日本を5大会連続5回目の出場に導いた。
オランダ、ロシア時代に迫った[中編]は2日(月)、3日(火)発売のエル・ゴラッソ1456号に掲載されます。お楽しみ下さい。
(BLOGOLA編集部)
2014/06/01 12:18