大分にとっては10年振りの昇格争いも佳境。J2初年度の1999年から毎年惜しいところで昇格を逃し、ついに2002年、J2優勝・J1昇格を果たして以来のことです。
現在は強化部スカウト担当の西山哲平氏も、2002年シーズンから大分でプレーし、ともに昇格を経験した仲間です。今日のトレーニング終了後、ベンチで見守っていた哲平さんに「そろそろ現役復帰して、また哲平さんのゴールで昇格を決めちゃったりしたくないですか?」と冗談で投げかけたら、「ああ、でもそういえばあの鳥栖戦、確か第37節じゃなかったっけ。ちょうどこの季節だった気がする」と懐かしそうな顔をしました。ああ、そうだ。あの伝説の試合。
勝点で並ぶC大阪と得失点差で2位につけていた大分。3位の新潟とは勝点差僅か1という激しい昇格争いの渦中でした。1-2で鳥栖にリードされて迎えた試合終盤。右サイドを駆け上がった若松大樹選手がCKをゲットし、アンドラジーニャ選手のキックに飛び込んだサンドロ選手のヘディングシュートが決まって87分に同点に。さらに88分、アンドラジーニャ選手がスペースへ走り込む浦本賢太郎選手へ出したボールがこぼれたところを右足アウトサイドでトラップし、力いっぱい右足を振り抜いたのが西山“ウルトラ7”哲平選手でした。このスーパーゴールで勝ち越した大分は、再び首位に返り咲き、その後はシーズン終了まで独走状態になります。
あれから10年。クラブはいろいろな状況を乗り越えて、今、二度目の昇格権を争っています。今節は残留争い中の町田との対戦。その順位にいるのが不思議なほどハイレベルなサッカーをしているチームです。前回対戦のときとは布陣も顔ぶれも変わっていますが、あの苦戦した第15節を、宮沢正史選手も「印象深い試合」と振り返りました。
町田はアンカー・太田康介選手がゲームメイクし、センターバック・田代真一選手も攻め上がる、センターに強いイメージ。大分としてはこのあたりからの組み立てを抑えながら、早めに奪って狙いのサイド攻撃へと展開したいところ。どうやら中盤の人選と配置がカギになりそうです。
中盤といえば、8月に広島から移籍加入した丸谷拓也選手。「どの位置で使ってもいつもコンスタントに仕事ができる」と田坂監督に評価され試合に出続けていますが、本人は「自分が来てから2勝しかしていない」と責任を感じている様子です。「残り7試合で結果を出す」と決意を固めており、そろそろ今節あたり、キーマンになってくれるとうれしい。「もう筋肉痛がひどくてボールは蹴りたくない」と笑う哲平さんですが、その哲平さんと柳田強化部長が大分に連れてきた逸材が、10年振りの昇格争いで、印象的な仕事をしてくれたら最高ですね。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/09/28 18:13