シーズン最終盤でつかんだ手応え。あきらめずに追求してきたものが、実りの秋を迎える。
大分にとって忘れ難い記念日が続く11月がやってきました。4年前の11月1日は、ナビスコカップ決勝戦を制して初のタイトルを手に入れた日。10年前の11月2日には、大宮戦に勝利してJ1昇格を決め、同9日には川崎Fに勝ってJ2初優勝を遂げました。
そして今年の11月。2度目のJ1昇格へ向けて、チームは士気を高めています。今季も残り2試合。例年より早く、ほかのクラブに先駆け始動して以来、積み重ねてきたトレーニング。その手応えを、前節の福岡戦では確かに感じることができたように思います。今までは「持たされる」という感じになって、ポゼッションするとうまく攻めることができなかった。ボールを保持する相手のカウンターを狙う戦い方のほうが、結果に結び付けることができていました。「圧倒的に勝つ」という展開にはなかなか持っていけなかったチームでした。
今週の囲み取材では、田坂監督もそれについて話してくれました。
「これは僕がきてからずっと追求していることですよね。失礼ですけど、このチームのポテンシャルはそこまで高くない。どちらかというと攻撃的なスタイルで行きたいけど、そういうかたちに持っていくのも、長い時間はできないだろうと。けどそれをあきらめちゃダメだと思ったんです。いつかはポゼッションしながら攻撃的なスタイルを貫ける。そういうサッカーができると思っていましたし、去年もそういう試合は何度かありましたよね。でもやはり、自分たちが攻めているときになかなか結果が出なかった。前回の試合はしっかりと自分たちがポゼッションしながら勝ちに持っていけたというところが、本当に内容と結果がともなった試合だったと思います。それを、一層クオリティーを上げて得点も増やせるように、もちろん失点もゼロで抑えられるように、理想を追求してトレーニングしていかなきゃなと思います」
キャプテンの宮沢正史選手も「僕らからアクションを起こして攻めなければ勝ち点3は奪えない。前節、自分たちの目指してきたスタイルを貫いて勝利できたことは、チームの自信になった。狙いどおりにサイドから崩せたことを徹底して、さらにその質を上げていきたい」と、シーズンが終わるまで成長しつづける意志を見せます。
今節、ホームに迎える山形は、この試合に勝たなくては昇格が厳しくなる位置にいます。大分は、勝てばプレーオフ進出が確定。もちろん自動昇格のためには絶対に勝利しなくてはなりません。山形の流動的な前線に仕事をさせないためにも、前節、福岡の攻撃の起点である鈴木惇選手を抑えたように、山形戦では石川竜也選手からのフィードを封じたい。2トップ、2シャドー、ウイングバックが連動したプレスをかけながら、全員で組織的に動くことが重要です。サイドの攻防を制し、自分たちのスタイルで相手を攻略したい。簡単な試合にはならないでしょう。大学時代からのつきあいである田坂監督と奥野監督の、互いの思考を読んでの駆け引きも、見どころになりそうです。
J1昇格のために支援金を募り、選手たちも街頭でビラ配りをしたり、そのことによりプレッシャーを感じたりしながら戦ってきたシーズン。ほかのクラブだったら潰れていたかもしれない状況を、県民と行政と企業が支え、現場がそれに応えてきた。「努力してサッカーをする。これはよそのチームではできない、いい経験だった」と田坂監督は言います。「大分県にとっても大きな1年。ホーム最終戦で、選手たちは今までやってきたことをピッチで表現し、力を合わせて山形を倒せるように頑張らなくては」。
2012年の11月。大分を取り巻くひとたちにとってのメモリアルが、また一つ刻まれるように。まずは目の前の一戦に全力を尽くしましょう。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/11/04 12:36