25日、adidas CUP日本クラブユース選手権(U-18)が群馬県内各地を舞台に開幕した。同大会は夏のクラブユースチームのチャンピオンを決める大会であり、今年で37回目を迎える。初日は会場の一つ、前橋市下増田運動広場を目指した。
下増田。この地を訪れるのは1年ぶりである。野球場の外野を切り取る形でサッカーのピッチを確保している会場で、独特の雰囲気がある。芝の状態は良いとは言い難いが、今年は昨年と決定的に違う点が一つあった。
涼しいのだ。
昨年は37℃を超えた気温が、この日は雨模様。25℃ほどと過ごしやすい気候だった。例年よりキックオフ時間を早めていたことも幸いしたと言える。また観客用のテントが設置されるなど、観戦環境も大幅に改善。大会を少しでも良いものにしようという運営側の努力が伝わってきた。手洗い所にカエルが大量発生して試合前の選手を動揺させていたようだが、死の危険すら感じた昨年の炎天下を思えば、実に些末な問題である。
大会は参加24チームを4チームずつ6グループに分けての総当たり戦を行い、16強を決定し、以後はノックアウトラウンドへ移行する方式である。この日の下増田に集ったのは、グループDに属する面々。関西の雄・ヴィッセル神戸U-18に、清水エスパルスユースと大宮アルディージャユースの両オレンジ。そして、初出場となるロアッソ熊本ユースの4チームである。第1試合は神戸と熊本の一戦だった。
平成25年7月25日(木)
adidas CUP日本クラブユース選手権(U-18)1次ラウンド第1日
「ヴィッセル神戸U-18 4-0 ロアッソ熊本ユース」
序盤は16回目の出場となる神戸が、先輩の格を見せ付けるように熊本を押し込んだ。ただ、試合後に神戸の選手たちが一様に悔やんでいたように、連続して訪れた好機を逸したことが試合を難しくした。徐々に緊張もほぐれてきた熊本はMF池谷友喜を中心に粘り強く神戸の攻勢をしのぎ続け、ハーフタイムまで「0-0」を維持することに成功した。
この展開で最も気を付けるべきは、前半を凌ぎきったことによる達成感が悪い意味で作用することの多い後半の立ち上がりだが、まさにそこを突かれた。44分(試合は40分ハーフ)にショートカウンターからMF表原玄太に見事なゴールを許したことで試合の流れは一気に傾いていく。60分にPKから失点すると、気落ちしたのか66分、67分と相次いで失点。これでゲームはほぼ決まった。
ただ、熊本も精神的に切れて終わりではなかった。サポーターからの熱い声も響いたのか、ここから敢闘。最後まで試合を捨てずに戦い抜き、以降の失点を許さなかっただけでなく、相手ゴールにも迫った。“全国デビュー”はほろ苦い敗戦に終わったが、収穫ゼロの試合にはしなかった。
この試合で存在感を見せたのは、神戸のFW米澤令衣だった。60分から67分までの短時間でハットトリックを完成。米澤は「1点取ったら勢いに乗る、調子に乗るタイプなので」と笑顔を浮かべる。中学時代はドリブラーだったが、いまはファーストタッチで相手を出し抜くプレーに喜びを見出しているという。柿谷曜一朗のそうしたプレーを参考にしているのだとか。技巧派育成で知られるRIP ACE SC出身の2年生は、「優勝して、ついでに得点王を獲る」と宣言した。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/07/25 20:30