第21節、大雨の本城で北九州に勝利し、長かった“バトル・オブ・九州”未勝利の呪縛からようやく解き放たれた大分が、今度はホームで北九州を迎え撃ったこの試合。本紙プレビューで触れたように、それぞれ前節で対照的な戦いを経験しての対戦です。
前節、大分は、アウェイの徳島戦で開始1分に先制し、早い時間帯に相手の退場により数的優位に。逆に北九州は、ホーム町田戦で2分に失点を喫し、64分に退場者を出しました。最終的に4-0と大勝するも突然の数的優位に戸惑い徳島に攻め込まれる時間帯が長かった大分と、苦しみながらも諦めずハードワークして終盤にドローへと持ち込んだ北九州。今節は、この前節の流れを引きずったような展開になりました。
北九州の両サイドハーフが大分の2シャドーをケアし、大分の両ウイングバックが絞って北九州の両サイドハーフをマークするガチガチのスタート。厳しめのジャッジの影響もあり、双方ともボールの回りづらい序盤になりました。大分が主導権を握っていた41分、球際に激しく寄せた森村昂太選手が2枚目のイエローカードで退場処分となり、北九州は前節同様10人に。大分にとっても前節と同じく1枚少ない相手との対峙(たいじ)です。
アウェイで数的不利という条件ならば、最悪でも負けないようにと前線の枚数を減らし中盤以降で守備を固めるのがセオリー。ところが前節もそうであったように、北九州は中盤ダイヤモンドの4-4-2からトップ下の安田晃大選手を1列下げた4-3-2の布陣とし、攻撃的に向かってきました。大分はこれに後手を踏む形に。思うに、前節で徳島が1人退場して4-4-1となった後、ボールを持たされながらカウンターを恐れて攻め切れず、中途半端になった挙げ句に相手の猛攻にさらされた時間帯の記憶が、この試合にトラウマのように作用したのかもしれません。逆に前節も同じ4-3-2で攻めて結果を出した北九州は、まるで10人で戦い慣れてでもいるかのように数的不利を感じさせず、迷いのないプレーぶり。池元友樹選手と端戸仁選手という、よく走り独力でゴールまで持ち込めるFW2枚を有してこその戦術なのだろうと思います。
相手の倍となる16本のシュートも、得意のセットプレーも、最後まで脅威にはなれなかった大分。チャンスをたくさん作れていただけに「もっとやれるはず」という悔いが残ります。リスクを冒す勇気や、相手の寄せに負けない強さ。全体に力強さと鋭さがもう少しほしい、前への推進力の足りなさが感じられた一戦でした。が、この経験もまた次へと生かしてもらいたいところ。
永芳卓磨選手や作田裕次選手がひさしぶりに先発したり、林丈統選手がホームデビューしたりといった要素もありました。厳しい残暑に加えてピッチ状態も悪く、コンディション不良の選手が出ないとも限らない今、ものを言うのは選手層の厚さです。
芝がよくないだとか、支援してくださる方々のために結果を出さなくてはならないだとか、いろんなプレッシャーもあることでしょうが、それも含めて前を向くモチベーションに変えてゆくのがプロの力量。そして何よりも「サッカーが好きな気持ち」「サッカーを楽しむ気持ち」を原動力に、好ゲームを見せてほしいと願います。
最後に、8月7日に東京Vより北九州へ期限付き移籍が発表された鈴木慎吾選手。古巣である大分戦での出場機会はありませんでしたが、ミックスゾーンに元気な姿を見せてくれました。北九州での熱い活躍に期待しています。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/08/15 17:53