1-0で迎えた88分、草津のリンコンが浮き球のパスを送ると、そのボールに反応したキム・ソンヨンは、胸トラップからのドリブルで町田のペナルティーエリア内へと侵入した。それに対しDF田代真一は体を入れ、加藤恒平とともに彼をサンドする形で対応した。しかしその瞬間、無情のホイッスルが鳴り響いた。PK宣告だった。「ああいう危険な場面を作られたことに変わりはない。非常にもったいないし、申し訳ない」。リンコンはPKを確実に決め、草津が追い付く。その後ロスタイムは『6分』と表示されたが、得点は生まれず1-1のドローで試合を終えた。
「きれいに崩しましたね」。57分、町田はスローインを受けたディミッチが左サイドでタメて鈴木崇文へグラウンダーのパス。鈴木崇→平本一樹とワンタッチでつなぎ、最後は右ウイングバックの三鬼海がダイレクトでGK北一真の股間を射抜いた。「どんなゴールでもいいから点を取ってくれと思っていた」。実に町田にとっては6試合ぶりのゴールだった。
「あれが3枚(3バック)で両ワイドを置いている特長だと思う。(三鬼)海があそこまで行けるのは3枚の良さが出たんじゃないか」。前々節・栃木戦からオズワルド・アルディレス監督は3バックを採用。その攻撃面の効果が、三鬼の得点シーンに象徴されていると田代は説いた。
そして3バックの中央で薗田淳、加藤の両ストッパーを司るのが副将の田代だ。「3枚だと真ん中はカバーリングに重点を置けるし、それは自分の得意なプレーで、スキルでもあるから」と本人。草津戦でも持ち前のフィードで高い起点を作ることに一役買い、前半は何度か左ウイングバック藤田泰成への展開で相手の裏を突いた。守備でも抜群のポジショニングとカバーリングで草津の攻撃の芽を摘み、何度か決定機こそ作られたが、無失点で持ちこたえていた。“あの瞬間”までは…。
今回の草津戦、田代には期するモノがあった。ホームでの前回対戦(6月9日・第18節0●2)で足を負傷し途中交代。あの日を境に、約1カ月の戦線離脱を余儀なくされていたからだ。「個人的には前回の草津戦でけがをしたし、そのとき対戦したままのイメージが残っている。前節の栃木戦はチームも個人もうまく機能したからそれを継続して草津を倒したい」。試合前にそう話すほど、人一倍、田代は草津撃破に燃えていた。しかし、勝ち切れずチームは14試合、勝利から遠ざかっている。
「1点を守り切れないことがいまの順位を表していると思う。リベロとして最後1-0で終わらせられれば良かった。これでも勝てないから、ホームまで勝ち点3獲得はお預けなのかな」。勝ち切れなかったことに悔恨の表情を浮かべた背番号5。最後は次節・ホーム京都戦(7月29日・第26節)での勝利を誓って、ミックスゾーンを後にした。(文中敬称略)
※25・26日発売の『EL GOLAZO』(エルゴラ)でJ2第25節・ザスパ草津vsFC町田ゼルビアのマッチレポートを掲載中。上記のマッチレポートは町田視点、田代真一選手の視点を中心に構成しています。
(町田担当 郡司聡)
2012/07/25 15:00