石﨑信弘、小林伸二、反町康治。過去3度のJ1昇格を成し遂げた3人の名将が今季、4度目の昇格を目指しJ2を戦っている。J1昇格を成し遂げるために最も必要となるモノは何か。そして現在のJ2は彼らの目にどのように映っているのか。
負けを引き分けにしていれば昇格できていたことも
—石﨑監督はJリーグで采配した試合数が最も多い監督としても知られています。そんなJ2の戦い方をよく知る石﨑監督から見て、最近のJ2の傾向や昇格するチームの特徴などは、どう映りますか?
「一昨年の湘南は成績が飛び抜けてたよね。今年は対戦した中では、清水にしてもそうだし、C大阪にしてもメンバー的にはすごいけど、内容的に圧倒してるかと言ったら、そういうゲームはない。昔は結構、上と下の差があったけど、いまはほとんどないよね。どこが勝ってもおかしくない。まだ全チームと当たってないから分からんけど」
—12年からはJ1昇格プレーオフができて、かなり多くのクラブに昇格の可能性が広がりました。
「3位までが自動昇格(するレギュレーション)だったら、最後2チームぐらいで3位を争ってたんじゃけど、6位までになるともう少し(争うチームが)あるじゃろ。最後まであきらめない試合が増えたことは確かじゃろうな。
ただ、J1に上がって補強ができるんならいいけど福岡にしても(J1を戦う今季は)そこまで補強できてない。難しいよ、上がったら。いろいろなチームにJ1昇格のチャンスがあるのかも分からんけど、果たしてそれで(リーグの)レベルが向上するかと言ったら分からんよ」
—いまでこそ3度の昇格を達成している石﨑監督ですが、J2初期のころは大分、川崎Fであと一歩のところで昇格を逃す経験もしていますね。
「リーグ戦は積み重ねだから。最後に勝ち点1足りないというのが3回あったけど、最初に負けを引き分けて勝ち点1をプラスしてれば違った」
—昇格の難しさを感じられたかと思います。
「最終戦で引き分けたのは一番最初(99年)だけで、あとは全部勝ってるんだよな。99年は大分で、あのときは山形にVゴールでも勝てば上がれた(結果は1-1の引き分け)。でもあとの二回は最終戦で勝ったけど(00年・大分のときは大宮に1-0で勝利。03年・川崎Fのときは2-1で広島に勝利)、争っているチームも勝って(J1昇格を逃した)という形」
—00年は2位・浦和と勝ち点2差の3位で最終節を迎えました。
「浦和はVゴールで勝ったんだよな。ウチは1-0で勝って試合が終わってて、浦和は延長戦に入って、土橋(正樹)のすごいシュートが入った。その前に対戦相手の鳥栖にPKもあったんだけど、それを入れとりゃ(鳥栖の勝利で)終わっとった。
フロンターレのとき(03年)は広島と新潟とフロンターレで争ってて、最終節の一つ前で広島が決まった。それで、最終節でウチも新潟も勝って(川崎Fは広島に2-1、新潟は大宮に1-0で勝利)、新潟が上がった。楽しいで、最終節まで持ち込めたら。最終節なんかピリピリだぞ(笑)。
レイソルで昇格したとき(06年)だって最終節だからなあ。(1節残して)神戸が2位で、レイソルが3位。仙台と神戸が対戦して神戸が(1-2で)負けて、ウチが湘南に(3-0で)勝って順位が入れ替わった。
札幌のとき(11年)は、徳島と争っていて、最終節で徳島が岡山に(0-1で)負けて、札幌は優勝が決まってたFC東京に(2-1で)勝った。最終節まで盛り上げてるから、お客さんが入る、入る(笑)。大分と山形がやったときだって、あのスタジアム(大分スポーツ公園総合競技場)に入り切らないぐらい超満員だったし、札幌のときだって、ドームが目一杯だったんだから」
—最終節のわずかな差でクラブのその後の運命が変わってしまうというのは、考えてみると恐ろしいことですね。
「運命だからしょうがないよな。(2014年J1昇格プレーオフ準決勝の)ギシさんのシュートなんか、あんなん入るか、普通(笑)。アディショナルタイムでGKがあんなところに入れるとか、あり得ないでしょ?」
大事なのは目標を見失わずに一つひとつ戦うこと
—さまざまな経験を重ねてきた監督から見て、あらためてJ1昇格に必要な条件は何だと思われますか?
「なんなんじゃろうね。シーズン長いから、目標を見失わずに、一つひとつの試合を戦っていくことが大事なんじゃないの」
—試合経験の一番多い監督が、その結論になるわけですね。
「大分の(99年の)ときだって、夏ぐらいに5連敗して結構上と離れたんじゃけど、最後、FC東京がものすごい連敗したんよ。そこで最終節手前では逆転していた(最終節は後半ロスタイムに同点に追い付かれ、3位に転落しJ1昇格を逃す)。こればっかりは分からんのよ。最初悪くても、最後に良くなることもあるだろうし、最初に良くても最後に悪くなることもあるだろうし。
チーム的に1位、2位で上がれるようなら一番良いんじゃろうけど、プレーオフで6位までに入ってどう粘り強く上がっていくか(が大事)。目標はJ1昇格、まずはそこなんだから。最後まで目標を見失わずに1試合1試合戦っていくことが大事なんじゃないの」
聞き手:佐藤 円
サッカー新聞エル・ゴラッソ5月5日発売号掲載
石﨑信弘監督、小林伸二監督、反町康治監督の
これまでのJ2での戦いを描いた
『蹴球一徹』
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(BLOGOLA編集部)
2016/07/06 14:56