ミラン・セードルフ新監督の初陣となった、セリエA第20節・ベローナ戦。本田圭佑は慣れ親しんだトップ下で、遂にリーグ戦初先発を飾った。
試合前日から予感はあった。急遽、報道陣に練習が公開され、新たに指揮官として古巣ミランに舞い戻ってきたセードルフのトレーニングが、初めて披露されることになった。
そこで監督は、いきなり布陣を組んだトレーニングを実施。1トップにバロテッリが入り、2列目には右からカカ、本田、ロビーニョが並んだ。
適正からすれば、もちろんカカもトップ下でプレーすることができ、本田も右サイドを起点にプレーすることができる。地元イタリアでの報道でも、カカがトップ下と予想するところもあるなど、実際に試合が始まってみなければポジションの詳細はわからない状態であった。
試合開始の現地時間20時45分。この日も本田はチームの最後尾からゆっくりとサンシーロのピッチに入った。そして向かったポジションは、中盤のど真ん中。日本代表やCSKAモスクワでプレーしてきた彼の代名詞とも言える位置、“トップ下”だった。
序盤から、ミランが完全にボールを支配し、試合の主導権を握った。指揮官が自分の色を出すために新たに採用した[4-2-3-1]は、これまでのいわゆる“クリスマスツリー型”と呼ばれた[4-3-2-1]よりもバランスに優れ、モントリーボとデ・ヨングのダブルボランチと前述の攻撃陣4人がパスをつなぎながら機能的にプレーしていた。前日の会見でボールをしっかりつないで攻撃的なサッカーをすることを明言していたセードルフ監督。初戦からその哲学をチームにしっかり意識づけていたことの証が、ピッチの上では見られた。
本田も味方とのワンツーや細かいパス交換、左足から繰り出される好クロスなど、自身の特長をトップ下で発揮。ゴールに迫る場面もあり、チームの勢いを確実に作り出していた。
17分には右SBのデシーリオの好クロスがゴール前の本田の下に。ビッグチャンス到来だったが、無情にも左足のトラップが大きくなり、シュートに持ち込むことができなかった。29分には中央でカカとのパス交換から好機を演出したが、これも得点にはつながらなかった。
出だしは良かったミランも、徐々に攻撃がトーンダウン。結局1点も決められないまま、前半を終えた。
後半もミランはリズムを取り戻すことができない。本田も52分に自らボールを運んでミドルシュートを放ったが、これもポスト右にそれていった。そして63分、交代パネルに『10』の数字が掲げられ、本田はベンチへと退いた。
結果的にミランはカカが倒されて得たPKをバロテッリが決め、セードルフ監督の初戦を勝利で飾った。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、サンシーロは歓喜に包まれたが、一方で序盤の良い流れが続かずに、チームに閉塞感が漂う時間帯が長くなってしまったのも事実。そうした時間ではスタンドから罵声やため息も多く飛んでいた。やはり指揮官も初戦から結果も内容も申し分なしというわけにはいかなかった。
そして本田もまた、納得のいく内容ではなかったことは間違いない。トップ下という自分が最も望むポジションでプレーし、確かに良いプレーをしていた瞬間もあった。それでも試合後にセードルフ監督が「本田のようにまだトップフォームではない選手もいる」と語ったように、決して現状がベストな状態ではない。周囲との連係についても、本田本人は試合後に「全然ですよ。50%も行ってないんじゃないかなと思っています」と語るほど。当然トップ下でプレーする以上は、自身の周りをぐるりと囲む味方たちとのプレー感覚をさらに上げていくことは不可欠。いち早くこの名門で同ポジションを不動にするためにも、その作業のスピードアップが今後は求められる。
途中出場でセリエAデビューとなった前節・サッスオーロ戦ではポスト直撃のシュートを放つインパクトを残し、またミランで初先発となったコッパ・イタリアのスペツィア戦では初ゴールを決めた本田。その2試合と比較すると、このベローナは少し消化不良気味。セードルフ監督率いるチームは無事初陣を飾ったが、本田にとってミランで初めてのトップ下でのプレーは、ホロ苦い結果となった。(西川 結城)
(BLOGOLA編集部)
2014/01/20 16:02