20日、クラブより発表された吉村圭司の現役引退の知らせに、チーム内からの惜しむ声が止まらない。
吉村は今季、度重なるけがの影響によって満足のいく調整ができず、ようやくリーグ戦のピッチに立ったのは明治安田J2第40節・京都戦。シーズンの大半をピッチ外から見守ることを余儀なくされたが、それでもチームメートの吉村に対する尊敬の気持ちは揺らがなかった。プレー面で貢献できなくとも、吉村はそれ以外の部分で献身的にサポート役を買って出た。チームが苦しいときには前向きな言葉を投げかけて励まし、悩みのある選手がいれば自身の豊富な経験を生かしアドバイスをした。また、誰よりも早く練習にやってきて、筋トレ用の器具の向きをそろえるなど、どんな小さなことでも気が付いたことにはすべて行動を起こし、躍進するチームを裏から力強く支えていた。
「表からは見えない選手たちの私生活で正す人がいなかったら、当たり前のことができない緩いチームになっていた。口うるさくても、そうやっていろいろ言ってくれる人はいまは少ない。一人の人間として尊敬していた」(瀬沼優司)
「圭司さんからは学ぶことしかなかった。サッカーに対する姿勢はこのチームで一番。偉大な選手がいなくなるのは寂しいけど、そんな選手と一緒にプレーできたことを誇りに思いたい」(河原和寿)
昨季までの2季でキャプテンを務め、今季はその大役を西田剛に譲ったが、吉村の左腕にはいつも見えないキャプテンマークが巻かれてあったはず。その強いキャプテンシーに木山隆之監督も「圭司にはいろいろ助けてもらった」と労いの思いを表した。約1週間前、木山監督のもとに直接、吉村から引退の申し出があったという。
「クラブとしては来季もやってもらいたい意思を持っていたし、まだまだ現役でできると思っていたけど、(引退は)彼が下した決断。ならば新しい道に進んでほしいと願った」と指揮官も惜しむ気持ちを抑え、本人の意思を尊重した。もちろんチームは今節を吉村のラストマッチにさせるつもりはない。すでに進出が決定しているJ1昇格プレーオフを決勝まで勝ち進めば、今節を含めて3試合ともに戦える。「J1に上がって最高の形で引退させることが、僕たちチームメートができる圭司さんへの一番の恩返し」(瀬沼)。チームの悲願を吉村の花道にするべく、そのチームワークはより強固なものになっているはずだ。
吉村のサポーターに向けての現役最後のメッセージは、今節・徳島戦終了後のセレモニーで語られる。
(愛媛担当 松本隆志)
2015/11/22 19:48