関東大学サッカーリーグをもっと知ってもらうために、OB選手が大学時代を振り返る連載企画。最終回は専修大OBの高山薫が大学サッカーを語ってくれた。
■プロフィール
FW 23 高山 薫(たかやま・かおる)
1988年7月8日生まれ、27歳。神奈川県出身。174cm/67kg。ゴールハンターユナイテッド→川崎U-15→川崎U-18→専修大→湘南→柏を経て今季、湘南に復帰。豊富なスタミナを生かしたスプリント回数の多さと、スピードあふれる突破が持ち味のプレーヤー。これまではサイドを主戦場としていたが、今季はシャドーでのプレーが多く、よりゴールに直結した仕事を任されている。
——専修大に進学した理由は?
「川崎F.U-18でプレーしていましたが、トップチームへの昇格はかないませんでした。ただ、いまさらサッカーを止められないなと思っていました。他の大学のことはよく分からなかったのですが、子どものころにフロンターレで岩渕(弘幹)さん(専修大サッカー部コーチ)から指導していただいたこともあって、岩渕さんがいるという理由で専修大を選びました。けっこう漠然とした感じで行きました(笑)」
——大学に入った当初はプロ入りを意識していましたか?
「入学当初は大学サッカーの実態をあまり分かっていなくて、大学からプロに行くという選択肢があることもよく知らなかった。でも、自分の学年が最初に集まったときに、高校やユースで有名だった人や知っている人も多くて、大学サッカーのレベルは高いのだなと感じました。1年生のときには荒田さん(荒田智之/現・大分)がプロの練習に参加していたり、大学選抜に入っていたりしていました。そういう先輩たちを見て『大学からでもプロは狙えるんだ』と。自分たちが2年生のときには関東1部に上がれたのですが、自分たちの学年はプロになりたいやつらがいて特にギラギラしていたこともあり、もう一回プロになりたいなと思うようになりました」
——大学4年間では2部も1部も経験していますが、どんな違いがありましたか?
「2部でも1部でもすごくいい経験ができたと思いますけど、やっぱり圧倒的に1部のほうがいいですよね。試合会場もそうだし、来ているスカウトの数も違う。今は違うのかもしれないけれど、当時の2部は上位にいないとスカウトは見てくれない。1部だったらとりあえず誰かしら来ていました。そういうことを選手同士で話して気持ちを盛り上げていました。ギラギラしてたんで(笑)」
——湘南は練習が厳しいと言われていますが、大学時代はどうでしたか?
「大学は大学でキツかったです。グラウンドを1周1分半で14周走るという練習を朝からやって、オフ明けはもう少し走って、パス練習をしてからゲームに入る。朝はすごく早いし、キツかったけど鍛えられました。ただ、大学のときは自分の好きなプレーしかしていなかったので、湘南ではポゼッションにまったくついていけなくて、ソリさん(反町康治/現・松本監督)にはよく注意されました」
——当時、ライバル視していた選手はいましたか?
「専修大で一緒にやっていた選手や大学選抜で一緒にプレーした選手たちに対しては、かなりギラギラしていました。例えば、『あいつがプロクラブの練習に呼ばれて行ったらしいぞ』と聞いたら『なんでオレじゃないんだ』とか、大学選抜にチームメートが入って自分が呼ばれなかったら『おまえらが大学選抜に行ってる間に、オレらはこっちでめっちゃレベルアップしてるからな!』みたいな感じは常にありました(笑)。でも、いま振り返ると、そういう仲間と競い合えたからプロに進めたとも思います」
——大学時代の一番の思い出は何ですか?
「2年生のときが一番楽しかった。当時は2年生がけっこう試合に出ていて、そこで1部で6位になりました。1学年上には渡部博文(現・仙台)もいたので、来年の専修は強いぞと、優勝候補的な扱いをされていたんです。ところが、実際は次の年に(2部に)落ちるんですけどね」
——大学サッカーに入って良かったと思うことはありますか?
「もし自分が高卒でプロになっていたら、絶対にすぐにクビになっていたと思います。あのままプロになってもまったく通用しなかった。大学サッカーはとにかく試合数が多い。練習試合もあるし、公式戦もある。そういう環境でプレーしたことで成長できた。高卒でプロに入ったら、レベルやスキルも足りなくてメンタルも弱かったので、通用しなさ過ぎてすぐ心が折れて絶対クビになっていた。そう断言できるぐらい、あのときプロにならなくて本当に良かったと思います。大学サッカーはプロの練習に参加させてもらう機会もある。大学とプロは練習試合もよくやるし、大学リーグもレベルが高い。だから、大学でしっかり試合に出て、成長してからプロに進むという道もありだと思う。自分の場合は大学でプレーしていなかったら、絶対にプロでやっていけなかったと強く思います」
——最後に、大学サッカーで得られたことを教えてください。
「プレーは自分のやりたいことばかりやっていましたけど(笑)、いろいろな考え方の人たちや、大人たちと出会ったことで、高校生のときに比べてだいぶ大人になったと思います。高卒でプロに進んだ選手は自分次第という部分はあるけど、大学は自然といろいろな人に出会う機会が多くなる。勉強もしっかりとやっていればタメになる。サッカーだけではなく、いろいろな人に出会えて、いろいろな経験ができたことは良かったと。自分の場合は、同じ学年にギラギラしたやつらがいて本当に良かった。同い年で一緒にやっていたやつらは、いまのベルマーレの選手たちと同じようにサッカーに対してまじめで、だからこそ切磋琢磨してこられた。あいつらがいなかったら、いまの自分はなかったかもしれない。だからやっぱり、感謝しています」
10月31日(土)、11月1日(日)はJR東日本カップ2015第89回関東大学サッカーリーグの第20節。残り3節。白熱の終盤戦から目が離せない! 詳しくは(一財)関東大学サッカー連盟オフィシャルサイトへ!
(聞き手:湘南担当・林 遼平)
(BLOGOLA編集部)
2015/10/29 16:04