グリスタの上空とは異なり、監督や選手だけではなく、ファンやサポーター、クラブスタッフ、栃木に来たわれわれ北九州の報道陣も、達成感に満たされた笑顔とクシャクシャな表情の、何とも言えない瞬間となった。
13時03分にキックオフされた最終節の栃木戦は、今季の北九州を暗示するように、苦しい展開となった。ホーム最終戦の栃木にとっては、絶対に負けられない試合。試合開始と同時に猛攻を仕掛け、北九州ゴールへと迫る。北九州は必死のディフェンスではね返し、攻撃に転じようとするが、つながらない。この試合で今季フルタイム出場を果たしたGKの佐藤は「今は我慢の時間だから」と、最後方から声を掛け、自らもプレーでチームを鼓舞した。
セットプレーからしかチャンスを作れない北九州。しかし、栃木にも焦りが出て来たのか、徐々に北九州の攻撃にもリズムが生まれ始める。そして、42分、右サイドから細かくつないだパスを、今季チーム最多スコアラーの端戸がシュート。14得点目となるゴールを決め、ついに欲しかった先取点を奪った。
しかしリーグ最終節は、このままでは終わらなかった。
キャプテンの木村も「少し引いてしまった」と話すように、ハーフタイムを挟んだ後半、攻撃的な選手を投入して反撃に出る栃木の猛攻を許した。栃木イレブンを後押しする栃木サポーターの声援も合間って、スタジアムの形状からなのか、記者席にもその圧力が伝わってきた。
すると72分、右CKから久木野選手に頭で合わされ、同点とされる。しかし、今の北九州の選手たちに下を向く者などいない。チームは本当にたくましく成長したんだと、感じずにはいられなかった。
試合を決めたのは、今季はけががちで思うようにプレーができなかった、途中出場のレオナルドだった。持ち味である強引さに欠けたプレーを見せ、ライン際の三浦監督から激しい言葉が飛ぶ。それに対して、「見てろよ」と言わんばかりに、最初のチャンスで豪快なシュートを放つ。これがゴール右隅に決まる。上半身裸で監督に抱きついたレオナルド。その8分後に退場となったが、それは、この試合に勝たねばならなかった、北九州の全ての人の身代わりになったにすぎない。
5分間のアディショナルタイム、栃木の猛攻をしのぎ切った北九州の選手たち。プレーオフの夢が無くなった時から、選手たちはトーナメントを戦っている気持ちで一戦一戦を戦っていたのだ。試合終了の笛が鳴った瞬間、選手たちの表情を見て、あらためてそう感じた。試合終了と同時に、選手とサポーターの写真を撮ろうと、ピッチに降りた報道陣に対して、三浦監督は真っ先に「ありがとう」の言葉と共に、ガッチリと握手をしてくださった。その言葉と行動に、微力ながらも「力になれた」と思う反面、「もっと、やれたのでは」と悔やんだ。
シーズン途中からギラヴァンツ北九州の担当となり、頭で考える暇もなく、体で感じながら、動きながら、私自身も走り続けて来ました。半年間で本当にいろいろなことが起こり、喜怒哀楽を共に感じてきました。良いことばかりではなく、悔しいことの方を先に思い出してしまいますが、この悔しさは、これから先もずっと、ギラヴァンツ北九州に関わる人々と共に、来年以降晴らしたいと思っていますよ、三浦泰年監督!
(北九州担当 坂本真)
2012/11/12 22:26