今年移籍1年目にもかかわらず、北九州のサッカーには欠かせない存在だった。
鋭い危険察知能力と、その長い手足を生かして相手からボールを奪うと、チームに攻撃のスイッチを入れ続けた。一時、右膝靱帯(じんたい)のけがで戦線離脱するも、彼が中盤に帰ってくると守備が安定し、他の選手は安心して攻撃に専念できた。髪型や試合後のパフォーマンスも目立っていたが、彼のプレーに目が行ってしまったシーズンだった。
――今年は移籍1年目でしたが、どんなシーズンでしたか?
新井涼平選手(以下、新井)「今シーズン始まる前から頭を使う練習が多かったので、最初は戸惑いとかもあったんですけど、積み重ねることによって慣れてきたこともありますし、そこで自分のモノにしようと工夫することもできてきた。それがシーズン中盤から、自分の良さをゲームの中でも出せてきた要因かな?ホント、収穫の多い1年だったと感じています」
――序盤、なかなかチームが波に乗れなかったですが?
新井「勝てない時期っていうのは、僕個人としても戸惑っていたし、ゲームの中でも、考えながらプレーしていた部分があったと思います。そこでもう少し、思い切ったプレーを出して行こうと、常に考えていた。結果として、思い切ったプレーが出せるようになった鳥取戦(7月1日 とりぎん)が、自分が変われたゲームだと感じています」
――その間に、けがで出られない時期もありましたが?
新井「けがした時期っていうのも、自分が入ったらもう少しよくしようだったり、考えられる時でもあった。チームが結果が出ていなかったので、何とか自分が変えられるようにチームの練習を見ながら、リハビリを続けていました」
――すぐに栃木戦(6月13日 本城)で復帰を果たしましたね。
新井「チームみんなの助けもあって、すぐにゲームに入れた。それ程違和感なく、自分の思ったプレーを要所要所で出しながら、できていたのかなと思いますね」
――プライベートでは、七夕に結婚もされましたね!
新井「それまでは自分のためと言うか、どう成功するかを考えていました。結婚してからは自分だけじゃなく、家族のためにも、という意識が出てきて、より一層自分の持ち味を出してプレーできたと思っています」
――岡山戦(8月22日 カンスタ)では、プロ初ゴールも決めました。
新井「みんなに、いつ点を取るんだ!って、発破を掛けられていました(笑)。点を取ったら、その時のポーズだったりが、笑い話で出ていた。それと、父親の誕生日も近かったので、試合前日や当日に「誕生日だから、点を取ってくれ」と言われていたので、それが力になって、ああいうゴールが生まれたんだと思います」
――中盤を過ぎた頃からチームに勢いが出て来ましたが、何かキッカケがあったのでしょうか?
新井「キッカケというより、ゲームの中で、自分たちが主導権を握れている感覚が、すごく持てている時期があった。その時期っていうのは、どういう相手が来ても、(自分たちのサッカーが)できるなって自信がありましたし、チーム全体の雰囲気も感じました。やり続けてきたことによって、みんなの意思統一ができていた時だったんでしょう」
――福岡とのダービー後から、ゴール裏でのパフォーマンスも始まったようですが?
新井「福岡相手に一度も勝っていないという、チーム全体の思いもありました。僕も大宮から来ましたが、浦和とのダービーを間近で見ていたので、ダービーに懸ける思いを人一倍感じる中で育ったので、ダービーの試合に勝ったら喜びが爆発するのも、サポーターと一緒に喜ぶのも良いと感じて、ああいうパフォーマンスが始まりましたね」
――プレーオフ圏内が見えて来た時のライセンス問題。新井選手個人は、どう受け取りましたか?
新井「北九州に来た時もそうですし、シーズン中もそうですが、スタジアムの問題はあると聞いていました。『可能性がない』って言われるまでは目指してたので、落ち込んだ時もありましたし、この先どうしようと考えたこともありました。ただ、この先のためにも、今ここでしっかり結果を出して、チームとして上に行けば、何かしら変わるんじゃないかという思いを持ちながら、全体で取り組んで行こうと話し合いましたし、僕もそういう思いでプレーをし続けました」
――チームが1つになって、最後は良い形で終えられました。
新井「終盤になって来ると、来年のことだったりが、みんな頭に浮かんで来ると思うんですけど、しっかりみんなで『北九州のサッカー』をしよう、貫こうと・・・。自分たちのリズムが出ない試合もありましたが、そこはみんなが気持ちを1つにして戦えたことが、3連勝という形で終えられんだと思いでいます」
――辞任が決まった三浦監督とは、1年間一緒でしたが?
新井「僕にチャンスをくれた監督ですし、サッカー人生で一番成長したって言っても良いくらいの、この1年でした。この機会をくれた監督に感謝しています。これから、どういう形で監督と会うかは分かりませんが、成長した姿だったり、成長し続ける姿を見ててもらいたい。監督の成功を祈りながら、いつかまた監督の下でプレーできるように、これからも成長して行きたいです」
――最後に、今年1年間応援してくれたファンやサポーターに一言お願いします。
新井「結果が出ない時期も応援し続けていただいた。ダービーだったり、今まで勝てない千葉だったりに勝てたのも、ファン、サポーターの力があってこそと思うので、本当に1年間応援ありがとうございました、という思いでいっぱいです!」
(北九州担当 坂本真)
2012/11/27 14:26