センターバック専門講座
著:秋田豊 構成:田中滋
センターバック五輪書
「現役のときに、もっと頭を使って考えながらプレーしていれば、もっと活躍できたと思う」
引退した元選手に取材をしていると、よく耳にする言葉だ。この現象は、現役で頭を使っている選手が少ないということの裏返しだ。
逆にしっかり頭を使ってプレーする習慣のある選手は、30歳を超えても長くプレーできることが多い。37歳まで現役だった元日本代表DFの秋田豊氏はその一人だ。
秋田氏は、特に体格や身体能力に恵まれていたわけではなく、秀でた足元の技術があったわけでもない。それでも日本代表として2度のW杯出場を経験し、鹿島でも数多くのタイトルを手にした。その最大の理由は、氏の一般的イメージである〝タフネス”ではない。若いときから「考えてプレーする」ということを身に付けていたことが大きい。
本書では、秋田氏が高校生のころから守備のディテールを突き詰め、積み重ねるように考えてきたことをまとめたもの。言わば『センターバック五輪書』である。
この本は観戦者と現役選手の双方に薦めたい。観戦者にとっては守備を見る目を養える本だ。先の五輪・韓国戦の失点シーンで、日本のDF陣がどう対応すべきだったかは、この本を読んでいれば一目瞭然だ。
加えて、私が強く薦めたいのは現役選手である。本書では、ディテールにこだわった非常に細かい守備の技術論が記されているが、図解は一つも入っていない。これは図解を見て安易に理解した気になってしまうことを防ぐために、あえてそのように作ったからだ。つまり〝考え抜いてプレーしなさい”という本書のメッセージが込められている。
古今東西、サッカーを始めたときはみな、攻撃的ポジションを好み、自らセンターバックを希望した選手は決して多くないだろう。私が小学生のころは「センターバックは一番下手なヤツがやる」という暗黙の了解が存在していたようにも思う。
そんなセンターバックというポジションに夢があること、魅力があること、そして誇りがあることが、秋田氏の言葉で語られている。だからこそ、育成年代の現役センターバックの選手に読んでもらいたい。もしかすると、それが日本サッカーの未来を変える。そんな一冊になることすら、期待している。
(池田達哉)
センターバック専門講座
著:秋田豊
構成:田中滋
単行本:192ページ
出版社:東邦出版 (2012/8/2)
(BLOGOLA編集部)
2012/08/17 10:36