あとがきではエルゴラ本紙では触れられなかったトピックを紹介します。千葉ジュニアユース舞浜、千葉U-18と6年間を千葉の下部組織で過ごした加藤恒平選手にとって、フクダ電子アリーナは特別なスタジアムでした。戦前、加藤選手は「雰囲気を含めて、フクアリはJリーグトップクラス。スタジアムと選手の距離が近いし、サッカー専用で声が反響する造りになっている。その大観衆の中でやったことがないから楽しみ。ユースのときもサポーターが来てくれていたし、そういう方々はトップも応援してくれている。僕のことを覚えていてくれるとうれしい」とフクアリでのプレーを本当に楽しみにしていました。
しかし、千葉戦に向けた準備期間で加藤選手に試練が訪れました。紅白戦にて、主力組の3バックにはイ・ガンジン選手が入り、加藤選手はサブ組での練習を余儀なくされました。そして迎えた“古巣戦”、負傷した薗田淳選手に替わって、加藤選手は先発出場。90分フル出場で無失点勝利に貢献し、背番号27は思わず涙を流して勝利を喜びました。
「1勝だけど、僕にとっても、チームやサポーターのみなさんにとっても、待ち望んでいた結果だった。先がある中で泣いちゃいけないと思っていたけど、やっぱり感情を抑え切れなくて、自然と涙が出てきたというのが本音です。自分の中では(千葉戦を)そんな意識していないつもりだったけど、いざピッチに立ってチャントを聴くと、僕が6年間着た黄色のユニフォームと対戦するということで自然と気持ちがたかぶっている自分がいたことは確か。敵としてピッチに立ったわけだけど、自分の中で何をすることが恩返しになるかと考えると、自分のプレーで、町田にだけど勝利に貢献することが一番なのかなと思っていた。フクアリは“恩返しの地”。今日の勝利は自信につながると思う」。試合後、加藤選手は感慨深い表情で千葉戦への思いを話してくれました。
「加藤が勝って本当にうれしそうにしていたし、アイツにはおめでとうと言いたい」と平本一樹選手。ベテランらしく、涙を流した“後輩”にねぎらいの言葉を投げかけていたシーンが印象的でした。【写真/徳丸 篤史】
(町田担当 郡司聡)
2012/08/15 18:20