千葉県内で合宿中のU-18日本代表は12日にジェフユナイテッド千葉のサテライトチームと、13日に流通経済大との練習試合に臨み、それをもって合宿終了となった。10日に始まった4泊5日の合宿の狙いは「そろえてトライ」(鈴木政一監督)だったわけだが、その成果は果たして見えただろうか。
立ち上がりの主導権はその千葉に奪われる。「本当はもっとつなぎたかったんですが…」とMF川辺駿(広島ユース)が肩を落としたように、本来はつなぎのサッカーを見せるU-18代表だが、プロ選手の迫力に気圧されたのか「単純に蹴ってしまった」(川辺)シーンが目立つ。ただ、この時間帯をしっかり耐えると、U-18代表はMF深井一希(札幌)の強気の守備などからリズムを取り戻していく。44分に一瞬のスキをつかれてDF藤本修司に得点を許したものの、その直後にMF小屋松知哉(京都橘高)のパスから抜け出した南野が鮮やかにGKを破るシュートを決めて同点に追い付いてみせた。「ウチのリズムでやることまではできなかったが、それでも相手の速いテンポのサッカーに試合の中で対応できた」と鈴木監督も及第点を与える内容だった。
ただ、途中出場の小屋松を残して全員を入れ替えた後半は、良い流れを受け継ぐことはできなかった。後半開始早々の49分に後半から登場した千葉のMFナム・スンウにゴールを許すと、59分にもGKのミスから失点。終了5分前になってようやく好機を作り始めたが、内容は低調だった。後半は初招集の選手が多く、連係面で見劣りするのは当然のこと。ただ、個々の消極的な判断が目立ち、プロ選手に向かってチャレンジする姿勢をなかなか見せられなかったのは残念だった。挑戦しなければ、「失敗経験」も得られない。初招集だからこそ、それを見せてほしかった。
なお、この試合終了後、深井が週末のJリーグの試合に向けて所属チームの札幌へ帰還した。頼れるボランチは、この合宿で鈴木監督からチームキャプテンに指名されている。「前の合宿から『キャプテンは深井がいいかな』と思っていた。普段から頑張っていて、皆が信頼して任せられる選手だと思っている」と鈴木監督。まだ今後も任せるかは決めていないとしていたが、その人選に迷いはなさそうだった。
平成25年6月13日(木)
トレーニングマッチ/習志野秋津サッカー場
「U-18日本代表 7-2 流通経済大」
合宿最終日となる13日、U-18日本代表は習志野秋津サッカー場で流通経済大の胸を借りた。深井を欠いたため、ボランチには松本昌也(JFAアカデミー福島→大分)がスライドし、左MFに望月嶺臣(野洲高→名古屋)が入った(下写真)。対する関東大学リーグの雄・流通経済大はレギュラーの大半を欠いた1.5軍くらいの編成である。ちなみに、右MFの森保圭悟は広島・森保一監督の子息だ。
そして試合は10分で決まってしまった。中心になったのは、やはり南野である。3分に内田裕斗(G大阪ユース)から松本が決めてU-18代表が先行すると、9分には松本のクロスを見事な技術で合わせた南野が追加点を奪取。直後の10分には相手のハンドリングの反則で得たPKを南野が冷静に決め、3-0とした。
年下を相手に為す術なくやられる様を見た流経ベンチからはピッチに向けて容赦ない怒声が飛ぶ。26分には流経もセットプレーから1点を返し、徐々に流れは変わるかと思われたが、これを壊したのもやはり南野。32分にドリブルからミドルシュートを決めて4-1とすると、37分には望月の絶妙なパスに合わせて5-1。圧巻の活躍だった。
もっとも、当人は「まだまだです。ジェフさんとやったときは自分たちのリズムでサッカーをできていませんでしたから」と謙虚。「このチームは技術の高い選手が多くて、ボールを動かせるチーム。そこを生かしていきたい」と語っている。
後半は広瀬陸斗(浦和ユース)のみを残して総入れ替えとなったU-18代表。気合いを入れ直してきた流経大に対して機先を制するも、49分に得た誤審気味のPKをMF高木大輔(東京V)がいきなりバーにぶち当てる不穏な開始。59分にはGKのミスからまたも要らない失点を喫するなど、内容面は今ひとつ。もっとも、66分に高木が汚名返上のミドルシュートで加点し、75分にはタイミング良く攻め上がった谷村憲一(盛岡商高→山形)のパスから再び高木が決めて、7-2。スコアとしては完勝だった。
合宿を終えた鈴木監督は「Jリーグの速いテンポのサッカーともやれた、いいキャンプだった」と総括。ビルドアップの部分はまだまだとしながらも、南野、松本、深井といったJリーグに出場している選手たちを一堂に集めての合宿に手応えを感じた様子だった。
そして、一つの課題も見えてきた。「11人以外の層をどう厚くしていくか」(鈴木監督)という一点である。「意識が高く、質も高い」という先発組と比べると、「やれる子と、そうでない子の差が出てしまっている」と鈴木監督も認めるサブグループの出来はどうしても見劣りしていた。ただ、指揮官は「だからダメだ」という結論は出さない。次の7月合宿は、Jリーグ期間中のため、南野らの招集は不可能。これを逆手に取って、控え組の底上げと新戦力の発掘に注力する心積もりだという。
「同じサッカーを共有さえできれば、(控え組の選手も)十分にやれる」と鈴木監督。今秋のアジア1次予選、1年後のAFC・U-19選手権(アジア最終予選)、そして2年後のU-20W杯へ。経験豊富な指揮官の下で誰がどう伸びるのか。“鈴木ジャパン”の成長物語を楽しみにしたい。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/06/13 22:19