adidas CUP日本クラブユース選手権(U-18)1次ラウンド第2日
「浦和レッズユース 7-0 ガイナーレ鳥取U-18」
補足しておこう。浦和レッズユースのCBである5番の齋藤一穂は決して小柄な選手ではない。177cm。むしろサイズのある選手だが、とてもそうは見えない。高さというのは相対的なものだということを思い知らされる写真だ。緑のユニフォーム、鳥取の12番は畑中槙人。1996年6月7日生まれの高校2年生で、身長203cm・体重77kg。ちょっと確認のしようがないものの、日本サッカー史上“最長”選手かもしれない。
畑中は大敗に終わった試合について「悔しい」と漏らしつつも、「相手のほうがうまいし、強い相手とできる。(全国大会は)楽しいです。全国のレベルが分かる」と大敗にも前向きな姿勢を崩さなかった。この日は、巧みな胸トラップからのポストプレーで起点を作るなど好プレーも見せた。ゴールこそ観られなかったが、ようやく身長の伸びが止まったばかりということなので、プレーに安定感や重厚感が出てくるのはこれからだろう。畑野伸和監督も「身長が止まってようやく動きが少しずつスムーズになってきたところ。(量として)動けるようにもなってきた」と語る。これから筋力を付けていくことで、また見える景色も変わっていくはずだ。畑中の子供のころに好きだった選手はシェフチェンコだったそうだが、「ちょっと大きくなり過ぎました」(畑中)。いまはクラウチやイブラヒモビッチのプレーを参考にしながら、技術を磨いている。その成果が出てくるのを楽しみに待ちたい。
また楽しみにしたいのは、2年連続2度目の出場となった鳥取ユースについても同じこと。畑野監督は「都会のクラブにはできない、田舎のクラブだからできることがあるはずだと思ってやっています」と語る。この日は0-7の大敗で、全国大会で戦うには「まだまだ」(畑野監督)という部分を見せてしまったが、「去年は相手のユニフォームに負けていた。でも今年は戦えていますから」と手ごたえも感じたという。また畑中と同じく、監督も「楽しい」という感想を漏らしていたのは印象的だった。力及ばずとも、前向きなトライができている証だろう。畑中の存在感は際立つが、ほかにも読みが良くて戦える2年生ストッパーの津森大生、左利きの1年生ボランチ磯江太勢など好選手が目に付いた。レギュラーのほとんどが2年生だけに、「来年」にも期待したい。
鳥取は地元の米子松蔭高と提携しており、メンバーの7割ほどが同校に通い、学業とチームでの選手生活を両立している。また寮も用意されており、16人が寮生活を送る。兵庫県出身の畑中も寮で暮らす選手の一人である(ちなみに彼のベッドは特注だそうだ)。後発のJクラブとしては珍しいくらいに整備された環境は、「育成は絶対に学校生活が大事だ」という社長の肝いりだという。もちろん、新興クラブゆえに何も問題が起きていないなんてことはないだろうし、その前途も平坦ではあるまい。ただ、クラブとして育成に力を入れていくのだという強い気持ちが見えるということこそが、鳥取のアカデミーに可能性を感じる最も大きな理由である。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/07/26 17:29