左サイドを進撃してくるアタッカーに対し、危機察知能力が働いた宇野禅斗は、相手に果敢なスライディングを仕掛けた。結果、一歩先にボールに触れた宇野がタッチラインにクリアして難をしのいだ。「禅斗、ナイスプレー!!」。三輪緑山ベースのピッチに宇野の好プレーを称賛する声が響いた。
プロ3年目の宇野がようやくたどり着いたJ1デビュー戦の舞台は、第9節FC東京戦。国立での神戸戦で敗戦を喫したチームが、連敗回避を合言葉に臨んだ敵地でのFC東京戦は、出場停止の柴戸海に代わって宇野がダブルボランチの一角を務めた。FC東京戦の町田は常に先行する展開で初対戦の相手を撃破。宇野はトップカテゴリーデビュー戦を勝利で飾った。
柴戸が復帰した翌節の磐田戦も連続しての先発出場。ところがJ1・2試合目の宇野に待っていたのは、悔しい2点差での敗戦だった。
「あらためて失点をしないチームを再構築しなければ。個人的にもスキのない、要所をしっかりと押さえるボランチの役割を果たさなければなりません」(宇野)
0-2で敗れた磐田戦は、反省の弁ばかりが口をついた。
わずか2試合のJ1経験でも、J2とのカテゴリーの差は痛感している。「クオリティー、スピード感、フィジカルコンタクトの違いはあると思う」と宇野。それでも、「現段階では圧倒的に劣っているという自己評価はしていない」と前を向く。
ボールハントを得意とする柴戸とのポジション争いは激烈だ。特長が似ている分も、ボールハント力やセカンドボール回収力で上回らなければ、ポジション確保はままならない。それでも、「味方が一番のライバル」である競争原理を歓迎し、「日々アップデートしなければ置いていかれる」と危機感は募るばかりだ。
「自分の特長を発揮すること。それにプラスαできることを発揮しないと、僕がピッチに立つ意味を確立できない」。語気を強めた言葉に、強い覚悟が滲む。
遠いカタールの地では、チームメートの藤尾翔太や平河悠、そして青森山田高で高校三冠を達成した際にダブルボランチを組んでいた松木玖生がパリ五輪出場権を獲得。同じ“パリ世代”にあたる宇野は自身がパリ五輪最終予選に参戦できない悔しさを胸に秘めながら、「見ないという選択肢はない」と同世代の活躍を見守ってきた。パリ五輪出場へ、望みがつながれた格好だが、本人は「刺激を受けて現在地を見つめながら、いまは五輪のことは考えられない」とチームでの立ち位置確立に集中している。
次節はホームでの柏戦。先発か。ベンチスタートか。立場は不透明だが、ピッチに立つチャンスをつかめば、「守備で走って、チームの勝利に貢献できるプレーをしたい」。宇野はどん欲に、町田の勝利だけを希求している。
【まちだ感謝祭・ホームゲーム情報】
明治安田J1リーグ第11節
5月3日(金・祝)15:00キックオフ
FC町田ゼルビア vs 柏レイソル
町田GIONスタジアム
https://www.zelvia.co.jp/news/news-260920/
(町田担当 郡司聡)
2024/05/02 02:13