目標のJ1自動昇格へ苦しい戦いを続けている東京V。明治安田J2第33節の熊本戦、前々節の岐阜戦と残留争いのチームを相手に連続して引き分けに持ち込まれた。前節の栃木戦では相手にシュート数16対4と圧倒され、終了間際のCKから決勝ゴールをもぎ取ってようやく勝点3を手にした。
ただ「内容が悪いなりにも勝ちきったことは大きい」と、その栃木戦で負傷から復帰した田村直也は言う。「今までこういう試合はあまりなかったけど、それをモノにできるかというのは重要」と語るのは、彼が2007〜13シーズンまで、仙台でプレーしたことが背景にある。「あの頃の仙台はゲーム内容がダメでもセットプレーでとか、本当にそういう強さがあった。昇格した年(09年)、J1で躍進したその翌々年(11年)も本当にそうでした」と振り返った。
そうした強さを身につけるには何が必要か? プレーと声でチームを引き締めるベテランは、「監督のやり方もそうだし、采配もそうだし、スタートから行ける選手がベンチにいることで、出ている選手にも緊張感が走ることもそうですね」と、一つには監督を含めたチーム力を挙げる。そして、「サポーターが作り出す『絶対に勝てる』という雰囲気もある」と付け加えた。
「本当に、奇跡と言うのかは分からないけど、何かあるという感じがした」というユアスタは、キャパシティーから生まれる密集感、屋根による反響もあり、その雰囲気は確かに日本有数と言っていい。
残念ながら東京Vのホーム味の素スタジアムは大き過ぎるキャパシティから、どうしてもその面では難しい。それでも田村は、昨年の最終節、J1昇格プレーオフ進出をかけて徳島と争った熱戦が忘れられない。近年の平均観客数は5,000〜6,000人だが、あの試合は14,000人以上が詰めかけ、選手たちの背を押した。「自分たち次第で、ああいう雰囲気を作り出すこともできる」。再びJ1に戻ること、そして味スタが緑に染まることを信じて、田村は残り7試合に全力を尽くす。
(東京V担当 芥川和久)
2018/10/05 19:15