7月20日にJリーグの移籍ウインド―が開くのを前に、J1のビッグクラブからの獲得オファーを断っていたことが判明した熊谷、その理由を率直にこう語る。
「ずっと試合に出させてもらっている中で、(J1)昇格を目指してみんなで頑張っている以上、途中にそういう人が抜けるのはどうなのかと。自分的にも全然、昇格を諦めていないし、チームやサポーターの人たちのことを考えたら……。この順位で諦めている感じが出るのもイヤなので、残る決断をしました」
今季、リーグ戦でチーム唯一の全試合先発が続く、押しも押されぬ主力の責任感―。言葉を一つひとつ丁寧に選びながらも、そこには強い意志が宿る。
しかも、決断は即決だったという。選手の価値をはかる上で重要な物差しとなる年俸や契約期間などの内容も聞かずにだ。「ちょっと興味はありましたけど(笑)。もちろん個人的な部分を評価してもらっているのはうれしかったのですが、決めている部分はあったので。相手側の人とも会うことなく、今回は断らせてもらいました」。現状と天秤にかけなかった裏には、クラブやサポーターへの感謝の念があった。
千葉に移籍して2年目。飛躍も実感している。「プレーの幅が広がったというのはあるし、どんどん成長している。一方でまだまだのところも多い中、監督は練習中から足りない部分のヒントをくれます。そこを直していけば、選手としてもっとよくなれる」。寵愛を受けるフアン・エスナイデル監督からの絶大な信頼も意気に感じている。
ただ、チームの立ち位置に目を向ければ、誰もが納得できない16位。そして今後の浮上へ向けてのポイントは、やはり“ハイプレス・ハイライン”のブラッシュアップだと認識する。11日の天皇杯3回戦の序盤30分間のデキを踏まえ、「やっぱりあれで、勝ちたいというのはある。中でやっていても充実感というか、やってる感はすごくあるし、自分たちのスタイルを突き詰めてやっていかないと、連勝も難しい」。自身の才能を開花させてくれた千葉のスタイル確立と最大の目標であるJ1昇格。それを両立させ、愛する千葉とともにJ1の舞台へ返り咲く覚悟が25歳の俊英にはある。
(千葉担当 大林洋平)
2018/07/13 20:14