7月5日に行われた日本代表帰国会見でのこと。西野朗監督は「ベルギー戦が終わったあと、選手たちにどんな言葉をかけたのか」と問われると、隣に座る長谷部誠に「なに言ったっけ?」と言っておどけながらも、「ある選手がグループステージを突破した翌日のミーティングでいきなり発言して、小さい選手なんですけど」と笑いながら話し始めた。
その笑顔につられたのか、それとも思い出したのだろうか、笑顔を見せる長谷部の横で西野監督は続けた。「ブラジル(W杯)の話をしたかったんでしょうけど、『ブラジル』って言葉を言った瞬間に言葉を詰まらせたんですね。泣きじゃくりながら何とかブラジルからの思いを。グループステージを突破した翌日の話なので、おそらく回想しながら詰まってしまった瞬間がミーティングルームであった」。
ブラジルW杯を経験した小さい選手。西野監督は具体名を出さなかったが、その言葉の主が長友であることは想像にたやすい。その言葉を聞き、西野監督は「その小さい選手がグループステージを突破した翌日に話してくれたことはこれからも4年…4年ではないですね、早い段階で世界に追いつける、そういう姿勢を与えてくれた」と感じていた。
そして「あの悔しさは僕自身も感じたことがない」ほどだった敗戦後、西野監督は次のように選手に伝えたという。「ロストフのベルギー戦が終わったあとに倒れ込んで背中に感じた芝生の感触、見上げた空の色なのか感じなのか、それは忘れるな。ベンチに座っていた選手たちもあの居心地の悪いベンチのお尻の感触を忘れるな」。
“小さい選手”がそうだったように、いやおそらくこれからもそうであるように、悔しさを糧に前へ進む。「あれが世界だと思うし、あれに対抗していくのはこれから。とにかく前へという中、日々、鍛えて成長していかないといけない」。ベルギー戦でノックした世界の扉を自らの手で、足でこじ開けるため、日本代表、日本サッカー界は挑戦し続けていく。
文・写真:菊地正典
(BLOGOLA編集部)
2018/07/05 17:21