著者:河治 良幸(かわじ・よしゆき)
発行:8月21日/出版社:内外出版社/価格:1,200円(本体価格)/ページ:208P
“解説者”に軸足を置いたサッカー指南書
去年から今年にかけて『DAZN』の登場を筆頭にサッカー中継の視聴環境の幅が急激に広まり、解説者のいない実況者だけの試合にも違和感がなくなりつつある今日このごろ。スマホなどで移動中に観る試合は背番号も見づらく選手の認識が難しいため、ボールに絡んでいる選手名を漏らさず伝えてくれる実況者だけの進行のほうが、むしろストレスがないようにも感じ始めていた。
少なくともそんな筆者にとって、“解説者”についてあらためて深く考えるきっかけを与えてくれた本書との出会いは素晴らしい機会となった。
本書内のコトバを借りると、「サッカーの試合中継は、現地からの映像と実況があれば成立する。しかし、そこに解説者のコトバが加わることで、視聴者が得られる情報や視点は大きく変わることになる」。まさにその点に注目し、実際に解説者としても仕事をする反町康治氏、都並敏史氏、後藤健生氏、中西哲生氏などへのインタビューも交えながら、斬新な視点で“サッカーの観かた”を提案してくれるのが本書である。
「サッカー中継・解説徹底比較! NHK-BS vs 民放地上波」や、柄沢晃弘アナによる「実況アナウンサーの『解説者取扱説明書』」など、各章ごとに企画が練られており、読み手を飽きさせない構成になっているのも本書の魅力である。
なお本書内において、「大まかに『クロス』として表現される『横からのパス』について、どのようなコトバを当てはめるべきか」と著者から質問された中西氏の解答が個人的には非常に興味深いものだった。
「海外サッカーを観ているときによく聞きますが、『デリバリー』はどうですか。ピンポイントのデリバリー。宅配ピザみたいなものでしょ(笑)。隣の家に行ったら困る。配達する。クロスというのは抽象的ですからね」
日本語以外に精通しておらず、「デリバリー」という表現を初めて知った筆者にはとても刺激的で、ほかにももっと知りたいという欲が高まった。
ぜひ海外の有名解説者&実況者への取材を盛り込んだ続編『海外版 解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』の刊行を期待したい。
文:中林良輔(東邦出版編集長)
(BLOGOLA編集部)
2017/09/03 12:00