メキシコリーグ・パチューカに移籍した本田圭佑が23日、ホーム・ベラクルス戦に出場し、デビュー戦でいきなりゴールを決めチームの勝利に貢献した。
本田は先月23日にリーグが開幕して以降も、標高2,400mの環境への順化、さらには右足ふくらはぎの肉離れの影響でここまでの試合は欠場していた。先週からようやくチーム練習に完全合流し、満を持して迎えた今回のデビュー戦。58分にピッチに登場すると、73分に味方のスルーパスに抜け出し、ペナルティーエリア外から左足を一閃。ゴールネットを揺らし、パチューカのホーム・エスタディオイダルゴを埋めたファンを熱狂させた。
登場の準備が整いタッチライン際に立つと、首を長くして待っていたファンたちが沸く。地元パチューカでは約400万ドル(推定)という高額年俸でイタリアからやってきた東洋人に、かねてから大きな注目が集まっていた。と同時に負傷や環境順化という理由はあったが、開幕から3連敗を喫した苦しいチーム状況にあって、なかなかプレーできない時間が続いていた本田に対して、人々の焦燥感も高まっていた。
期待と猜疑心が入り交じった空気。本田は自らのプレーで、一発回答してみせた。
ピッチに入り2分後、いきなり左足を振り抜く。これはDFに当たりCKになったが、そのセットプレーではファーサイドの位置からダイビングヘッドを放ち、さらに相手ゴールを強襲した。
ここ数年、日本代表やミランでプレーしてきた右サイドではなく、本職であるトップ下でプレー。中央を軸に、左右サイドに流れてはパスを引き出し、またバイタルエリアではワンタッチで味方を生かすパスを出した。
そして73分、その時が訪れた。自陣からのカウンターで一度は中央で味方からのパスを受けるとワンタッチではたき、そのまま前方のスペースへ。その動きを味方が見逃すことなくスルーパス。抜け出した本田は迫りくるDFが足を伸ばす前に、ペナルティーエリア外から左足シュート。低い弾道はGKが伸ばした手をすり抜け、サイドネットに決まった。
拳を突き上げ、歓喜する本田。「興奮した。言葉にならない」。オランダ、ロシア、イタリアと歴戦を重ねてきた男も、新天地での名刺代わりの一発に高揚していた。
チームも4-1で勝利、これで3連勝。これまで負傷の影響が心配されていた本田も、明日24日に発表されるロシアW杯アジア最終予選・豪州戦(31日)、サウジアラビア戦(9月5日)の日本代表に向けて、不安を打ち消す活躍となった。
試合後に設けられた会見。本田は冷静に、力強く語った。
「(日本代表の)オーストラリア戦の前にもう1試合、ティファナ戦(現地時間26日)があるのでしっかり勝利したい。そして日本にとって最も大事な最終予選が控えている。でも、危機感はあるので。人よりも危機感は持っているつもり。だからそんなに楽観視していない。いまはオーストラリアのほうが立場は上と見られているので、それを覆して勝利したい」
上々のメキシコデビューを飾った。そして大一番を控える日本代表に向けて、頼もしい結果を示した。日本のエース・本田圭佑が、力強く戻ってきた。
(日本代表担当 西川結城)
2017/08/23 14:19