12日、川崎Fの風間八宏監督が今季限りで退任することがクラブより正式発表された。
12年のシーズン途中に就任後、3年指揮を執ったのち15年から新たに2年契約を結び、今季がその最終年。成熟度が高まった中、初タイトルを目指して戦って来たが、2ndステージは残り3節、チャンピオンシップや天皇杯をまだ残す中での発表となった。
タイトルという成果は残していないものの、川崎Fに明確な攻撃的スタイルを色付けしてきた風間監督の功績は大きい。クラブはその手腕を評価し、庄子春男GMとしても続投の希望があったという。しかし、今回の決断に至ったのは、風間監督本人の意思が大きかった。
「このサッカー、このスタイルは彼が作り上げてきたもの。これからも継続していきたいという気持ちはある。できるならば(続けてほしい)、という思いはあった。ただ、9月の半ばに一緒に食事をする機会があって、その中で来年の話が出た。そこで、クラブとしては(まだ)来年のオファーを出すタイミングではなかったけど、本人のほうからそういう話があって今回の結果に至った」(庄司GM)。
風間監督は「3年経って、もう2年と言われたときに、正直長いなと思った。あと2年をどういう形でまっとうするかは考えていた。いつ考えていたというよりも、5年というのは自分の中で(区切りの)“時間”だったのではないかと思う」と語った。
選手内でも“風間監督が今季まで”という空気はあったようで、そこまで大きな“衝撃”を与えているわけではない。選手たちは冷静に言葉を発したが、その中には感謝の思いが強く出ていた。
「正直あのとき(風間監督就任時)、自分は(あそこから)下っていくものだと思っていた。ただ、自分次第だなと気付かせてくれた。この先もその考え方は変わらない」と中村憲剛は語る。「“風間サッカー”は日本人のサッカー好きなら知っているし、ここまでやったのはすごい。みんな以上に俺は感謝している」とは川崎Fに来たことで才能を爆発させた大久保嘉人の言葉だ。
中心選手も持つこの思いが、残り3カ月の川崎Fのエンジンとなることに期待したい。そして何よりも、監督自身が川崎Fの指揮官として戦う残り数試合へのモチベーションが高い。「これ以上ないという試合を、1試合でもできればと思う。現役中でもそんなにそういう試合をやったことはない。1、2試合くらい。(試合に)勝つことはあっても、そういう試合には巡り会えない。いろいろな人の記憶に(さまざまな)試合が残っていると思うけど、あと何試合かの中で一つ、このフロンターレで『すごいなこいつら。こんなことができるのか』というのを見せたいと思うし、そういうアプローチを、どこまでできるか分からないけど、やりたいと思う」
風間フロンターレ史上最高の試合を見せる準備は整った。16年も残り3カ月。ここからの川崎Fのサッカーに注目してほしい。
(川崎F担当 竹中玲央奈)
2016/10/12 20:06