「イメージはメッシだったんですけど」。
浦和の駒井善成がそう言って悔やんだのは、2-1で逆転勝利を収めた、5日のルヴァンカップ準決勝第1戦・FC東京戦の55分のプレーだ。駒井は武藤からのパスを右サイドで受けると得意のドリブルでカットイン。相手DF二人を置き去りにして左足でシュートを放つ、かと思いきやもうワンタッチ入れてシュートを打ち切れず、相手に奪われてしまった。
「蹴り出したボールと自分のトップスピードが合わなくてグッと縮まる感じがしたから、あと1個ポンと転がして打ちたかった。イメージはメッシみたいに『チョン』だったけど、『デーン!』と(転がってしまった)」と関西人らしく擬音を使って表現すると、「高木にはなれなかった」と、同じ試合で素晴らしいシュートを決めた高木俊幸の名前を挙げながら頭を抱えた。
ただ、シュートこそ打てなかったが、このプレーが駒井の“成長”であり、「すごくポジティブに捉えている」ことだ。浦和加入当初はドリブルで縦にしかける一辺倒だったが、試合に出続けることで動き出しや後方に入る選手とのローテーションがスムーズになると、ここ数試合はカットインすることが増えた。「縦を警戒されている中で何回かフェイクでもいいから中に行っておかないと絶対に縦にいけない。やっぱりそこは騙し合い、駆け引きなので、それをうまくやらないと」。
それは京都時代には自然と出せていたが、浦和ではなかなか出せていないプレーだった。「浦和のサッカーにやっと慣れてきたというのが一番大きい。その気持ちの余裕が頭の判断とか駆け引きにもつながっている感じがする。やっぱりこのサッカーは技術もそうだけど、結果的には気持ちというか、どういう捉え方で、どういう思考で臨むかが一番大事なので。それが整ったら普段の実力を出せると思うし、ここに来てそれをさらに感じる」。
出場機会を得ることで段階を踏むようにバリエーションが広がっている駒井のプレー。約3週間前、J1・2nd第12節・FC東京戦では浦和加入後初アシストを記録したが、次に目指すのはゴール。9日の第2戦こそメッシのような、高木のようなゴールを狙う。
(浦和担当 菊地正典)
2016/10/06 17:36