「こうですよ、こう」。28日の練習後、伸ばした右手の先を勢いよく下に向けながらそう話したのは、浦和の関根貴大だった。
そのジェスチャーが意味するのは、テンションや気持ちの急降下。25日のJ1・2nd第13節・広島戦に3-0で勝利した浦和だが、関根は対面するミキッチに何度も裏を取られ、PKも献上。「あれだけやられたのはプロに入って初めてじゃないかな?」と言うほどに叩きのめされ、「調子が良かったぶん、あの試合でグンって(落ちた)、あそこまで落ちたことはない。記事とかも何も見ないように、あの試合から遮断しました」と言うまで落ち込んだ。
プレー面だけではない。「左にポジションを変えてから基本的に攻撃のことしか考えていなかった。守備のところでは右でもあまりやられてなかったし、意識も低かったのかなと思う」と意識の面でも反省した。
その言葉にジュニアユースからユース、トップへと昇格した関根の直系の先輩であり、誰よりも関根に目をかけていた原口元気を思い出す。攻撃こそが重要であり、そのためには守備をおざなりにすることもあった原口。そんな彼が守備を強く意識したのはヘルタ・ベルリンへ移籍を果たす14年の開幕前のことだった。「世界に行ったときに試合に出られるかというと、きっと俺は守備をしないと出られないと思う」。そしてシーズンが始まるとチームメートも驚くほどに守備でも貢献するようになり、いまやヘルタ・ベルリンではレギュラー、日本代表でも出場機会が格段に増えた。
「ああいう行ったり来たりの展開は上位対決ならではだし、下位との戦いではあまりない。だから裏にスペースがありながら前に行かないといけないときの守備の仕方はもっと勉強しないといけない。経験できたのは良かった」。試合から数日が経って、笑いながら試合を振り返ることができるようになった関根は、「広島ともう1回やりたい。初めてだな、こういう気持ちは」と言いつつ、「ここからですね」と前を向いた。この試合は関根にとって、ターニングポイントになるのかもしれない。
(浦和担当 菊地正典)
2016/09/28 17:59