著者:朴 英雄(パク・ヨンウン)/構成・執筆:ひぐらし ひなつ
発行:7月6日/出版社:内外出版社/価格:1,400円(本体価格)/ページ:224P
サッカー観を再点検させられる、教本と呼ぶにふさわしい一冊
いまから遡ること4年半前、12年の1月。朴英雄(パク・ヨンウン)監督に率いられた大分高は県勢初の、高校選手権ベスト4という快挙を成し遂げた。ノーマークの無名校が見せた、一直線にゴールへと向かう“フリーマンサッカー”は、バルセロナのポッゼションスタイルが一世を風靡していた中で、全国に大きな衝撃を与えた。しかし、4年ぶりの出場となった15年度の高校選手権で大分高が見せたのは、180度違うパスサッカーだった。
矢板中央高に敗れ惜しくも1回戦敗退となったが、なぜ朴英雄監督は異なるサッカーに転じたのか。それは選手をシステムに当てはめるのではなく、システムを選手に当てはめるという考え方がベースにあったからである。大分高へ進学してくる生徒たちは、一線級の選手たちではない。だからこそ、選手の特長に合わせてシステムを選び、才能を最大限に伸ばす。誰にも負けない武器とピッチ上での的確な状況判断を身に付ける必要あったのだ。
韓国陸軍将校でもあった指揮官がどのようなアプローチで選手たちの才能を磨き上げ、ダイヤモンドへと昇華させたのか。それが本書には記されている。
サッカー関係者やサッカーに精通している者からすれば、「言われなくても分かる」という話も多いかもしれない。しかし、それを文章で説明できるかというとまた別の問題であり、頭で分かっていても、いざ言葉にすると適切な解を述べられないことも多い。理論整然とした言葉で解説された本書に向き合うと、「自分ならどう言葉にするだろうか」と、あらためて自らのサッカー観を再点検させられる。また、サッカーを知らない者が目をとおせば、「そういうことか」と思わず納得してしまうだろう。
サッカーを知る者も、知らない者も是非一度読んでみてほしい。読了後は、ぼんやりと見えていたサッカーの捉え方が明確になっているだろう。まさにサッカー教本と呼ぶにふさわしい一冊である。
(千葉担当 松尾祐希)
2016/08/23 12:00