混戦から決めたゴールは、苦しみ抜いてようやくつかんだモノだった。
「一つ点を決めたことで重たい何かが取れた。まだ一つだが、自分にとってはとても大事な1点。この一歩がなければ先に進めなかった」
前節の京都戦で北川航也が今季初ゴールを挙げた。開幕から4試合連続で先発出場していたが、5試合目にして先発落ち。代わりに入ったミッチェル・デュークが初先発でゴールを決め、チームが勝利すると先発に定着。ポジションを奪われる格好となった。デュークは4月21日に負傷したが、今度はチョン・テセが復帰。北川にとっては時間が限られた中での出場が続いた。それでも常にゴールを目指す姿勢は変わらなかった。
今季、クラブから背番号23を与えられた。それはかつて岡崎慎司(レスター)が清水で背負っていた番号。
「参考にしているのは、意地でも点を取ろうとする気持ち」
今季初ゴールは、その岡崎の代名詞であるダイビングヘッドで決めた。クラブ、サポーターからの期待、そして自らも2年目に懸ける意気込みが、逆に重荷になっていたところもあった。しかし、そういったモノをすべてはね除ける京都戦のゴールだった。すぐに先発復帰とはいかないかもしれないが、「点を取ると、コーチングも何もいらなくなる」と、小林伸二監督も目を細めたように、彼の中で何かに火が点いた。
この1点が北川にとってのスタートとなる。クラブの将来を担う次世代のエース候補は、2試合連続ゴールでさらなる進化を見せる。
(清水担当 田中芳樹)
2016/05/06 19:30