日本代表のオフィシャルスポンサーからオフィシャルパートナーとなったキリングループは、「サッカー日本代表応援WEEK2015」というプロジェクトを発足した。
その一環として、未来の日本代表が強くなるためのアイデアを広く募集している。
第一弾は「選手の育成」。現場での指導にこだわりを持ち続け、かつてはU−23日本代表なども率いた名古屋の西野朗監督に、今回のキャンペーン寄せられた意見について聞いた。
そして、西野監督が抱く育成への思いとは-。
「私も、選手をピックアップする基準には、『個性』というか、『ストロングポイントを持っている選手』というモノを置いています。中盤の選手であれば、テクニックがあって、誰にもボールを奪われないとか、すごく良いフィードをするとか、展開力があるとか…。前線(の選手)で言えば、点取り屋としての嗅覚がある選手だとか。『個性』を強く持っている選手は、やはり必要です。他の選手には持っていないモノがあれば、チームの中にアクセントが付きますからね。例えば育成年代であっても、一芸に秀でた選手は求められますよね。身長が高いだけでも、誰にも勝るストロング(ポイント)だと思います。でも指導者によってはフィジカル的に秀でていても足元にボールが収まらない、蹴れない、止まらないとなると試合に起用しない場合があります。ただそこで、ボールを持てるようにするとか、試合で能力を使えるようにしていけば、立派でインターナショナルな選手になるかもしれない。そういう可能性を探っていく必要があると思います。理想ありきではなく、選手ありきだと思いますね。『自分はここだけしかできません』とか『自分はここがやりたいです』というのは、固執する部分はあったとしても、それに『あまりこだわらないで柔軟に考えてくれ』と。指導者も固執しないほうが良いと思うんです。成功すること、失敗することがある。そういう中でも、自分の信念みたいなのは持ちたい。チームも、選手も本当に生き物ですよ。良いときも悪いときもあります。(選手には)いろいろ可能性を引き出してあげたい。例えば正面から見るだけでなくて、サッカーに対する姿勢も見る。『もしかしたらこういうこともできるんじゃないか』とか、『何かまだ引き出せてあげられていないな』とか。それをもっと磨いて、ゲームに出たときに『俺は誰にも負けないこういうプレーができる』ということができるようにすること。それと平行して、足りない部分も伸ばせられればいい」
「まずは精神論を言われると、それとは違うと思うんです。個人的に言えば、試合に負けたことを、『メンタリティー』だけで片付けたくない。やっぱり何事にも、自分の価値観じゃないでしょうか。スポーツだけに限らず、やってることに対するこだわりとか価値観が強い選手は、メンタリティーも間違いなく強い。だから目標設定だと思うんです。それがあれば、目標に向かう自分の強さというものが間違いなく出てくる。メンタルを強くして、サッカーが強くなったら、そちらだけを作り上げますよ。技術を持っていて、フィジカル的にもパワー、スピードを持っていて、体格も大きい。戦術眼もある。そういうことも兼ね備えた選手でないといけません。確かにそれを生かすのは、メンタルだと思います。でも、その根っこには目標設定がある。持っている技術、戦術、体力的なところも備えた上で、個人のストロングポイントがあり、さらにそれをいかなるところでも発揮しようとするスピリットを持った選手が、成長できるんだと思うんです。若い世代で言えば、『勝ち気』とか、『負けず嫌い』というようなスピリットを持っている選手がいます。それを前面に表現できる選手や、黙々としながらもプレーで強さや激しさを出せる選手もいる。そういった選手は、アジアなどの国際大会で悪条件の中での試合を強いられても、足を滑らせてでも(失点を)避ける、(得点を)入れるという、わずかなところの戦いでスピリットが出せるんです。彼らには向上心があることが多いし、『チームのため』、あるいは『自分のため』という意思をプレーに表現できます。サッカーに対する思いや、チームに対する思い、あるいは『こうなりたい』という夢とか目標などを、しっかりと設定できているんです。『座禅をする』という意見ですが、まずメンタルを強化するのは難しいですよね。ただプロ選手はみんな、そういった(座禅のような)ことを密かにやっているんですよ。向上心があり、目標をしっかりと持っている選手は。生まれながらに決まっていて、限界のあるフィジカル的な要素は多い。身長や体格、それに速筋の量など…。それでも、わらにもすがる思いで、いろいろなところでトレーニングをしたり、トレーニング法を変えたりして、体を変えようとする選手はいます。『なんで俺は肝心なところで良いパフォーマンスが出ないんだろう?』と思う選手は、それぞれで考えて、自分を追い込んでいる。それが超一流だと思うんです。自分に限界があることを運命論的に片付けず、あきらめないで、やり方を模索していく。それは精神的に強いとは言うかもしれないですね」
INTERVIEW
西野監督が抱く”育成”への思い
-現場にこだわっている西野監督にお聞きしたいです。仮に若年層、育成年代を教えるとして、日本がいまよりも強くなるためには、どういう体験や経験を教えたほうがいいのでしょうか。
「教える対象の年齢が低くなるにつれて、本当に大変になると思いますよ。より難しくなりますから。それを踏まえた上で、自分はまず『スキル』を教えたい。ボールを伴った中でいかに動けるか。サッカーの場合はそういった技術が特別大事になります。正確にボールを扱える。来たモノを止められる。思ったところに蹴れる。そういうことがまずできて、サッカーの面白さとか素晴らしさがわかるものだと思いますからね。そこからさらに対戦相手と競い合って、点を入れたときの喜びだとか、防いだときの喜びなどが生まれてきて、次に、次にと、好奇心を増やしていくんでしょうね。いまはみんな、何でもアベレージ的にできる選手になっている気がします。例えばGK、DF、ストライカーなどスペシャルなモノが大切なポジションごとにトレーニングするとか、練習でみんながまとまって、何でもパス、何でもシュートというようなことよりは、そちら(ポジションごとのトレーニングをすること)のほうがいいと思います。『チーム』というよりは『個』だと思うので。指導者によっては若年のころから勝利至上主義的なことを重きを置いている人もいるようですが、そうではなくて。やっぱり子どもを、次のステップにどう見極めて、上げられるか、上げられないか。その判断をしっかりとする中で、ポジションごとのアプローチというのも入れていかないと。」
-監督の考え方の軸というか、『個を伸ばしてあげたい』という思いは、ずっと昔から変わらぬモノとして持っているのでしょうか。
「自分は1991年に、実業団のコーチから、U−20の代表監督になりました。あのとき、頭の中が国内的思考だったんです。だから当時、高校生だったのちにトッププレイヤーとなる高いレベルの選手に接するときに、慌てましたね。それでアジアのライセンスを取りに行ったり、欧州に行って、いろいろなクラブを見ながら指導者のライセンスを取りました。その中で強く感じたのは、欧州の育成年代でチームの強化を強く考えている人はほとんどいないということ。選手をプロに上げるためには、個を育てていくことをプッシュしていかないと、意味がない。代表の監督をやったときに、世界を見て、アジアを見て、将来的な選手に対してのアプローチを考えて『こういう時代にはもっと、選手に対して個別にアプローチしていくことも大事なんだな』と感じました。だって、大事なのはその選手が将来トップでやれるのか、まらA代表になってどれだけやれるのか…というところ。クラブで言えば、育成年代により力を注いで、良い選手を育てる必要があります。いまは、世界基準に則った中で、日本サッカーとしてもまず機構(日本サッカー協会)からしっかり整えてきていますよね。『若手、若年層の強化』ということをハッキリと謳い出しています。間違いなく、子供達の環境面を見ると向上していると思うんです。だけど、強化は一朝一夕には難しい。組織や体制を作ったあとに、それを常に進化させていかなければなりません」
-それが理想ですよね。
「これからの日本サッカーも、ステップアップをしてほしい。国内のプロリーグも20年以上の歴が経ち、日本のA代表も世界大会の常連になって、ここから何かをもっとやらなきゃいけない時期にあります。ただU−17やU−20の世界大会には出られていない現実もある。育成年代の指導などについて、見直す必要性もあるんじゃないでしょうか。若年層のレベルを上げれば、A代表も間違いなく強くなる。若年層で結果が出ていないのに、突然A代表が強くなるというのは、どこの国でもないことなんですから」
西野 朗(にしの・あきら)
1955年4月7日生まれ、60歳。埼玉県さいたま市出身。浦和西校→早稲田大を経て日立製作所サッカー部に入部。日本代表としても国際Aマッチ12試合出場1得点。引退後はU−20日本代表、アトランタ五輪代表、柏、G大阪、神戸の監督を歴任。2014年より名古屋を率いる。G大阪監督時代にはJ1、ACL、天皇杯などの各種タイトルを獲得した。
※応援WEEK期間中のキリンビール缶商品(ビール・発泡酒・新ジャンル)、キリンビバレッジ商品(自動販売機、チルド、ギフトを除く)の出荷本数6本につき1円が対象となります。但し、キリンビールから5月26日に発売するサッカー日本代表応援缶につきましては、出荷全数を6本につき1円の対象とさせていただきます。
現在キャンペーン公式ホームページにて、未来の日本代表を強くするために何が必要かというテームで、ファン・サポーターのみなさんからアイデアを大募集中!
(BLOGOLA編集部)
2015/05/25 19:40