Photo: UNIPHOTO PRESS
■自国開催というプレッシャーの中で
自国開催で6度目の世界制覇を目指すセレソン。しかし、絶対に負けられないというプレッシャーが若きイレブンたちの肩に重くのしかかる。120分の激闘を終えて、PK戦に挑む直前、守護神のジュリオ・セザールはすでに感極まって涙を流していた。一方で主将の重圧も背負うチアゴ・シウバはチームの輪から離れ、一人ボールの上に腰掛けながら何かを祈るようにピッチ上を見つめていた。
「ホームで行われるW杯を戦うのは簡単じゃない」(スコラーリ監督)。チリ戦の先発メンバー中、過去のW杯でレギュラー経験があるのは守護神のみ。今大会、グループステージから必ずしも本来の輝きを見せていないブラジルではあるが、やはりどこかに硬さが見られるのだ。64年前の国家的トラウマを払しょくする英雄か、2度目の自国開催で優勝を逃した許されざる敗北者か―。ブラジル代表を待つ運命は二つに一つ。そんな究極の精神状態の中で、怪物ぶりを発揮しているのがネイマール。カメルーン戦で2得点を決めたあと、「重圧なんてないよ。自分の夢を実現しているときに、重圧なんて感じないさ」と言い切ったが、そのネイマールでさえも、PK戦で5人目の重責を果たし、勝利を勝ち取ったあと、跪いて涙を流した。
優勝を勝ち取るためのハードルは残すところあと3つだが、ここからが本当の正念場。真っ黄色に染まったスタジアムの後押しが、諸刃の剣になる可能性もある中で、ネイマール擁する王国は極限のタイトロープを渡り続けることになる。(下薗 昌記)
(BLOGOLA編集部)
2014/07/04 10:40