Photo: AP/アフロ
■コロンビア戦、ゴールは一つ
国と国の真剣勝負。それがW杯である。どの国も、勝つためには何でもやる。戦術に長けたチームは頭脳戦をしかけて相手を封じようとする。強烈な攻撃陣を要するチームは個人の力で相手を打ち負かさそうとする。少々手荒いプレーをしてでも気持ちを前面に出すことで相手の戦意をそぎ落とそうとする国もある。すべては、勝利のために。キレイごとだけが通じる世界ではない。
本田圭佑は第3戦のコロンビア戦後、あらためてこう話した。
「もう何を言ってもね、負けたんでね。ただの負け犬の遠吠えになってしまうんですけど、やはりこういうサッカーで勝たないと見る人も魅了されないと思う。勝っていないので『何言ってんねん』という話になるんでしょうけど、だから大きな議論はされるでしょう。でも僕はこのスタンスで行くことが、個々の選手の成長にもつながると思っています」彼らが大会前、声高に語っていた『自分たちのサッカー』。積極的にボールを奪いに行き、そこからパスを回して相手を敵陣に押し込みながら、連係、連動を駆使して突き崩していく。それはかなり強気なサッカーであった。しかし、ボールを奪うことはできても、そしてボールをつなぐことはできても、最後にゴールを奪えなければ意味がない。殴り合う覚悟で臨んだコロンビア戦で決めたゴールは一つのみ。日本は、ゴールを奪う明確な意図をどれだけ持ってプレーできていただろうか。
■コンフェデ杯後の変化
コロンビア戦、日本は攻めに出た。何度も相手のバイタルエリアに侵入していった。もちろん、そこは相手の守備強度が最も高まる場所。だからこそ、日本にとっては的確な連動性が不可欠なのである。昨年あたりから、日本は本田や香川真司、遠藤保仁を中心に、パスを細かくつないで中央から崩していく攻撃を多用していった。当初アルベルト・ザッケローニ監督は、サイドで数的優位を作り、相手の守備陣形が広がったところを縦に素早く突く攻撃を植え付けていた。そこに、選手たち主導で新たな攻撃パターンを加えたいという意識が出てきた。W杯予選を突破した日本だったが、昨年6月のコンフェデレーションズ杯で3連敗。あらためて、世界レベルとの対峙で力の差を味わった。W杯に向けて、チームをバージョンアップさせるために。その思いが新たな攻撃パターンには表れていた。「監督はイタリアで指揮を執っていたこともあって、日本のこのパスを回しながら相手ゴールに迫っていく感覚がそこまでなかったと思う。そのへんの考え方についてはよく話をしたし、もっとボールをつなぎたいということはたくさん言ってきた」。本田もW杯直前の米国合宿中にこう話していたとおり、細かいボールをつないだ連動性のある攻撃には並々ならぬ思いを持っていた。
ところがコロンビア戦、日本が露呈したのは詰めの甘さだった。特に攻撃面ではそれが顕著で、中央に密集して攻めていっても、それはただボールと人が即興的に動いているだけであった。またサイドに開いても、そこからクロスを上げるだけの単発な選択。中央のスペースを生むためにサイドを使う。相手に中央を意識させておいて、サイド深くを突く。そうした2人、3人、4人が同じ絵を描きながら、明確な意図を持って敵陣を崩していく様は、数えるほどだった。
■キレイごとの枠を出なかった攻撃サッカー
「未熟だった」。多くの選手たちが、自分たちの姿をこう評した。日本が初めて、堂々と攻撃的に打って出たW杯。ただ、結果が示すとおり、昨年からバージョンアップを図ったそれは、勝つためにはまだまだ頼りないレベルだった。連動した攻撃サッカー、それは日本が世界を打ち負かすためには、間違いなく必要な方向性なのだろう。だからこそ、選手たちはその責務を胸に、今回それを貫こうとした。結果は、残念ながら、精度も判断も各国には劣っていた。ただし、それをこれほどまでに深く痛感できたことは、近い将来必ず日本代表の血肉になると信じたい。2014年W杯。いまはまだキレイごとの粋を出なかった、『自分たちのサッカー』。ブラジルを舞台にした真剣勝負で、力なく無残に散った。 (西川 結城)
(BLOGOLA編集部)
2014/06/27 09:58