16日、栃木はトレーニングマッチ(35分×3)を行いました。シーズンが終わったにも関わらず、スタンドは多くのサポーターで埋まっていました。
対戦相手となったのは、ブラジルのフリブルゲンセ。ブラジル4部、リオデジャネイロ州では1部のチームです。現在、向こうはオフシーズンにあたるため、キャンプ的な目的とプロモーションも兼ねて来日しており、今週に入ってからは筑波大学と松本山雅、東京V、そして、この日は栃木とのトレーニングマッチ。かなり過密日程ですね…。
主力組で構成された1本目は、杉本選手のゴールで栃木が勝利。廣瀬選手のクロスをサビア選手が落とし、走り込んだ杉本選手のミドルが突き刺さる、きれいな得点でした。守っても、ゾーンプレスが機能するなど、多くの時間帯を支配。優勢のまま、栃木が先手を奪いました。サビア選手も試合後、「今までで一番強かった」と相手チーム側から言われたそうです。一方のフリブルゲンセは芝に足を取られる選手が多く、また足にボールが付かない場面、そして、ミスを多発するなど、やはり、疲労の色が濃かった印象。試合後、菅選手も「個々の能力は高いし、当たりも強かった。やられる感じもしなかったけど、相手はヴェルディともやって疲れていたと思う」と話していました。
両チームとも多くの選手を入れ替えた2本目は、1本目よりもオープンな展開。序盤、立て続けに放ったサビア選手のシュートが枠をそれ、22分には縦パスに抜け出した佐々木選手が絶妙なトラップからGKと1対1になりかけましたが、倒されてFKの判定。両チームともにチャンスは多くありましたが、得点は生まれず、0-0のドローに終わりました。また、25分には川崎ユース出身のMF東城利哉選手(フリブルゲンセ)が出場。4-2-3-1の左MFに入り、積極果敢なプレーを見せてチャンスに絡んでいました。
3本目はミックスメンバーでスタート。その中で主導権を握ったのは、フリブルゲンセ。8分、14番(の選手)の絶妙なロングボールに、ワントラップで抜け出した9番がGKとの1対1を冷静に沈めてフリブルゲンセが先制。この完璧な得点が3本目の決勝点となり、試合は1-1のドローに終わりました。
菅選手「個々の能力は高いし、当たりも強かった。やられる感じもなかったけど、相手もヴェルディとやっていて疲れていたと思う。でも良いチームだとは聞いていたし、その中でも自分のやるべきことを、もっとやらないとダメだなと思った。試合前、向こうのコーディネーターの人と話をしていたら、『何で栃木はJ1に行けないんだ?』って言われました」
菊岡選手「1人1人の技術はしっかりしていた。最後は結局そこからやられて、同点に追い付かれた。練習試合だけど、いろいろなチームとやれるから面白かった。(ブラジルのチームは)駆け引きでやってくる。ディフェンスをするときも、J2みたいに、ガツガツ取りに行くわけじゃないから、すごい勉強になった」
フリブルゲンセの選手たちは非常に温かく、試合が終わったあとも日本のファンやサポーターのみならず、われわれ取材陣に対しても笑顔であいさつを交わしてくれました。こうした、普段経験できないチームとの対戦(交流)はいろいろと刺激になったはず。そして最後に、東城利哉選手(20)にもいろいろと濃い話を聞かせてもらいました。
――久々に日本で試合をしてみて?
「日本が恋しいと言うか、久々に日本語を聞いてホッとしてます(笑)」
――栃木の印象?
「栃木はみんなうまかったです。まず基礎がしっかりできている。ディフェンスラインもしっかりしているし、安定しているチームだなと思いました。7番の選手(パウリーニョ選手)が良いなと思いました。中盤で奪えるし、キープもできてはたける。すごい良い選手」
――どのような経緯でブラジルへ?
「もともと、フロンターレのユースにいたんですけど、高校を出てからブラジルに行きました。(川崎Fユースの同期は)仲川輝人(現専修大)。テルとずっと一緒にやってました。ただ、自分は高1のときは問題ばかり起こしていて、全然試合に出ていなかったんですけどね(笑)。俺、素行が悪かったんですよ(笑)。悪いことばかりしてたから、おやじに『お前は卒業したらブラジル行け』って(苦笑)。それで高校卒業してからブラジルに行ったんですけど、すぐにけがしちゃって…。それから(治療のため)日本に戻ってきて1年間はこっちにいました。また向こうに戻って、このチームと(2年)契約したのが6カ月前。だから、ホント、これからという感じです」
――日本(川崎Fユース時代)とブラジルの違い?
「ブラジルは楽しいですね。ブラジルのリーグシステムは面白くって、ブラジル全体になるとフリブルゲンセは4部なんですけど、リオデジャネイロ州だと1部。この前、『勝てば3部』という試合があったんだけど、そこで負けちゃって、また4部からやり直し。それから、とにかくユースのときは(考え方が)甘かったですね。日本と違う世界に行ってみてやっと分かった。1人でやるプレッシャーや周りの圧倒感がすごい。初めは驚いたけど、今ではむしろ好きになっていますね。積極的に仲間に入っていこうという意識も高くなった。失敗すれば地獄だけど、逆に1点取れれば神様(のような扱いになる)。『失敗すれば殺されるんじゃないか』と思うくらい(笑)。サッカーだけじゃなくて人間的にも強くなれる、そういう環境が今ではものすごく好きになりました」
――ブラジルの方が自分に合っている?
「自分は“はしゃぐ”のが好きなので、ブラジルの方が合っているかなと思う。日本で分からなかったことも、向こうに行ってやっと分かったようなことが多い。例えば、俺は日本では『丸刈りにしてこい』って監督によく言われていたんですけど、俺、丸刈りにするのがホントに嫌だったんですよ(笑)。それで丸刈りにしてこないと『走ってろ!』って(苦笑)。それがブラジルだと許される感じがあるし、『丸刈りにしてこい』と言われると、むしろ髪を伸ばしてくるヤツばっかり。向こうは上下関係がないから、いつも年下の選手が年上の選手にちょっかいを出しているし、僕も変なプレーすれば子供とかにバカにされますから(笑)。そういう刺激を目の当たりにして、今思えば、自分が(日本で)やっていたことはホント、バカでしたね(笑)。あっちに行って、とにかく人間的に分かることが多いし、学ぶことが多いですね。だから今は、誰も知らないところで1人でやりたい。人としてもまだまだなので、いろいろ磨いてから、学んでから、次のことを考えたいですね」
この対戦は、東城選手の代理人でもあるコーディネーターさんの仲介があって実現。栃木にとっても、フリブルゲンセにとっても、充実のトレーニングゲームとなりました。そして、「俺、出たがりだからな(笑) これから頑張ります!」と快く取材に応じてくださった東城選手、ありがとうございました!今後の活躍に期待です。
(栃木担当 村本裕太)
2012/11/18 10:06