いまだかつて、あんなに多くの人があんなに濃い念を送った試合は少ないのではないでしょうか。台風の影響で延期になり、25日に開催された、第36節徳島対京都。昇格争い中のチーム関係者やサポーターたちも一斉に、徳島の勝利を願っていたはずです。このまま京都に自動昇格権を与えてなるもんですか。プレーオフで心臓がつぶれる思いをするのはイヤですからー!(泣)
そんなあちこちからの魂の叫びにも屈することなく、京都、アウェイのくせに圧倒的な勝利。徳島もホームの意地を見せて頑張ってくれましたが、この日の京都は強かったです。「でも今季はその京都に2勝してるんだからウチの方がもっと強いんだもん…」とボソボソ独り言をつぶやいてみても虚しい気がするほどの、見事なゲーム支配っぷりでした。
これまでは「よそのチームがどうなろうと関係ない。自分たちが自分たちらしく勝つだけだ」ときっぱりと言い続けてきた大分の選手たちですが、この試合についてはどうだったんでしょう。実はチームでもトップクラスの人格者と思われる(※記者比)あのベテラン選手が、25日の囲み取材の最後に「今夜は全力で徳島を応援しましょう」と、ついにピッチ外での闘志をあらわにしました。もうお利口さんな態度ではいられない。他力本願だろうが何だろうが、自分たちが昇格を掴み取るのだという決意表明です。
客観的に見れば、これで2位争いには京都が一歩先行した感じでしょうか。26日、練習後の囲み取材で徳島対京都の結果についてコメントを求められた田坂監督は「しょーがないっしょ!」と、いつもよりやや蓮っ葉な口調で言い放ちました。中継は見なかったそうで、試合が終わる頃に「あ、そう言えばどうなったんだろ」という感じで結果だけチェックしたとのこと。「でも(2位になる)可能性はまだゼロじゃない。俺はあきらめるのが大嫌い。可能性がある限り、死にもの狂いで追いかける」。そう語る田坂監督の口調はさばさばしていて、さらなる頼もしさを感じさせました。
その取材で田坂監督が言及したのが、永芳卓磨選手のこと。「この1ヶ月くらい調子も質も上がっているし、吹っ切れた感じで、ミスを怖れず思い切ってやっている。プレーに迫力があり、ノっている感じ。こういう選手はチームにとってプラスになる。卓磨を使えば間違いなく運動量が増えるし、起爆剤になると確信している」。試合に絡めない時期も周囲に細やかに気を配り、チームのために縁の下の力持ちを演じてきた永芳選手。彼が創始者である試合後の「勝利のラインダンス」を、今こそ自らのプレーで勝ち取って、みんなで踊りたいです。
もう一人、田坂監督が「気持ちが出ている」と名をあげたのは、土岐田洸平選手。負傷離脱中に松原健選手にポジションを奪われ、さらにここ数試合は若狭大志選手の控えに回っていたかたちですが、「ワカの出来もよかったが、それを上回るくらい気合いが入っていた。追い抜いてやろうという雰囲気がある」と評価されました。8月31日に待望のお子さんが生まれ、パパになってモチベーションも上がる一方。今季は一列前の三平和司選手の攻め上がりに対してバランスを取ることの多かった土岐田選手ですが、三平選手の守備面での成長もあり、本人も「残り3試合は遠慮せずにガンガン攻めて自分のよさを出していきたい」と、本来の攻撃本能を全開にする気満々です。
さあ、今節は今季最後の九州ダービー。25日の午後には残り3試合に向けての決起集会も開催されました。昇格争いのプレッシャーも、あらゆるアクシデントも含めてすべてがサッカーです。このチームで戦える3試合、まるごと楽しんじゃいましょう!
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/10/27 19:12