お疲れさまです。
今週水曜発売号に掲載された、天皇杯の東京都予選決勝の記事。私が担当させていただいたのですが、今回はここを利用して東京23FCの米山監督のコメントを紹介させていただきたいと思います。
米山監督とは…というか“米山監督”という響きに違和感を覚えてしょうがないのですが、米山監督にはご自身が現役を終えられた栃木で選手と担当記者という立場で2年間お世話になりました。
栃木を退団した後も現役続行を目指し、国内外問わずチームを探していた米山さんですが、昨年、現役引退を決意されたことには寂しさを覚え、今年から監督を務めるという話を聞いた際にはお茶を吹きそうなくらい驚きました。
実際は液体を口に含んでいなかったので事なきを得たんですけども。
私自身、現役時代にお世話になった選手が監督という立場になられて実際にその姿を見るというのは初めてでした。年老いたな、自分…ということはどうでもよくて、そんな米山さんの監督としての姿を見るのは楽しみでした。
試合中もついついスキあらばテクニカルエリアに立つ米山監督の方に視線がチラチラ。現役のときと変わらぬスマートな立ち振る舞いでしたがピッチの外に立っているというのは、やっぱり不思議なものでした。
以下、そんな米山監督の試合後のコメントです
東京23FC:米山篤志監督
「選手たちは、よくやってくれたなと思います。内容うんぬんじゃない部分での戦いも最後まできっちり戦ってくれたし、自分たちの持てるポテンシャルというのはかなり見せてくれたんじゃないかなと。僕が想像するよりも1人1人がたくましくて良い試合を見せてもらった。そういう風に思います」
――失点はいずれも終了間際でしたが
「まぁ、しょうがないですよね。こういう風に何が起こるか分からないのがサッカーなんだな。
だからおもしろいんだなと、あらためて気付かせてもらいましたし、やっぱりちょっとしたスキも見せたらいけないんだな、勝負事はっていうのを思い起こさせてもらった良い試合だったなと個人的には思います」
――延長に入ってCBの中山を前線に上げましたが
「できることなら、そうしないで勝って終われる展開というのが、うちとしたら望ましいですけど、どうしても点が取りたいときは彼の得点能力だったり、ヘディングの高さだったりというのも1つの武器だと考えていたのでプランの1つとして用意していました。相手が自力が上だったということで自分たちができるレベルでは十分ハマった。十分、その形に選手たちは応えてくれた。そういうことじゃないですかね。やはり、まだ(天皇杯に)出るには力が足りなかったということだと思います」
――クラブにとって天皇杯予選はどういう位置づけだったのか
「誰もが知っているメジャーな大会を戦うという喜びが強くてそれで勝ち進めば、進むだけみんなの目に触れる機会が増える。われわれのような小さいクラブにとってはこういう場は、とてもありがたいものですし、広く知ってもらうチャンスだったのでできれば本大会に出て、というところでしたけども」
――本大会に出ると出ないとでは違ってくるでしょうか
「まぁ、ここまで来るのと来ないのとでも違ったでしょうし、出ると出ないとでも違ったでしょうし、出られないと、それがどういうことなのかは分からずじまいですけども、また、トライしてみたいなと思います」
――ゲームプランは
「格上のチームなので、そんな簡単に僕たちの物語が展開されるとは思っていないんですけども、できることなら自分たちで主導権を握っていきたい。そういう考えでいました。そうは言っても、試合でピッチに立ってしまえば、カテゴリーの差は関係ない部分もあったりして、サッカーでどれだけ勝負していけるかなと。ガチンコできちんとサッカーをプレーする。何となく逃げてプレーするんじゃなくてきちんと向き合って自分たちでサッカーをプレーして戦う。そういうことは勝ち負けに関わらずやっていきたいと思っていたのでその部分に関してはある程度、満足感というか、そういったものはあります」
――10番の山本恭平選手はアグレッシブさが目立っていましたが
「こういうところで勝負できるクオリティーを持った選手ですし、恭平のみならず、うちにはそれぞれで自分の役割をきちんとこなせる選手がたくさんいるんでね。できれば全国の人たちに見てもらいたいな、というところが強かった分、残念さは確かにあります」
――予選を振り返って
「この大会に参加してプレーしていく。選手自身も楽しんでできたんじゃないかな、という部分もあるし、僕たちにとってはプラスでしかないと戦う前から言っていましたけど負けてもなお、やはりプラスだったなと思います」
――JFLとの差を感じたとしたら今度はどのように取り組んでいきたい
「自分たちの時間帯というのが短くなっていくんですよね、相手が強くなれば強くなるほど。そういった状況の中でどれだけ主導権をもう1回取っていけるか。われわれにとっての主導権というのはボールを長く持っているということなので、そこをもうちょっとトライしてみたいなと思いますね」
――現役の頃は天皇杯の出場権が自動的にあった。今回、2月の東京カップからつながってきて出ることの重みは感じましたか
「そうなんですよね。僕はもう12月になれば天皇杯って自然とあるものだと思ってました。2月からやっている大会がここまで続いている。それでもまだ出場できないというね。そういうことですから、重たい大会なんだなということは思いますが、自分たちは何となくこのカテゴリーなりのドラマを作ってやってきましたけど、しょせん、本大会に出場しないと誰にも知ってもらえない、『そうなんだ』っていうところで終わってしまうんでね。『そうなんだ』っていうところをきちんと見せるところまで行きたいなと。みんなが『あ~』って聞き流せない、そういうチームになってリベンジをしていきたいと思います。予選は大変です。負けたら終わりだし、そういう緊張感だったり、格上と相対していくプレッシャーだったり、こうやってたくさんのお客さんに見られることに慣れていないわれわれがピッチでプレーしていくことの難しさとかね。もろもろ含めて、良い経験になったんじゃないかなと思います。本当にこういうのを経験って言うんだなと。さっきも言いましたけど、おもしろい選手が、うちにはたくさんいるので、いろいろな人に見てもらいたいし、天皇杯という誰もが知る大会に自分たちが出るという経験は何物にも代えがたいと思うんでね。『関東リーグ2部で優勝したよ』って言ってもピンと来ないでしょ。『天皇杯に出てFC東京とやったんだぜ』ってそういうことの宣伝効果というかね。みんなに知ってもらえる度合いがだいぶ違うんじゃないかなと思うんですよね」
試合後はゆったりと話す時間もなかったのですが後日、ちょっと話した際には
「本当にはもっとできるチームなんだよ。監督がダメだったな。俺も経験だよ」
と言っていました。私自身、米山さんのことを2年間だけではありますが、取材させてもらって自分なりに米山さんのサッカー観はこういうものかなという像はあったんですが、そういったものがピッチ上で表現されていたように思います。間違いなくチームとしての色は持っているチームでした。
米山さんが目指していくのはJリーグの監督になるでしょう。来年初めにはB級ライセンスの講習が待っているそうです。そして、チームは今後、リーグ戦と全国社会人大会を戦うことになっています。
「うちにはおもしろい選手がいっぱいいるんだよ」と弾んだ声で教えてくださった米山監督。私自身もそう思いました。天皇杯出場という宣伝効果には遠く及ばないかもしれませんが、東京23FCというおもしろいチームが東京都予選の決勝を戦っていたことをここに記しておきたいと思います。私自身も今後、米山監督のことを追っかけていければいいなと思います。
それでは。(杉山文宣)
(BLOGOLA編集部)
2012/08/31 23:52