夏のクラブユース日本一を決するadidas CUP全日本クラブユース選手権(U-18)も、いよいよ八強戦に突入した。優勝候補の一角と目された東京ヴェルディユースを延長までもつれ込む死闘の末に下したコンサドーレ札幌U-18が次なる相手として対峙したのは、伝統のトリコロールに身を包む横浜F・マリノスユース。拮抗した勝負の期待された試合だったが、意外な形で推移することとなった。
adidas CUP全日本クラブユース選手権(U-18)準々決勝
「コンサドーレ札幌U-18 1-3 横浜F・マリノスユース」
「11時半開始でカンカン照り。山場だと思ってはいた」
コンサドーレ札幌U-18を率いる四方田修平監督は、この準々決勝をそう位置付けていた。
24℃、30℃、28℃、25℃。今大会の札幌戦の公式記録上の気温である。今年の群馬は“曇天に恵まれ”、例年に比べてかなり過ごしやすい気候が多かった。札幌は暑かった日に9時キックオフの試合になるなど、全体に「気温運」は悪くなかったように思う。道産子の暑熱耐性が低いのはどうしようもない部分もある。気温34℃の晴天となったこの日、「うまく試合を運びたいと思っていた」(四方田監督)のは、当然だろう。
だが、「暑さの中で理に適ったサッカー」(四方田監督)を披露したのは、横浜F・マリノスユースのほうだった。この日のトリコロール軍団は普段よりリアクション気味の対応が目立つ。「僕は(カウンターを狙えといった)指示なんて出していません。選手たちが自分たちで考えてやってくれたんですよ」と松橋力蔵監督は少し誇らしげに言う。省エネ気味に、場合によっては中盤をすっ飛ばす展開を使いながら、立ち上がりに緩慢な対応の目立った札幌守備陣を脅かす。9分に右MF田中健太が守備の乱れを突いて先制点を奪うと、27分にボランチの長倉颯が2点目を奪取。これで精神的にも優位に立った横浜FMは人数をかけないカウンターを巧みにちらつかせて、札幌の消耗を誘っていく。
「先制点を取られて、ウチがやりたかった展開に持ち込まれてしまった」と四方田監督は嘆息する。ただし、現役Jユース監督最長在任記録を保持する若き名伯楽もタダでは転ばない。ハーフタイムに大胆な2枚替えを挙行し、反撃を開始。特にMF藤井慎之輔(7番)はマシンガンのように撃ち出す豊富なアイディアに闘志のスパイスを効かせ、敵将から「怖さのある選手だった」という言葉を引き出すプレーを見せる。その藤井やエースFW國分将を中心とした攻めで何度か「あわや」というシーンも作った札幌だったが、シュートがバーに嫌われるなど運もなく、逆に77分に3度目の失点。このあと1点を返したものの、1-3で敗北。夏の終わりを迎えることとなった。
今年も札幌は素晴らしいチームである。縁あって春先のフェスティバル、そして高円宮杯プレミアリーグと継続して観させてもらっているので、個々のポテンシャルの高さもよく分かっている。中でもキャプテンマークを巻く内山裕貴はこの年代でNo.1のCBと断言していい選手だが、この試合はその彼に普段の存在感がなかった。大黒柱の不安定さは、自然と僚友に伝わってしまった面もあるだろう。ただ、若い選手に波があるのは仕方ないことでもある。こうした敗戦を糧に、この秋に、冬に、そしてもっと先の季節に、より大きく成長した姿を見せてもらえればと思う。それだけの資質を持った選手である。
(photo: yoichi iwata)
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/07/31 19:58