4月16日のJ1第10節・札幌戦ではMF天野純が超絶美技でお膳立てした同点ゴールが反撃の狼煙となり、横浜FMが鮮やかな逆転勝ちを収めた。その当事者である天野が19日の囲み会見で、一連のプレーの流れを詳細に解説してくれた。
ビッグプレーが生まれたのは横浜FMが1点を追いかけていた80分。松原健のパスに反応して右サイドに流れた天野の鮮烈なトリックプレーから始まった。
「(札幌の)荒野選手がすごい勢いでプレッシャーにきていました。『どう外そうかな』と考え、ワンタッチで角度を付ければ、かわせる雰囲気がありました」
ここでのポイントは前に向く意識だ。オーソドックスであれば、DFを背負いながらトラップするのが定石。ところが天野は右足でまたいで、前を向く判断をする。それと同時に左アウトサイドで深く切り返すと、マークにきた荒野は反応できず、尻もちをついてしまう。
「自分が不利な体勢の方が、相手が油断するのでチャンスだと感じています。日ごろの練習後の自主練で自分なりにいろんなフェイントを開発し、いつも違う相手に試していて、その“遊び”があのプレーにつながりました」
一瞬の閃きと日々の鍛錬の成果が化学反応を起こした天野にしかできない独特のフェイントとなった。
さらに特筆すべきは、アシストとなった左足のアウトサイドクロス。エリア方向にドリブルを仕掛けながら、進行方向に左足を振り抜きCBの足が微妙に届かない軌道で供給した。
「どちらの足でどういう軌道で届けられれば、一番いいのかを一瞬で判断した結果、アウトサイドという選択につながりました。一枚目のDFさえ越えれば、後ろのDFは間に合ってなかったので、アド(オナイウ阿道)に届くと思っていました」
一瞬で立体的に俯瞰する目にも恐れ入る。その言葉どおり、天野の左足から放たれたボールは左に弧を描きながら走り込んだオナイウに届き、現時点で横浜FMの今季ベストゴール候補となる一発が生まれた。
天野は言う。
「“遊び”の延長線上が相手の意表を突くプレーを生みます」
洗練された戦術も、デザインされた連係も大事だが、唯一無二のアイデアこそフットボールの最大の魅力――。それを証明するには十分なトリコロールが誇るクラッキのスーパープレーだった。
写真・©Y.F.M.
(横浜FM担当 大林洋平)
2021/04/19 15:19