「早かったもんな……(笑)」
声の主は相模原の三浦文丈監督。今月上旬、横浜FMへの復帰が決まった松田詠太郎に話題が及ぶと、苦笑いを浮かべつつ、そう本音が漏れた。
相模原において、松田の存在感は別格だった。彼が務める右サイドはまさにチームの生命線。「ウチの必勝パターン」と三浦監督が評していたように、プロ1年目の19歳はすでに攻撃の軸を担っていた。
「ユース上がりでまだまだ弱い部分はあったけど、なんて言ったって数字は残してきていたから。詠太郎のところから生まれているチャンスはかなり多かったし、詠太郎がいることで相手がケアをして、そこに2枚がつけばほかが空く。そういう効果もあったからね」
第2節・藤枝戦で早くもJリーグ初ゴールを決めると、シーズン序盤から相手クラブの警戒は強まった。多くのチームは松田に対し、数的優位を確保する策を取った。SBは縦を切り、中からは中盤の選手がヘルプに来る。それでも鋭い突破力、そしてルーキーらしからぬエリア内での冷静な判断力で、多くの決定機を生み出していった。
「警戒されていたのはそれだけ結果を残していたから。もっと言えば、結果を出しているから戻されちゃったんだけどね(笑)」
そんな活躍を、横浜FMは放っておくわけにはいかなかった。ただ、三浦監督は転機となった“ある1つの試合”について、こう教えてくれた。
「マリノスのBチームと練習試合をする機会があっったんだよね。打ち合いのような試合になったんだけど、そこでも詠太郎に相当切り裂かれていたから。たぶんそこで(レンタルバックの)イメージがあったんだと思う」
話によると、横浜FMからの要請があったのは7月下旬。チームはまだ5節を消化したタイミングだった。「正直、プラン変更をしないといけない部分はあった」と三浦監督。予期しないシーズン途中の“里帰り”は、まさに青天の霹靂だった。それでも、19歳の輝かしい未来に、指揮官は期待を寄せる。
「でも、あいつにとっては絶対に良いことだから。これで活躍してくれたらいいよね」
そして昨日26日、松田はJ1初先発を飾ると、堂々たるパフォーマンスを見せてチームの大勝に大きく貢献した。三浦監督の目にも、その背中は頼もしく映ったに違いない。
文:林口翼
(BLOGOLA編集部)
2020/08/27 12:26