日本代表FWの本田圭佑(ミラン/イタリア)が4日、W杯アジア最終予選を控える日本代表の合宿に合流した。練習後に取材に応じた本田は、試合勘のなさやイラク戦に向けては、いつも以上に落ち着いた口調で話していた。しかし、この話題になったときには、途端に声は大きく、口ぶりも早口に変わっていった。少し距離を置いたところで取材対応していた長友佑都が、「圭佑、ずいぶん熱くなっていますね」と笑いながら視線を送るほどだった。
本田が熱くなった話題とは、帰国直前に行われたミランvsサッスオーロの一戦。ミランが4-3で大逆転勝利を挙げた試合だったが、一時ビハインドになった際のスタジアムの雰囲気について、本田が試合後のミックスゾーンで言及。それは昨年の10月にミランのクラブやサポーターに物申したときのような、強い意見だった。
「1-3になった場面で、サポーターが選手をサポートできていないのが印象的だった。やはりブーイングを浴びせてしまう。イタリアでは負けているときに逆に温かくすることは悪なのか? それが僕には理解できない。
もしイタリアとはこういうところだ、というのであれば、僕のような考え方を持つ少数派のイタリア人がもっと声を上げて打破すべきだし、新しい文化を作るべきだと思う」
一方、本田はかつてロシアW杯アジア2次予選で引き分けたシンガポール戦や敗れた先月にUAE戦後には、こんなことを話していた。
「もっと自分たちはブーイングをされてもいいぐらい。サンシーロ(ミランのホームスタジアム)なら、こんな空気はあり得ない」
また、ここ最近は代表戦の会場の雰囲気が、どこかアイドルのライブのようだという例えが出るほど、勝負の空気とはかけ離れてしまっている。
本田は日本とイタリアのサポート文化、そしてその問題をどう考えているのか。直接聞いてみた。
「日本のスタジアムの雰囲気は、イタリアとは天と地の差。優しい。まあ、優しいというか、サッカーが観たくて観たくて仕方がないという人が来て、満員になっているわけではないでしょ。やっぱり日の丸を応援するとか、オリンピックとかその感覚で応援している部分もあると思う。極端に言えば、それはバレーボールでも、ラグビーでもいいだろうし。だから、日本が勝てばいい、日本が頑張っていればいい。そういう感覚は、日本のスタジアムの雰囲気からは感じますよ。僕もサッカーだけでなく日本を代表する立場として、あくまでサッカーという競技を通じてプレーしてきました。そう言う意味で、サポーターに貢献しているという感覚はこれまでありました。
ブーイングに関しては、日本は……ないない(笑)。でも逆にミランはブーイングがありすぎてダメだと俺は思っている。何がダメかと言ったら、試合中に負けていたらミランのサポーターはチームを完全に見放すんです。そこに愛情が一切感じられない。いや、いいですよ。嫌いで愛情がなくてお前らを見放すと言うんだったら、見放してくれていい。でも、勝ったらいきなり家族に戻るんですよ(笑)。
だから、この間は試合が終ったあとに『何とか変えないと』と思って話した。イタリアがいま、この弱体化しているのは、そういう感覚も影響していると思っている。要は、結果にだけ執着し過ぎてきて、そのプレッシャーを受け止められる選手であればいいけれども、ミランもイタリア代表もいまはそういう時期ではない。僕らは日本代表として、イタリアほど実績がないからこそ、下からはい上がっていく立場だから見えている景色もある。ダメな状況で、物事を良くしていこうとしたときに、ドライな感覚だけでは状況を打破できない。そこには結局才能がある人間が生まれてこないと、その状況を打破できないということになる。マルディーニやガットゥーゾみたいな選手が生まれてこないと、ミランの再建は不可能ということになる。でも、現状在籍しているメンバーで再建を目指すのであれば、突き放して選手を萎縮させてではダメ」
またしても賛否両論を呼ぶ意見だったことは間違いない。熱く、ほとばしるように語った持論。久しぶりに、本田らしい熱弁だった。
文:西川結城(エル・ゴラッソ日本代表担当)
(BLOGOLA編集部)
2016/10/04 21:39